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16年春リニューアルしました! 蒼辰が書くおハナシを随時アップしております。ちゃみのMCともども、読んでやって下さいまし。
by planetebleue
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20分後のご挨拶

 まいどっ、ちゃみでっす。
 はい、20分後のアップしましたぁ〜のご挨拶でございます。
 なんかね、ぱぱっとやっちゃったんで、不備とかあったら教えていただけるとうれしいです。
 ほいでね、第3話もまたいずれアップできるとは思うんですが、ま、蒼辰のことです。いつになるかわかりまへん。
 なので、今度こそ、ちゃみのMCをわりとひんぱんにアップしてゆきたいと思ってマス。
 どぞよろぴく。
 ほいでわまたっ。
 ちゃみでしたっ。
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# by planetebleue | 2016-07-19 16:16 | ちゃみのMC

第2話「地球を守るアイドルにも、練習場所がいるのデス」その1

『アイドル騎士団みるきぃクレヨン』
 第2話「地球を守るアイドルにも、練習場所がいるのデス」


 0・狭いケド、文句言わない

「お~、こんな場所あったんだ」
「全校生徒のほとんどがこんなとこあんの知らないと思う」
「なんか匂わね」
「足元、平らじゃないし」
「文句言わない。場所あっただけでラッキーなんだから」
「ほいじゃストレッチングから。いくよっ」
「お~、よくできた下級生」

 いっち、にっ、さん、しっ。
 みんなジャージで、さ、練習開始。

 あれ? 前回も狭いとこから始まったような・・・。


 1・もう地球守ってやんねぇぞ

 我が巌厳学園高等学校および中等部の放課後は、チア部の自主練習で埋めつくされる。
 なんせウチのチア部、通称GGCは、部員四百人を越える大所帯ですから。
 全国制覇12回、世界大会の優勝も2回という強豪にして名門ですから。そりゃ人気もあるんですよ。
 かたやこちら、今年度に発足したばかり。部員たった5人の同好会・アイドル騎士団ですから、練習場の確保も大変なのです。
 あ、申し遅れました。
 わたくし、アイドル騎士団の5人の部員全員が所属するアイドル・ユニット[みるきぃクレヨン]のリーダーで赤担当の田畑カンナでございます。
 わたしたちが練習を始めた、幅2メートル、長さ3メートルほどの空間は、校舎の裏に面しております。
 敷地の都合でフェンスが折れ曲がってて、校舎にもトイレの出っ張りとかがあったりして、そのせいで、そこだけぽこっとできた忘れられた空間なのです。
 出入りするには、あっちもこっちも、幅ほぼ60センチばかりのすき間を通り抜けるしかありません。
 校舎にはほぼ閉めきりの小さな窓と換気扇がぶぉ~っと回っております。
 いや、中がトイレだって知ってるから匂うような気がするだけだってば。
 はい。なんども換気扇見て、匂い気にしてるのが、黄色担当の左右田スミレです。
「いっち、にっ、さんっ、しっ」
 と、元気に声出してるのが、一人だけ中等部3年の最下級生、ピンク担当のあやりんこと丸居アヤメです。
 その向こうの、ちっちゃい体で真剣にストレッチングしているのが、歌も踊りも、ウチらの中では一番で、緑担当の森野ミズキ。
 その反対側の端っこにいるのが、一人だけいっこ上の二年生で、変人の紫担当・髙井カズラです。
 え? メンバーカラーとか、どっかからパクってないか、って?
 いえいえ、気のせいですよ。
 気のせいですってば。
「じゃ、ガクマチからいく?」
「いいよ」
 持ってきたピンクのちっこいラジカセを、アヤメがぴっ。
 顧問の下川先生作詞作曲の、ガクマチこと『学園のある町』のイントロが流れ始めます。
「せ~の」
 教わったとおりの振り付けで踊りはじめるわたしたち。
 まだまだ、ぜんぜんサマになってないんですケドね。
 しかしその時、わたしたちの斜め上空を一匹の蜂がホバリングしていたことなど、まったく気づいていませんでした。
 しかもその蜂が実はロボット・カメラで、わたしたちのことをのぞき見してたなんて。
 ちょっとぉ、どこのどいつよ。
 *
「こいつらか」
「いえ、こんなどんくさい動きではありませんでした」
「じゃ違うな」
 なんか操作すると、こいつらの乗る小型宇宙艇のコンソールの3D映像が移動を開始します。
 そっ。わたしたちの上空にいたロボット・カメラ蜂が、ぶ~んと別の場所に飛んでいったのです。
 画面には、学園キャンパスで自主練に励むGGC部員の姿がつぎからつぎへと捉えられます。
「似たようなヤツばっかしじゃないか」
「ですねぇ」
「どやってめっけるんだよ。どれがどれだか・・・」
「まったく、どれがどれだかです」
「お前、至近距離で対面してんだろっ」
「はっ、しかし、顔が、隠されておりまして・・・」
「こ~りゃまいったぞ」
 まいったのが、コスプレにしか見えない派手はでの制服を着たヂャアという男です。
 もひとりが、こないだ、わたしたちのアイドル・デビューのとき、西淵のおじさんを襲った五人組銀髪男のリーダー銀髪男なのであります。
 おや、後ろのほうに、あと四人もいるような・・・。
 こいつら、宇宙人なんですよ。
 こんどは、なにするつもり?
 *
 さてこちら、練習中のわたしたちです。

♪駅からつづく長い坂道の~ぼ~り~

 口ずさむわたしたち。だって、校内ではあんまり大きな声で歌うなと下川先生に言われてるんですもん。
 GGCに「うるさいっ」とか言われるのがオチだからって。
 そりゃ、へたっぴだけどさ。
 しゃあないので、週末にでもみんなでカラオケ行って練習することになってマス。
 先月のツキイチGGCでの前座としてのアイドル・デビューがさんざんに終わったわたしたちですが、めげず、くじけず、前を向いております。
 いつか、歌と踊りで、GGCを越える日のために。
 え? 夢、大きすぎ?
 てへっ。
 あ、でもね、昨日の夜もこんなことがあったんだ。
 あたしが居間で練習ノート作ってたら、お母さんが覗きこんできたんだ。
「あら、張り切ってるじゃない。どしたの?」
「ちょっとね、やる気になる事件があって」
「へ~え、中学の時は、部活なにやっても続かなかったあんたがねぇ」
「い~じゃんか」
「そういう映画見たことあるわ」
「え?」
「演劇部のうだうだした部長が、新しい先生に出会って、演劇に目覚め、目標持っちゃうの」
「知らないよ、そんなの」
 って、お母さんのことうざい扱いしたんだけど、でも、ちょっとうれしかったかも。
 そう。目標とか持てなかったあたしが、初めて出会ったなにか。それが[みるきぃクレヨン]かもしれないから。
 もちろんね、まだ他のメンバーのことよく知らないし、みんなの気持ちがホントにひとつになったか、自信はない。
 ケド、こうやって歌い、踊ってても、だぁ~れもてれてれしてない。
 それだけでも、みるきぃクレヨンとしては、前向きになった証拠だと思うわけですよ。
 が、不意に、
「はいはいはい、そこまでそこまで」
 ぱんぱんぱんと手を打ちながら狭い空間に入ってきたのは、ぬあんとGGC Wonderersのセンター・アザミだった。
 後ろからサブセンターで同じ一年生のユリエがくっついてきてて、いきなしラジカセをぴっと止めた。
「なにすんの」
「誰の許可もらった」
 両手腰において、いきなり上から目線。
「許可?」
「下級生が練習場所取られたって言ってきたんだよ」
「はあ?」
 見ると、狭い通路から中学部の子たちが顔を出している。
「だって、誰も使ってなかったから・・・」
「ここがチア部第17自主練習場だって、知らなかったの?」
「ええっ?」
 知るわけないじゃん、んなこと。
「それとも」
 ユリエが口をはさんでくる。
「ダンス対決でもして、それで決める?」
「あ、ヘタな方が取るとか」
 カズラ、それボケすぎ。
「なわけないだろ」
 ほぉ~ら。
「ウチの下級生とダンス対決して、あんたらが勝ったら、ここ譲ってもいいケド」
 語尾上がりのケドが気にくわない。
 その上、ぞろぞろと狭いとこに入ってきた中坊めらが、これ見よがしにウォームアップなんか始めやがる。
 けど、
「しょうがないよ。別の場所探そ」
 いっちゃんダンスに自信のあるミズキが、真っ先に折れた。
 この一言で、スミレもアヤメも、力が抜けた。
 これじゃ、強気には出られない。
「分かった。みんな、行こ」
 ラジカセを持ったアヤメを先頭に、アザミとユリエが見守る中、ぞろぞろと狭い空間から出ていくことになった。
 前にカズラ、最後にあたし。
「じゃ、さ」
「じゃ、さ」
 あたしとカズラと、アザミのほうに振り向いて、同時に声を出した。
「あ、どうぞどうぞ」
「あ、じゃ」
 カズラに譲られて、改めて口を開く。
「ダンス勝負に勝ったときには、ここ、もらうから」
 前のほうでアヤメが「ひゅ~っ」と声を上げ、ミズキがにっこり笑い、スミレがきゅっと唇結ぶのがわかった。
 これくらい言わなきゃ。
 リーダーだもん。
「いつでもどうぞ」
「約束ですよ」
 アザミの上から目線振り切り、狭い通路に向かって歩き出した。
「カズラ」
「ん?」
「アザミに、なんて言うつもりだったの」
「もう地球守ってやんねぇぞって」
「それ言っちゃダメでしょ」
 アヤメとスミレが、慌ててカズラの口を押さえてる。
 そう、あたしたちは、地球を守る戦士でもあるのです。
 ど~ゆ~わけか。


 2・皮肉なものだな。ここまで来て、地球を眺めているしかないとは

「練習は?」
「場所がなくて」
「はっ」
 下川先生の短いため息。
 ほぼ物置の狭い部室に戻ると、下川先生が新曲の歌詞を書いてた。
「あ~、アーマーあればなぁ」
 椅子に座り、いきなり机の上に体を投げ出すカズラ。
「きれっきれで踊れるもんね」
 スミレの言葉に、アヤメも頷いている。
「なんでアイドル・パフォーマンスに使っちゃいけないんですか?」
「だからあれは、地球人類を宇宙人の侵略から守るためのもの」
 下川先生が声を潜めて言う。
 なにしろこのこと、地球人類にはヒミツなのだ。
「でも、あたしたちにしか使えないんですよね」
 なんか不満そうなスミレ。
「そうそう」
「なんで?」
 アヤメが無邪気に聞く。
「だからぁ・・・」
「シュークリーム買ってきましたぁ」
 下川先生が言うのと同時に、弟のコブシがコンビニの袋下げて入ってきた。
「わいっ」
 シュークリームへの反応では世界一のアヤメがもうひとつ手に取っている。
「ちょうどいいとこに来た、コブシくん、説明してやってよ」
「へ?」
「アーマーが、なんでこの五人にしか使えないのか」
「何度も説明したじゃないですか」
「何度聞いても分かんないんだもん」
 そうそう、アヤメ、あたしもそう。
「しょうがねぇなぁ」
 なんか生意気なんだよね。まだ附属中学の二年生のくせして。
「だから、先月、脳波取りにいったじゃない」
「うん」
 それはアイドル騎士団結成二週間目。やっと部員が五人になった、その日のことだった。
 なんだかのデータ取るのに協力するとかで、にしぶち酒店さんの旧倉庫の一階に行ったのだった。
 そしたら、四角い顔のおじさんがいて、わたしたちは一人ずつ椅子に座ると、頭に電極見たいのいっぱいくっつけられて、しばらくじっとしていたのでした。
「あれが実は、ノンゼーイ波ってゆう、宇宙人が発見した脳の波長を取っていたんだ」
「はぁ」
 だいたいこのへんから分かんなくなってくるんだ、いっつも。
「そいで、アーマーは、固有のノンゼーイ波にのみ反応して起動するんだよ」
「だから?」
「だ~から、赤のアーマーは姉ちゃんが装着しないと起動しないの」
「ほかのヒトだと?」
「起動しない」
「ふ~ん」
 分かりました?
「ふ~んじゃないでしょ。姉ちゃんたちにしか宇宙人は撃退できないんだかんね」
「宇宙人って・・・」
「あれか」
 そう。さんざんに終わったアイドル・デビューの直後、わたしたちの頭の中でぴ~ぴ~と音が鳴り出し、それはなんと緊急信号だったのでした。
 でもって、大慌ての下川先生に導かれて、なにも聞かされずにアーマーを装着させられたわたしたちは、宇宙人だという銀髪の男どもから西川のおじさんを救出するために、バトルるハメになったのでありました。
「宇宙人って、あんなへぼいの?」
「アーマー? はカッコよかったけど、なんかしょぼかったよね」
 と、アヤメとスミレ。
「そこには大きな謎があるのよ」
 謎好きのカズラ。
「だからそれも説明したじゃない」
 うんざりで言うコブシなんだけど、そも、あたしの弟がなんでそんなに宇宙人に詳しくなったわけよ。
 そこも、謎。
「月の裏側に、大宇宙船団が集結してるのよね」
 カズラ、信じてるわけだ。
「でも、宇宙人の使う新エネルギーを無効にする装置をハカセが作ったために、行動できなくなっちゃってるんだよ」
「そのために、その装置を見つけて、壊すために工作員が来るかもっていうんでしょ」
 ミズキがめんどくさそうに言う。ってことは、あんま信じてないな。
「あのへっぽこが工作員?」
 これまたあまり信じてない組のアヤメ。
「おかしな連中だったって、ハカセも言ってたけど」
 だから、なんでウチの弟が、ハカセとかとそんなに親しいわけ?
「でもまた、誰かを送りこんでくるかもしれないから、警戒は怠るなって」
「そういうことだから、キミたちもそのつもりで、な」
 って、下川先生、なんか自信なさげ。
「けど、なんであたしたちなんですか?」
 スミレ、いい質問。
「それわぁ・・・」
 ってコブシ、なんで下川先生を窺う?
「言っただろ。アーマーを作ったハカセが、キミたちのピュアなハートに惚れてしまったんだって」
 じとっ。スミレ、ミズキ、あとあたしの、疑り視線が先生に向かう。
「奇跡の五人だなぁ、あはは」
 なんかごまかしてる。
「確かに」
 信じたメンバーもいたみたいです。
「地球を守る五人のアイドルに選ばれたなんて、確かに奇跡だわ」
 ど~ゆ~奇跡かは別にして、確かに奇跡ではありますケド。
「地球を守るアイドル」
 カズラが、力のこもった声で繰り返す。
「カズラ、それ気に入ってるよね」
「当然でしょ」
「まぁね、それやらないと、みるきぃクレヨンつづけられないみたいだし」
 諦めたみたいに言うミズキ。
「代われるもんなら誰かに代わってほしいけどね」
 350のペットボトルいじりながらスミレ。
「あちしはけっこ気に入ってるよ」
 あれ、アヤメ、そっち?
「おう、分かってるじゃないか、キミは」
 カズラがアヤメに手を差し伸べてる。
「は~、練習、どうしよ」
 なんとなくため息ついたけど、この五人といるのって、なんか心地いいって感じてた。
 でもって、月の裏側に集結してるとかいう宇宙人のことも、ちょっとだけ考えた。
 *
「皮肉なモノだな。ここまで来て、ただ地球を眺めているしかないとは」
 モニターに映る青い地球を眺めながら言うのは・・きゃっ、超美形の男子ではありませぬか。
 でもって傍らには、これまたちょ~かわゆい美少女。え? 妹なんだ、美形少年の。
「ヂャアが地球に行ったみたい」
「なに?」
 と、顔を上げる超美形お名前カントが、超かわゆい妹お名前ジルを見ます。
 その後ろの窓からは、暗黒の宇宙に浮かぶ無数の宇宙船のシルエットが。
 そう、ここもその中の一隻の船内なのであります。
「協力者の顔写真は?」
「兄さんに言われたとおりに」
「コンプリートにディレットしたんだな」
「ええ」
「それじゃ・・・」
 [なにしに]って言葉を飲んだんだな、ここは。
「またぐだぐだになるかもよ、ヂャアじゃ」
 再びモニターの青い地球に視線を移すカントとジル。
「見てみたくなった」
「なにを?」
「地球とやらを」
 カントの言葉に、ジルがそりゃかわゆく微笑む。
 *
 そのころ、ヂャアのロボット・カメラ蜂は、相変わらず巌厳学園の校内をあちこち飛び回っておりました。
 しかし、送られてくる映像は、チア部の自主練、チア部の自主練、軽音の練習、チア部の自主練、チア部の自主練、応援部の練習・・てな調子。
「誰が誰だかまったく分からんじゃないか」
「はぁ」
「どいつもこいつも、同じようなかっこして、同じようなことやってるぞ」
「はぁ」
「はぁしか言えんのかっ」
「自動翻訳機はバージョンアップしてあります」
「そんなことは聞いとらん。その、きれきれダンスとやらでイルカクーコ破ったシュバリアンはどれなんだ」
「あっ」
 ヂャアの副官あつかいされてる銀髪男が素っ頓狂な声を上げました。
「ミルクでも買い忘れたか?」
「なんかちょっと動きのいい連中が、移動しております」
「ん?」
 モニターに映っていたのは、第二校舎に向かうアザミとユリエと、あと何人かのWonderersメンバーでした。
 あ、Wonderersってゆうのは、GGCの選抜チームのことね。
 そのちょっと前、裏門のあたりで、下級生にきれっきれっなとこ見せてたのが、ちらっとモニターに映ったのでした。
「ヤツらかもしれんのだな」
「はぁ」
 自信なさげ。
「ともかく、追えっ」
 てなわけで、ロボット・カメラ蜂が、アザミとユリエの斜め上空で監視を始めたのでありました。
 *
「これから、どんな活動していくんですか?」
 ミズキが、下川先生に聞く。
「ツキイチGGCはもう出らんないんでしょ」
 返事の前に聞くカズラ。
「でもないだろ」
「え~っ、またブーイングの嵐あびるんですかぁ」
 めいっぱいイヤな顔のスミレ。
 そう。わたしたちは先月終わりのツキイチGGCというイベントのオープニング・アクトとして、初めてのステージに立ったのだった。けど、結果は。
 応援部の連中を中心にした帰れコールを浴びるハメに終わったのでした。
「だからさ、今度ツキイチGGC出るときは、もっと拍手もらえるよう、お前ら、頑張らなきゃ」
 そりゃそうかも。けどみんな、道は遠いって顔してた。
「でも、それまでどこかで活動しなくちゃいけないじゃないですか」
 あたし。一応、リーダーらしいとこ見せてみた。
「路上、考えてる」
「はぁ?」
「ろじょー?」
 みんなのお目々が丸くなる。
「うん。駅前のタバコ屋さんがお店閉めちゃったろ。そしたら、隣の電器屋さんのご主人が、軒下使ったらどうかって」
「はぁ~ん」
 誰もが、駅前のようす思い浮かべてた。
 あそこか。駅からすぐの、通学路だ。
「もうちょっと人通りの少ないとこのがいいんじゃないっすか」
 スミレが上目遣いに言う。
「それじゃ経験にならないじゃないか」
「そりゃそうっすけど・・・」
「いいじゃない。やれるとこがあるだけ」
「うん、あちしもそう思う」
 ミズキとアヤメの声が、みんなの気持ちをまとめた。
「でも、その前に・・・」
 あくまでリーダーっぽく、あたし。
「練習場所どうするんですか?」
「それな」
「どこもかしこもチア部で埋めつくされてますよ」
「屋上」
「屋上?」
「あそこは応援部の縄張りじゃないですか」
「でもその分、人口密度が低いんだ」
「そうだけど・・・」
「ハナシしてみようと思ってる。端っこ貸してくれって」
「屋上かぁ」
 わたしたちを野次りまくり、「帰れ」コールの音頭までとった応援部の隣で練習するのか。
「いいんじゃない、屋上。雨の日できないし」
 あらスミレ、そんなにサボり癖のヒトだったの?
「あと、新曲作ってるから」
 下川先生が、歌詞書いた紙ひらひらさせてる。
「いいっすよ、新曲は」
 ほおづえついて、そっぽ向いた。
 新曲、軽音のあいつに、また頼めないかな。
 そんなたらたらした午後の時間が流れてく・・はずだった。

[その2につづく]
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# by planetebleue | 2016-07-19 16:13 | アイドル騎士団

第2話「地球を守るアイドルにも、練習場所がいるのデス」その2

 3・見たい、この目でシュバリアンを

「これじゃめぇ~ねぇ~じゃねぇか」
 突然叫んだのは、あの派手はで制服のヂャアそのヒトでした。
 ロボット・カメラ蜂の送ってくる映像が、突如、三分の二ばかり白くにごってしまったのです。
 なんかゴミひろったんだな、きっと。
「地球のゴミはこんなに汚れているのか」
「はぁ」
 ボスの自動翻訳機がまた調子おかしいと思いながら、銀髪男は適当に返事しておいた。
「二は分かるか?」
「は?」
「三は分かるかと聞いているのだ」
「はぁ?」
「あ・・・」
「なにか?」
「イチはどこか分かるか」
 やっぱ自動翻訳機おかしいわ。
「はっ」
 銀髪男がモニターをがちゃがちゃ。
「分かりました」
「よし、その付近の宇宙艇を隠せる場所に着陸せよ」
「ええっ?」
 銀髪男が驚いて顔を上げると、ヂャア、怖い顔で睨みつけているのでありました。
 わかりましたよ。
「2304 3305 8762 2099に着陸する」
「了解」
 操縦する白の銀髪男も、やれやれ気分で操縦桿を倒したのでありました。
 そして数分後。
 すごいっすね、ヤツらの宇宙艇は。
 わずか数分で、葦の茂る河原を発見し、そこに宇宙艇を隠しながら着陸していたのでありました。
 そして、どさっ。ヂャアが真っ先に地球の大地に降り立ちます。
「危険ではないでしょうか」
 後ろに降り立った銀髪男が情けない声で言う。
「見たい」
「は?」
「この目で、タークド・シルジュウソの作ったシュバリアンを」
「だが、しかし、我々のパワーでは、その・・・」
「ほっとする」
「は?」
「シンシャだよ、シンシャ」
「へ?」
「ほら、そっくりが2Dになる」
「あ、ひょっとして、フォト」
「そう、そのシンシャ」
「それを言うなら、シャシンであります」
「どっちでもいいっ」
「はっ」
「それさえとれば、司令官どのにい~とこ見せられるっつうもん」
「はぁ」
 銀髪男、どうやらヂャアの言ってること、半分くらいしか理解できてない。
「お前は、俺を先導しろ」
「はぁ?」
「残りは二人ずつ、俺が見える場所で目立たないように行動するんだ」
「それでは、宇宙艇がカラに・・・」
「わたしになにがあってもいいというのかっ」
 唾が飛びました。ヂャア、偉いヒトのようです。いちおー。
「分かりました」
 てなわけで、スマホ状の通信機のマップを見る銀の銀髪男とヂャアが真っ直ぐ目的地に向かい、桃と白が右後方、黒と青が左後方というフォーメーションで移動を開始します。
 あ、そうそう。銀髪男どもは、例によってモスグリーンのつなぎに、黒のブーツで、胸のとこに各自のカラーが差し色されております。
 でもって、[道を歩く]という考えがないんだかなんだか、ヂャアと銀の銀髪男は、川堤を越えると、雑草の生い茂る空き地をまっすぐに歩いてゆきます。
「これが地球のじびたか」
「はっ」
 やっぱ翻訳機調子おかしいと思いながら、銀髪男は適当に返事しておいた。
「やらかいかたいやらかいかたい」
 ぶつぶつ言いながら歩くヂャアに、銀髪男はもう返事もしない。
 やがて、空き地の向こうの、雑木林に覆われた小さな丘みたいのを越えると、眼下の道路の反対側の丘の上に、巌厳学園の第二校舎が見えていた。
「あそこです」
「下がる、上がる」
「はいっ」
 い~かげんなやりとりしながら、ヂャアと銀髪男が第二校舎に向かう。
 そこは、通称飛び地って言われてるとこで、サッカーもできるグランドとふたつの小体育館があった。
 そのうちのいっこが、GGC=巌厳学園チア部の、通称本部と言われている専用の体育館だった。
 道路を渡ると、緩い傾斜の畑の先に第二校舎のフェンスがある。
 ヂャアと銀髪男、畑踏みにじって、まっすぐフェンスに向かってる。
 怒られるぞ、農家のおじさんに。
 でもってもちろん、右後ろからは桃と白が、左に黒と青が、畑の縁つかってフェンスに近づいてゆく。
「どやって見つける?」
「そ~ですねぇ~・・・」
 銀髪男、ノーアイディアらしい。
「色がついてるとか言ってたな」
「あ、はい、五色の着衣でありました」
「何色だ」
「えっと、ピンクがかぶってました」
「あとは」
「赤と緑と・・・」
「あとは」
「え~っと・・・」
 必死こいて考えてやんの。記憶力大したことないな、こいつ。
「まぁいい。五色の五人組だな」
「はい」
「よし」
 派手はでコスのヂャア、いきなりフェンスによじ登っちゃった。
 それを見て、あとの四人もこっち向かって走ってくる。
 フェンスに上がると、1メートルくらいのとこがGGCの本部体育館で、ちょうど窓から中のようすが窺える。
 中ではGGCの選抜チームWonderersが練習中。そりゃきれっきれのいい動き。
 それを見た銀髪男がハッと目を見開く。
「あれ、あれくらいの動きでした」
「なに?」
 も一度中のようすに目をやるヂャア。
「ならば、あの中におるな」
 ひょいっとフェンスを飛び降りるヂャアと銀髪男。着地すると目の前が窓。そこに、どさっとストレッチングのために座った二人の女子。
 おんなじ高さで出会う目と目。
 女子の顔が一瞬ひきつったかと思うと、
「覗きよぉ~~っ」
 甲高い声で思いっきり叫んだ。
 そこに、どさどさどさとフェンスから下りてくるあと四人の銀髪男。
「覗き?」「どこどこ」「あそこです」「捕まえてっ」「はいっ」
 つぎつぎと声がして、足音がどどどどっ、どどどどっ、忙しく動き回ってる。
 え? え? え?
 ヂャアと銀髪男、思わず顔を見合わせ、窓の中を見て、もう一度、え? と顔を見合わせる。
 ケド、そんなことしてる場合じゃありませんでした。
「いたっ」
「捕まえろっ」
 声とともに、左右から三十人あまりのジャージ姿の女子がどどどどどっと迫ってきたのです。
 なにしろフェンスと体育館にはさまれた細長い空間。逃げるとすれば再びフェンスを乗り越えるしかなかったのですが、この連中、事態が飲みこめぬままただ突っ立っておりました。
「捕まえろっ」
「引きずりこめっ」
「この野郎っ」
 正義感に燃えた数十人のJKが、いろんなこと叫びながら突進してくるのであります。
 世の中にこれ以上恐ろしいことはないんじゃないか。
 足がすくんでる間に、つぎつぎと腕を取られ、羽交い締めにされ、
「なにをするっ、わたしを誰だと思ってる」
 と、叫んでも、
「ムダです、ヂャアさま」
 はい、そのとおり。
 あとの四人も恐怖にひきつり、両手を上げております。
 しっかし、フェンス乗り越えて中に入るなんて、大胆っつうか、常識ないっつうか。
 あ、宇宙人の見分け方に、地球常識がないってゆう項目がありましたっけ。
 それはともかく、両腕をつかまれ、羽交い締めされ、足まで持ち上げられ、六人の大のオトナが体育館に引きずりこまれてしまったのであります。
 そこにはさらに数十人のジャージだったり練習着だったりの女子。
「ど~ゆ~つもりよ、スケベ親父」
「変態じゃないのっ」
「ストーカー?」
「どうなるか見せてやろうよ」
 さまざまな罵声とともに、百個くらいの怒りの女子目線を浴びることになった。
「ひっ、ひっ、ひぇ~っ」
 この時はじめて、ヂャアのココロに恐怖心が芽生え、あっという間に沸点に達しました。
 そして、ヂャアの制服には、恐怖が沸点に達すると反応する、とある装置が仕こまれていたのです。
 ぴか~ん。着ていた制服が光り出したかと思うと、ぬめぬめと変態を始めたのでした。
「きゃっ、なにっ」
 取り囲んでいた女子が、わっと飛び退きます。
 それを見た銀髪男たちも、恐怖心ともあいまって、
「ふかんぜんへ、んたいっ」
 こちらも全身ぴか~ん。アーマー・スタイルにと変身を始めました。
 これらのパワーを使うと感知されてしまうということ、知らなかったんだか、忘れてたんだか・・・。


 4・ドーナッテルンダー!

 ぴ~ぴ~ぴ~。
 あたしの頭の中で、あの警告音が鳴り出した。
「ん?」
 顔を上げたのは全員いっしょ。
「来た」
「やっぱ?」
「鳴ってる」
 とっさに、コブシが見たことないスマホ取り出した。
 指でぴゅっとかやってチェックしてる。
「第二校舎だ」
「なんだってぇ」
 下川先生ががっと立ち上がり、椅子引きそこねて、膝打ってる。
「行きましょう」
「う、うん」
 必死に立ち直る下川先生。
「アーマー着られる」
「だねっ」
 真っ先に立ち上がるカズラとアヤメ。
「またバトルとかやるのぉ」
「しゃあないよ」
 不満そうなスミレに答えるミズキ。
「今度はもうちょっとうまくやろっ」
 机に両手置いて、あたしもすっくと立ち上がる。
 なんせ、リーダーですから。
 かくして、地球を守るアイドル戦士[みるきぃクレヨン]の二度目の出動となったのであります。
 *
 しかし、[ふかんぜんへ、んたい]のエネルギーを感知していたのは、わたしたちだけではありませんでした。
 地球上空を飛ぶ、カントが一人乗った小型宇宙艇にも反応が伝わりました。
 ん? と、どこやらを操作するカント。
 するとモニターに、ロボット・カメラ蜂からの不鮮明な映像が映し出されました。
 要するに、体育館でアーマー・スタイルに変態しちゃったヂャアと五人の銀髪男の姿にびっくらこいている50人ばかりのGGC部員という絵ね。
 それを見て、超美形のカントが顔をしかめます。
「なんとお粗末な・・・」
 その直後、小型宇宙艇はきゅい~んと旋回を始めたのだとか。
 *
 さて、体育館のほうはというと、もう大混乱。
「きゃ~~っ」
 目の前で、アニメかCGみたいにアーマーに変態しちゃったんだから、そらびっくりしますよね。
 六人のアーマー姿スケベ親父から、誰もが後ずさりしております。
「ルゲーニ、ルゲーニ」
 このスキに脱出しようとヂャアが走り出し、五人の銀髪男がそれに従います。
 しかし、このヂャアってゆう宇宙人、かなりパニくっていたようです。
 走り出したものの、どっち行っていいのか、根本的なことが分かってなかった。
 しょうがないんで、出口求めて蛇行しながら走ってます。あとに続く銀髪男どもも、あっちにすたすた、こっちにとたとた。
 そのたびに、数十人のGGCメンバーも「わ~っ」「きゃ~っ」とちりぢりに逃げ回る。
 もうなんだかぐちゃぐちゃの状態。
 で、悪いときには悪いことがつづくもの。
 体育館の片隅に、内装工事用の大きな脚立が、今日はお休みだからブルーシート賭けた状態で立ってたんです。その他の工事材料や用具といっしょに。
 目立ちますよ。なにしろ二階相当の高さで作業するための脚立ですから。
 けど、逃げ道を探すヂャアは前見ないで走ってた。
 ガッシャ~ン・・・!
 肩から激突してしまったのです。それもアーマー状態だから破壊力すごい。
 脚立は折れて倒れてくるし、工事材料やらなにやらは吹き飛ぶしで、誰もが「キャ~ッ」。
 体育館内もうパニック状態。
 もっともヂャアも、
「うぐじゃ、けれこれ」
 ブルーシートにからまちゃってたんですケド。
「ぷはっ」
 銀髪男に助けられ、顔を上げたヂャアが最初に見たのが、準備室に逃げこむ中学生三人組の姿でした。
 ドア開けて、ここから消えた。
 出口だ。
 そう思ったヂャアは、
「ルゲーニ、ルゲーニ」
 叫びながら、そっちに向かって突進した。
 しかし、ヂャアって宇宙人、アーマーのパワーをきちんと理解してなかったか、初体験だった。
 だだっと踏みこんだ二歩目で、ガツッと体育館の床を踏み抜いちゃった。
 おかげでおっとっとっと。体勢もバランスも崩したまんま、真っ正面から準備室のドアにガッシャ~ン。
 みごと扉を破壊し、準備室の中にずっで~んと倒れこんだのであります。
「キャ~~ッ」
 三人の中学生が悲鳴を上げ、うち一人は、スネのあたりにヂャアの肩がぶつかって、転倒しています。
 どうしていいのか分からないまま、銀髪男どももどどどどどっ。準備室になだれこんでくる。
 慌てて、さすがリーダーのアザミと、サブのユリエが走ってくる。
 顧問の先生とコーチにはもう連絡したけど、到着するまではアザミが責任者。
 準備室をのぞき見するくらいのとこで止まって、
「その子たちをどうするつもり」
 人質に取られると思って、思わず叫んだ。
 それ聞いた銀髪男の一人が、反射的に中学生女子の腕をつかみ、それを見た別の銀髪男が別の子の腕をつかむ。
 え? え? え?
 事態が飲みこめてないのは、むしろヂャアそのヒト。
「ドーナッテルンダー!」
 決め技のコールじゃないっつうの。
「チ、チッヂンジ、ルートンド」
 銀髪男が返します。
「ジーマヨか」
「それしかないかと」
 って、そこだけ地球語。
 やれやれしょうがないと立ち上がるヂャア。
「シュバリアンを出せっ」
 アザミとユリエに向かって叫んだ。
 え? え?
 びっくりしたのは、実は銀の銀髪男。
 え? 人質とって、宇宙艇に戻るんじゃないんですかぁ? それだって、いい手じゃないケド。
 しかしヂャア、
「踊りのうまい、五色の五人組だ」
 すっかり人質取って要求してるヒト気分。
 え? こちらアザミとユリエが顔を見合わせる。
 踊りのうまい五色の五人組って、誰?
 銀髪男どもはじりじり。だって、五色の五人組出てきたら、負けちゃうのに。
 しかしヂャアは、策があるんだかないんだか、五色の五人組に執着しちゃっていたのでした。
 *
 さて、その頃、地球を守る五色の五人組は、
「ハイエースで移動っすか」
 下川先生が中古で手に入れた三列シートのワゴン車で第二校舎に向かっていました。
「文句言わない」
 と、運転に自信なさげな下川先生。
「ハカセとの回線、開けておきましょうか」
「あ、ああ、そうだね」
 言われて助手席のコブシが指先でぴゅっ。
「それっ」
 と、第二校舎へと左折したハイエースでありました。
 *
 さて、体育館の準備室の、なりゆきで中学生女子部員三人を人質にしちゃったヂャアと銀髪男ども。
「ぽり~、すとかそ、ういうことつう、ほうるとこの、子らのぶじはほ、しょうない」
 興奮すると自動翻訳機の調子までおかしくなるらしい。
「シュバリアンを、踊る五色の五人組を出せっ」
 けど、出てきたら勝てないと銀髪男どもは戦々恐々。
 ヂャアさま、どうなさるおつもり?

[その3につづく]
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# by planetebleue | 2016-07-19 16:12 | かたゆでエンジェル

第2話「地球を守るアイドルにも、練習場所がいるのデス」その3

 5・やっぱちょっとカッコいいっすね、このアーマー

 とんだ展開の人質事件に、体育館中わさわさしてる中で、アザミとユリエだけは不思議そうに顔を見合わせていた。
「踊りのうまい、五色の五人組、って?」
「あたしたちじゃ、なさそうっすよね」
 どうにも気になってしょうがなかった。
 *
 と、ちょうどその頃、ハイエースが駐車場に滑りこんだ。
「キミたち、分かってるな」
「はいっ」
 コブシとともに体育館に走る下川先生を見送って、わたしたちはそれぞれのカラーのトランク持って、ハイエースの脇へ。
 蓋開けたトランクの中に立って、へ~んしんっ!
 がちゃがちゃがちゃ。パーツが装着され、ヘルメットがぱかっとはまり、アーマー姿の完成でございます。
 窓ガラスに映るその姿は、う~む、我ながらカッコいいかも。
 *
 その頃、体育館の玄関では、知らせを受けて走ってきたGGCの顧問・鈴木涼子先生とカデット・ヘッドコーチが、下川先生とばったり。
「あら、下川先生」
「あ、ああ」
「どうして?」
「え、ええ、え~っと・・・」
 下川先生、鈴木先生もカデット・コーチも美人だもんで、いっつも挙動不審に陥るのです。
「早く中行ったほうが」
「あ、そうね」
 コブシの機転で、先ずは鈴木先生とカデット・コーチに続いて、体育館の中へ。
「どうしたの?」
「なにがあった」
 フロア真ん中のアザミとユリエの元に走り寄る鈴木先生とカデット・コーチ。
 その背中ぼぉ~っと見送る下川先生と、すかさず状況を観察するコブシ。
 こいつ、なんかこういうとこ要領いいんだよな。
「先生、あの準備室、二階がありましたよね」
「そうだっけ」
「ええ。中に急な階段があって、テラスみたいな二階に上がれるんです。でもって、二階にもドアが」
「なるほど」
「あと、ヤツらの後ろにも、直接外に出られるドアがあるんです」
 ヂャアのなんかわめく声が聞こえてて、鈴木先生とカデット・コーチが、目を丸くしてすくんじゃってるのが背中からでも分かる。
 そんな中、冷静なのはコブシと、
「そうか」
 と、頷く下川先生。
「で?」
 って、ありゃ、分かってなかった。
「だから、二階から飛び降りれば、人質は確保できると思うんです」
「うん」
「そのあとで後ろのドアから突入すれば、ヤツらは正面から逃げるしかなくなります」
「なるほど」
「ハカセとの回線は空いてますから、その時点で指示を受ければいいんじゃないでしょうか」
「そうしよ、そうしよ」
「上から姉ちゃんとミズキさん、スミレさん。外からアヤメさんとカズラさんでどうでしょう」
「よし、それでいこう」
「じゃ、姉ちゃんたちに作戦伝えてきます。先生は、事務所から鍵を」
「あ、ああ、鍵ね、分かった」
 って、なんかコブシのが指揮官みたいじゃん、これじゃ。
 ま、ともかく、コブシはスマホで博士の指示を仰ぎながら、駐車場のわたしたちの元へ走り、先生は事務室に鍵を取りにゆきました。
 その頃、人質を取られ、訳の分からないことをわめくヂャアに、鈴木先生もカデット・コーチもただただ顔を見合わせておりましたとさ。
 *
「よっしゃ、分かった」
 コブシから作戦を聞いたわたくし・カンナが答えます。
「ほんで、ヤツらさんたちはどうすんの?」
「ハカセが、映像分析しながら指示するって」
「ふ~ん」
 なんとなく釈然としないわたしたち。
「相手が誰か、確認したいんだって」
「ふ~ん」
 そんなこと言われたって、よく分かんないしぃ。
「人質を確保することと、とりあえず逃がさない。先ずはそこまでだから」
「了解」
 って返事を返すと、なんかチームっぽい感じがした。
「じゃ、位置について」
「コブシ、あんたは?」
「クルマから姉ちゃんたちに指示出すから」
「あっ、そっ」
 チームっぽいのはいいけど、弟が指示役かい。
「カズラ、アヤメ、頼んだよ」
「オッケー」の二重唱。
「スミレ、ミズキ、行こう」
「おう」
「うん」
 あたし、リーダーっぽいっしょ。てへっ。
 てなわけで、スミレとミズキを従えて、通用口から二階に向かう。
 カズラとアヤメは、体育館を回りこんで、準備室のドア外に向かう。
 二階に上がると、ちょうど下川先生が鍵持ってやってきた。
「今、開けるから」
 ちょっと耳を澄まして、ヂャアがなんかわめいてるタイミングで、カチャッ。
 下川先生が親指立てて、カズラたちのほうのドアを開けに行く。
「先生が側面のドアを解錠したら行動開始だから」
 コブシの声がヘルメットの中に響く。
「りょ~かい」
 スミレとミズキと、ドア外の廊下でちょっとかっこつけて身構えた。
 しかし、下川先生もわたしたちも、そしてコブシも、カズラとアヤメにはふざけ癖があることをまだ知らなかったのだった。
 *
 そもそもねぇ、下川先生がカズラたちのとこに向かう途中で、「あ」って、鍵落とした上に、「あや」って広いそこねたのがいけないんですよ。
 そんなことしてる間にアヤメが、
「カンナさんたちが人質確保したら、あちしたちの出番ですって」
 と、どこかのんびりした声で。
「ど~んと飛びこんで、わ~っと脅かしてやりゃい~んだろ」
 根拠ない自信ぶちかますカズラ。
「カッコよく決めちゃいます?」
「当然だろ」
「やっぱちょっとカッコいいっすよね、このアーマー」
「ポーズとかとってみちゃう?」
「こんな感じ?」
 戦隊モノ風のポーズとるアヤメ。
「違うちがう。もっとこんな風にさ」
 アメコミ風のポーズ決めるカズラ。
「でもって、ダッシュ」
 って、スパイダーマンかい。
「お~、い~感じ。キレてた?」
「もっといけんじゃないっすか」
「よっしゃ。ダ~ッシュ」
 ガッとダッシュするカズラなんだけど、三歩目で石にけっつまづいちゃった。
「わあっ」
「オッケー、フルパワー出てます」
 ヘルメットに声が響いたときには、
「わっわっ」
 止まらなくなったカズラの、フルパワーのアーマーの破壊力はすごかった。
 ぐわっしゃ~ん。
 ドア突き破って、準備室に突進しちゃったよ。
「カズラッ、やりすぎっ」
 アヤメもしょうがなしに、っつうか、反射的に、準備室に突進した。


 6・無様なものだな、クズどもが

 準備室では、いきなり背後のドアをぶち破って飛びこんできたカズラに、ヂャアたちと、ついでに人質の中学生女子もびっくり。
「なんだぁ?」
 と、ヂャアが振り向いたところに、
「とあ~~っ」
 突進してきたアヤメががっつ~ん。
「のっわ~っ」
 ヂャアさま、アヤメに体当たりされて、吹き飛ばされている。
 その音聞いて、二階ドアから準備室に入ったわたしたちはあっぜ~ん。
「あの二人、作戦ってコトバ知ってんの?」
 と、ミズキ。
「あたしたちのい~とことらないでよ」
 と、スミレ。
 ん? 二人とも、それすっかりヒーロー気分だよ。
「あっだぁ」
 下では、弾き飛ばされたヂャアがやっと上半身を起こす。
 そこには、頭からスライディングしたカズラを助け起こすアヤメと、まだ中学生女子の腕をつかんだままの五人の銀髪男どもがいる。
 二対六。
 ヂャア、思わずほくそ笑んだ。これなら・・・。
 ケド、
「あらわれたな、シュバリ・・・」
 までしか言えなかった。
 ヂャアの台詞とほぼ同時に、
「行くよっ」
 と、あたしが一言。
 つぎつぎと二階のテラスから飛び降りると、先ずあたしが銀髪男にがつんっと一発。
 スミレも、ミズキも、つぎつぎと中学生女子の腕を押さえていた銀髪男どもを襲う。
 さらに、体勢を整えたカズラとアヤメのキックが残りの二人を見舞った。
「うわっ」「あっ」「んげっ」とそんな声がつぎつぎと聞こえてきて、あっという間に三人の中学生女子は救出されたのでありました。
 カッコいいじゃん、あたしたち。
「逃げなっ」
 中学生女子三人を体育館のフロアへと逃がし、あたしたち五人は、ヂャアと五人の変態銀髪男どもを取り囲む。
 あ、ヂャアって名前は、その時まだ知らなかったんですケドね。
 *
「キャプテンッ」
「先生っ」
 解放された中学生女子が、アザミや鈴木先生やカデット・コーチに飛びつく。
 その回りには、ドア破壊された準備室を遠巻きに覗きこむようにCCC部員が集まっている。
「だいじょぶ?」
「はいっ」
 って、そんな型どおりの会話の間も、アザミとユリエの目は、準備室の中に釘付け。
「誰なの、あれ」
「なんとかレンジャー的なアレですか?」
「映画の撮影じゃないよ」
「じゃ・・・」
「五人いて、五色だ」
「確かに・・・」
 *
 さて、そんなアザミとユリエの目を釘付けにしたわたしたち。
 こないだよか一人多いけど、たった今も感じた実力差ならなんとかなるでしょ。
 それどころか、実力差実感してる銀髪男のが、びびり始めていた。
「ど、どうするつもりだ、シュバリアン」
 しゅばりあん? それ、なんのことか分かんない。
 ヂャアとしては精一杯の虚勢だったんだけど、後ろから袖引っ張ったヤツがいた。
 そう、あの筆頭銀髪男。
「ヂャアさま、ルダブ・イルカクーコしかないかと」
「なんで?」
「ルゲーニガチーカ」
 筆頭銀髪男が言い聞かせ、
「ルゲーニガチーカ」
 ヂャアがほぼ納得します。
「しかし、あれはこの前・・・」
「じゃ、ほかに方法があるのかよっ」
 別の銀髪男のコトバに、筆頭がぴしゃり。
「イルカクーコで逃げましょ」
「そっか」
「そうしましょ」
 てなわけで、またぞろ、あの色もカタチもレモンみたいなものを、筆頭銀髪男とヂャアが一個ずつ取り出す。
 そいつをぎゅっと握りつぶすと、ぶおっと分厚くてでっかいシャボン玉みたいなものが広がり、ヂャアと銀髪男どもを二重に包みこんだ。
「ルゲーニ」
 シャボン玉の中で、ヂャアと五人の銀髪男どもが走り出す。
「やるかっ」
 ポーズとったカズラが、シャボン玉の表皮に弾き飛ばされ、
「ルゲーニ、ルゲーニ」
 なんかリズム取りながら、シャボン玉ご一行さまが、準備室から体育館フロアへと逃げ出そうとしている。
 *
 そのありさまは、ロボット・カメラ蜂によって、カントの宇宙艇のモニターにも映し出されていた。
「無様なものだな、くずどもが」
 カントの宇宙艇が、急激に高度を下げ始めたらしい。
 *
「わ~っ」
「きゃ~っ」
 準備室の破壊されたドアから、うにゅ~っとはみ出てきた巨大シャボン玉に、フロアのGGCメンバーが後ずさっている。
「どうする、コブシ」
「あのイルカクーコって、接触したヒトを巻きこんだり、怪我させたりすることもあるんだって」
「えっ」
「だから先ず、それを避けてくれって」
「んなこと言われても・・・」
「ようっしゃ、キ~ックッ」
 こっち側でカズラが回し蹴りを見舞うが、二重のせいか弾き返されてる。
 それどころか、巨大シャボン玉を体育館フロアに押し出しちゃった。
「キャ~ッ」と悲鳴が聞こえて、フロアがパニくっているみたい。
 まずいよ。
「もっとパワー上げないと」
 って、コブシ。
「どうする?」
 スミレの声もした。
 さぁ、どうする? カンナ。
「ようっしゃ、コブシ、あの曲の用意を」
「え?」
「これが、原点なんだよ、きっと」
「げんてん?」
「悔しかったアイドルデビューの、その悔しさをいつか晴らすための、あたしたち[みるきぃクレヨン]の、未来へのつぎの一歩なんだよ」
 あたし、カッコいい?
 一瞬の間があって、
「りょ~かいっ」
 四人の声が返ってきた。
 よっしゃ。
「コブシ、いい?」
「音、出します」
「みんな、Just do it」
「Just do it」
 体育館のフロアに飛び出して、ぴしっと整列する。
 その瞬間、わっと視線が集まるのを感じる。
 そらそうだ。五色の戦隊モノ風アーマー姿の五人が飛び出してくりゃ、体育館中のGGCメンバーが注目するのは当たり前。
「誰なの、あれ・・・」
 アザミがつぶやき、ユリエもお口ポカンとこっち見てる。
 見てろよ、ユリエ。
 いくぜ。
 ヘルメットの中でイントロが流れ出す。やっぱ気持ちいいよ、この曲。
 ステップ踏み出して、腕の振りもつけて。
 えへへ、やっぱアーマーの時はキレてるわ、みんな。
 歌っ。

♪just do it
 その一歩を踏み出せ
 キミならきっとできるから

 ステップ踏んで、踊りながらシャボン玉との距離を詰める。
 動き、キレてる。
 アザミとユリエも、その動きをハッと目で追う。
「踊りのうまい、五色の、五人組・・・」
「誰なの?」
 さ、誰なんでしょ。えへ。

♪退屈な昨日なんか
 置き去りにしてしまえ
 破り捨てろ 汚れた日記など

 ワンツースリーと踏みこんで、よっしゃ、いくよ。

♪just do it

 五人のキックが、巨大なシャボン玉の表皮に突き刺さる。
 すると、ぶよぶよぐにゃぐにゃしていたシャボン玉の表皮が、まるでガラス玉を割ったように砕け散っていった。
 粉々になった小さな破片が、ぱんっとふくれ上がって、きらきらと体育館いっぱいに広がって行く。
 赤に、黄色に、緑に、紫に、ピンクの破片が、きらきら、きらきらと体育館の中を舞っている。
「わぁ~~っ」
 遠巻きにしているGGC部員から、嘆声が漏れる。
 どうだ、キレイだろ。
 *
「素晴らしいシュバリアンだ。さすが叔父上」
 宇宙艇のカントも、モニターを見ながらつぶやく。
 *
 五色のきらきらの中で、ノリノリで踊るわたしたち。

♪just do it
 その一歩を踏み出せ
 キミならきっとできるから

「きれっきれ」
 ユリエがぽつり。
「あいつら、カッコいい」
 アザミもつぶやく。

♪恐れることなんかない
 明日はもうぼくたちのもの
 手に入れろ 光る1ページを

 ターン、ステップ、キック、でもって腕を上げて、伸ばして・・・。
「わっ」
「んぎゃっ」
「ふぎゃっ」
 この前といっしょ。ダンスの動きが、みぃ~んな相手への攻撃となってつぎつぎと決まる。
「ルゲーニ、ルゲーニ」
 ヂャアと変態銀髪男どもも大慌て。そこらへんにあったスクール・バッグやらラジカセやらクール・スプレーやら、手当たり次第に投げつけては逃げてゆく。
「どうする?」
 あたしの声にかぶさるように、コブシの声が響いた。
「確保してくれないか、って
「カクホ?」
「捕まえちゃえってことじゃない」
 スミレののんびりした声がはさまる。
「誰かを確認して、いくつか質問したいからって」
「ハカセか・・・」
「早く。追いかけてっ」
「はっ」
「姉ちゃん、どうかした?」
「なんでもない」
 地球を守るって、けっこややこしいわ。
「いい? 行くよっ」
 どどどどっ。追いかけるわたしたち。
 その背中を、ぽかんと見送るアザミとユリエ。
「なんなの、あいつら」
「誰なの。わけ分かんないし」
「でも、あのダンスのキレ・・・」
 ふっと真顔で顔を見合わせるGGC Wonderersのセンターとサブ・センターでありました。

[その4につづく]
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# by planetebleue | 2016-07-19 16:11 | アイドル騎士団

第2話「地球を守るアイドルにも、練習場所がいるのデス」その4

 7・やってくれますよね、叔父上も

 さて、こちら外。
 大慌てで外に飛び出したヂャアと五人の変態銀髪男ども、懸命になって逃げ道探してます。
 それを追いかけるわたしたち。
「色違いっつうか、一人だけ違うカッコした男さえ確保してくれればいいって」
 コブシの声が響く。
「分かった」
「じゃ、カンナはそいつを」
 ミズキの声だ。
「あたしたちがガードするから」
「ヒュウッ」
「なに?」
「タノモシィ」
「いいからっ」
「あいよっ」
 走りながら見ると、体育館の角を曲がってった。
 あっちは、駐車場だ。
 だだだっと駈けこむと、ヂャアたち、どっちに行ったものかおろおろしてた。
 マップとか、ないわけ?
「そこまでだね」
 言って、ひるむ合わせて六人に向かってすたすたと歩き出す。
 あたしちょっと、カッコよくね?
 左にはスミレとカズラ、右にアヤメとミズキ。扇形に広がったとこは、ありゃま、戦隊ヒーローだわ、わたしたち。
「待てっ」
 逃げる構えのヂャアに向かって突進した、その時だった。
 バサッと落ちてきた大きな網が、ヂャアと五人の銀髪男をそっくり捕らえていたのだ。
「え?」
 頭上を見ると、なにやら銀色のヒコーキみたいのが浮かんでて、六人を捕らえた網を吊り上げている。
 *
 ヒコーキみたいののコクピットにはもちろんカント。
 デモ、その時はまだ、そいつのことなぁ~んにも知らなかったんですケド。
「こんなマンガみたいな、原始的な方法をとらなくちゃいけないなんて、やってくれますよね、叔父上も」
 ぶつぶつ言いながら、ヒコーキ操作してる。
 *
 なんだこれは?
 六人を入れた網を吊り上げ、機内に回収しようとしているヒコーキを見上げた。
 ヂャアとその一味がほっとしたような顔してるとこ見ると、このヒコーキも宇宙人のモノ?
 六人組が重いんだかなんだか、ヒコーキ、三階の窓くらいの高さまで下がってきてる。
 いけるかも。
 とっさに、向こうのフェンスまでダッシュして、そこに飛び上がる。
 すぐそこに翼が見えてんじゃん。
 なんなんだろ。好奇心? 正義感? それとも、使命ってヤツのせい?
 答えがないまんま、あたしはフェンスを足場に、ヒコーキの翼に飛び移っていた。
 翼が、ぐらりと傾く。ったって、つかまるとこもないぞ。
 四つん這いの姿勢で、顔だけ上げた。
 すぐそこに、キャノピーってゆうの? 透明なガラス(たぶん)に覆われた中に、ヒトまたは宇宙人がいた。
 そいつが、揺れる機体に驚いてこっちを見る。
 うっわっ。すんげえ美形の男子だ。
 目が合う。まだ驚いたような顔のまんま、じっとこっち見てる。
 あたしの顔・・いえ、ヘルメットのバイザーに、なんかついてる?
 そしたら、磁石でくっついてるみたいに、視線が外せなくなった。
 そいつの、濃い青緑をした、澄んだ瞳から。
 時間が、止まったみたいだ。
 と思ったとき、キャノピーにヂャアご一行さまがどやどやと入ってきて、ごたごたになった。
 ちっと、舌打ちするみたいな動きがあって、イケメンがなにかを操作すると、翼が左右に揺れた。
「わあっ」
 なんせつかまるとこもなぁ~んもない翼の上。あたしはあっけなく、ころんと地面に墜落してた。
「カンナ、だいじょぶ?」
 すぐ、スミレが助けに来てくれる。
「ああ、だいじょぶ」
 立ち上がって見上げると、銀色のヒコーキはもううんと高いとこにいて、あっという間に飛び去ってしまった。
「誰なの?」
 声に振り向くと、アザミとユリエがいた。
 お目々まん丸にして、わたしたちを見てる。そらそうだ。まるっきり不審者だもんね。
 瞬間、ユリエと目が合った。
 不思議そうに、じっとこっち見てる。
 やばっ。バレた?
「ハケて、姉ちゃんたち、早くハケて」
 コブシの声が響くのと、
「誰なの、あんたたち」
 アザミが強い口調で言うのが同時だった。
 すると、次の瞬間、
「アース・アーマー・ファ~イヴッ」
 カズラがけったいなポーズとって叫んでた。
 アザミとユリエがポカンとなると、
「失敬っ」
 片手を上げて、くるっと振り向くと、ダッと走り出してる。
 あ、そういうこと。
「失敬っ」
 なんか分からんけど、あたしもマネして、くるっ。ほかのメンバーもそれにならった。
「クルマは?」
「正面側」
「あいよっ」
 正面側に回ると、もう下川先生とコブシがハイエースに乗って待っていた。
 わたしたちがどどどっと乗りこんでクルマが走り出したころ、
「アース・アーマー・ファイヴ?」
 さっきの場所では、アザミとユリエがぽかんと顔を見合わせていた。
 *
 でもってこちらは、カントの宇宙艇の中。
 もともと四五人用のスペースに、六人も乗ってきたもんだからもうぎゅうぎゅう。
「押すなよ、操縦できないだろ」
「俺の宇宙艇はどうする?」
「オートで帰還させろ」
「あ、そうか」
 って、どうもヂャアってジンブツ、あんましデキのいいヒトじゃないみたいね。
 あ、ヒトかどうか知りませんケド。
 ふぅっとため息ついて、カントが言う。
「それより、もう地球に下りるのはやめたほうがいいんじゃないのか」
「え?」
「キミの叔父さまが勘づくと・・・」
 そこまで聞いただけで、ヂャア、むっと黙りこんじゃった。
 なんなんでしょ。
 そんなことより・・・。
 カントは、操縦に集中するフリをして、ふっと遠くを見た。
 あの目、どうやら忘れられなくなりそうだ、と。
 *
「アース・アーマー・ファイヴって・・・」
「なんか決め台詞あったほうがいいかなと思って」
 あたしの問いにカズラが答える。
「分かるけど」
「イマイチだった?」
「う~ん」
「じゃさ、もっとカッコいいの考えよ~よ」
 アヤメが間に入る。
「分かった、そうしよ」
 なんせ、なにもかもが未完成のわたしたちです。
「でもさ、あれ着てると、あちしたちイケてるよね。動いてても気持ちいいし」
「動きはよくなるけど、気持ちいいか?」
 アヤメに同意しないミズキです。
「気持ちいいよ。再び地球は守られたんだから」
 と、カズラ。
「あれで?」
「実感ないよね」
 ミズキとスミレ。
 ま、確かに。地球を守るとかどうとか、そんな実感はどこにもないケド。
 でも、あの見たこともないヒコーキ。やっぱしホントに、宇宙人がいるんだろうか?
 そしてあの、深い青緑の、澄んだ瞳・・・。
 ケド、あれ着て動いてると気持ちいいってゆうのは分かる気がする。
 ダンスだって、キレてたもんな。
「あ~、あれでアイドル・パフォーマンスしたいっ」
「それはダメなのっ」
「は~い」
「がっこ帰って練習しよ」
「は~い」
 返事のトーンが下がった。
 しょうがないよ、アヤメ。


 8・わざとへたっぴに踊ってるわけ?

「聞いてみたいことがあったんだけどなぁ」
 モニターの中で、四角い顔のおじさんがのんびりと言います。
「接触しちゃまずかったんじゃないですか?」
 そこはにしぶち酒店さんの古い蔵の地下。DJブースみたいなコンソールに向かったコブシが、モニターのおじさんと会話してます。
 そう、モニターの四角い顔のおじさんこそ、ハカセなのです。
 ど~ゆ~ハカセか知らないんだケド。
「いや、勝手に単独で行動してるっぽいんだよね」
「どうして分かるんですか?」
「知り合いっぽいんだ」
「知り合い?」
「うん。だから、向こうのようすも少し分かるかなと思って」
「で、どうします?」
「う~ん」
 考えこむハカセ。
「対策練ってみるわ」
 のんびり言って、そこで会話は終わったそうです。
 そんなことで、地球は守られるんでしょうか。
 *
「そうだ」
 い~こと思いついたときのクセで、唇片っぽだけ上げて、スミレが言う。
「先生、練習のとき、クルマ動かしてくださいよ」
「なんで?」
「ほら、空いたスペースで練習できるじゃないですか」
「あ、それいい」
 あたしが乗ります。
「確かに」
 と、これも口癖っぽいミズキの反応。
「けど、クルマは・・・」
「あっちの通路に置いとけばいいじゃないですか。ギリ寄せて」
 これ、カズラ。
「しかし・・・」
「練習の間だけでいいから」
「ねっ」
「しょうがないな」
 下川先生、渋々クルマを移動させます。
 よっしゃ。どうにか練習場所を確保したわたしたち。
「ちょっと」
 と、そこにあらわれたのは、なんとアザミとユリエ。後ろにちっちゃい子が五人くっついてます。
 いきなり、
「ウチの入学したばっかの中一部員とダンス勝負しない?」
 ですと。
「え?」
「勝ったら、練習場所確保してあげるよ」
 挑発的に、こっち見てます。
「あ・・・」
 正直、どう答えていいか分からなかった。
「やってやろうじゃん」
 真っ先に前に出たのはカズラだった。けど、まだアーマー気分でいない?
「あやりん、乗った」
 まだ中三のアヤメが、ぴょんと前に出る。
 この子、カズラ・ファンになったかも。
「真剣勝負だよ」
 ちょと懐疑的に言うミズキ。
 わたしたちの中では踊りがうまいだけに、慎重なのかも。
 でも、
「やるっきゃないっしょ」
 少し口尖らせたスミレも前に出る。
「みんな・・・」
 そう簡単に負けるもんか。みんながそう思ってる。
 結成してまだひと月ちょっとだけど、みんなけっこやる気になってるじゃないか。
 あたしはなんだかうれしくなった。
 だって、リーダーですもの。
「ようし、受けた」
 胸を張って、大きく一歩、前に出た。
「じゃやってみようか」
 中一の子が、持ってきたラジカセをセットする。
「曲は?」
 アザミに聞くと、
「『学園のある町』」
 ですと。
「あたしたちの曲じゃん」
「振りは完コピしてあるから」
「はい、スタンバイッ」
 ユリエの一言で、五人の中一生がぴしっと並ぶ。
 その顔を見ながら、わたしたちも向き合って一列に並ぶ。
「いい、いくよっ」
 ユリエがラジカセをピッ。
 あたしたちの歌の、イントロが流れ出す。
 教わったとおりの振り付けで体動かし始めて、びっくりした。
 なんだこいつら。あたしたちの曲の、あたしたちの振り付けを、なんでそんなにピシッと踊れるわけ?
 それにひきかえあたしたち。
 体にアーマーの残像が残ってるんだかなんだか、なにしろ重い。だから、とろい。
 てれてれ見えてんだろな。
 あ、歌だ。

♪学園のある町には
 いつでも夢が駆け抜ける

 四小節で、あたしたちの歌が情けなくなった。
 だって、なんでこいつら、こんなキレイな声で、あたしたちの歌をぴしっと揃って歌うんだ?
 目の前でこんなにピシッとキレイに揃って歌われて、踊られたら。
 あたしも含めて五人全員、どぎまぎってゆうかなんてゆうか、どうにもぴりっとしなくなっちゃった。
「口惜しかったら、ちゃんと踊ったら」
 アザミがトゲのある声で言う。
「みんな、ちゃんとやろっ」
 むっとして声かけて、自分も気合い入れた。

♪駅からつづく長い坂道の~ぼ~り~
 振り向けばそこに
 ほら 輝く未来が広がっているぅ~

 ケド、実力差は歴然としてた。
 こりゃダメだ。
「止めっ」
 アザミがきぱっと言った。
「わざとなの?」
「は?」
「わざとへたっぴに踊ってるわけ?」
 怒ってるみたいな言い方しやがる。
「いや・・・」
 なんて答えていいか分かんないでいると、いつの間にか戻ってた下川先生が間に入った。
「これが実力」
 生徒に向かってへらへら笑うなよ、先生。
 はっと短く強いため息つくアザミ。
「やっぱこいつらじゃないっすよ」
 しゃがんでたユリエが、立ち上がりながら言う。
「だね」
 と、アザミ。
「じゃあれ、誰だったんだ」
「やっぱりウチの生徒じゃないんじゃ?」
「くさいと思ったんだけどな」
 言いながら、もう背中向けて去ってゆく。
 その言葉、ちゃんと耳に入ってたのに、さっきのわたしたちのことだとは気づかなかった。
 あたしも相当、ニワトリかも。
 でもって、また悔しい思いした。
 一年生もいなくなって、ぽつんと残されるわたしたち。
「勝負の判定は・・って、言うまでもないか」
 はいカズラ、そのとおりです。
 さらにそこに、あっちの方から声がする。
「下川先生、通路にクルマ置かないでください。所定の位置があるでしょ」
「あ、すいません」
 先生、慌ててクルマに走る。
 やれやれ、ここもやっぱダメか。
 仕方なく顔を見合わせるわたしたち。
 まぁ~た練習場探しからです。
 前途は多難。
 アイドルの道は険しい。

[つづく]
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# by planetebleue | 2016-07-19 16:10 | アイドル騎士団

#2「天使のオウヨウ」その1

◇[かたゆでエンジェル]第2話
   「天使のオウヨウ」


 0

「あのヒトなんかどうでしょう」
「ターゲット物色するなんて十年早いわ」
「ですか?」
「ありゃ泥沼にはまるタイプだぞ。対処できんのかよ」
「はぁ」
「昔、マリリン・モンロー狙い撃ちにして泥沼にはまった見習いがいたっけ」
「それで、どうなったんですか?」
「食堂で盛りつけやってるよ」
「え?」
「任官になれずに見習い期間終わっちゃったから、がっこに傭ってもらったのさ」
「ひぇぇぇ~っ」


 1

 チャッチャッ、チャチャチャッチャチャッ。
 はぁ~い、ちゃみだよ~ん。
 え? なにやってんだ、って?
 オープニングですよ、オープニング。
 アヴァンのあとは、オープニング、タイトル・コールとつづくのは定石ではありませぬか。
 ん? ラヂオじゃないから、いらない。
 いらないんだ、オープニング。
 ふぅ~ん。
 で?
 あ、自己紹介からやりゃいいのね。
 はいっ、わたくし、このおハナシの[ぢの文]を務めております、ちゃみでございます。
 第二話、ということでございますね。
 まだお馴染みも薄いということで、先ずは登場人物の紹介から始めましょうか。
 え~、このおハナシの主人公は、二人の天使実習生でございます。
 ん? テンシもなんにんってかんじょするのか?
 ま、い~か。なんせ、見た目、JKみたいな二人でございますから。
 一人がミキで、も一人がマキともうします。
 濃いめメイクに黒のゴスロリ風コスなのが、ど新人のミキ。白のドレスにメイクも薄めの一見清純派が、ちょとベテランで曰くありげな実習生のマキでございます。
 え? どこがJK風か、って?
 あのね、雲の上にいるときは、ロリっぽいドレスに、背中には羽根もある天使スタイルなのですが、地上に降りると紺ブレザーに羽根を隠し、JK風のプリーツ・ミニに白のブラウスの胸元にはリボンというスタイルに変身するのでございます。
 冒頭で会話してたのがその二人なんだけど、さ~て、ど~こにいるのかなぁ~。
 あ、いましたいました。今日もコンビニで買ったチョコバー食べるという校則違反犯しながら、雲の上でターゲットを探しております。
 あ、つまり、天使の矢を放つ相手ね。
 天使実習生は、天使の矢を放ち、恋に落ちたニンゲンをシアワセにすることで成績を上げるのが目標なのであります。
 でもって、雲の上から人間観察ができるんだぜ。
 どお? あんまし羨ましくもないか。
 さて、
「すいません、今度こそ初期実習修了させて、独り立ちしますから」
 新人ミキが、ベテラン・マキに謝ってます。
 前回の初実習でいい成績が上げられなかったミキは、相変わらずチューターのマキとの二人組行動なのであります。
「慌てることはないさ」
 こちら、のんびり構えたマキ。白いドレスの一見清純派風でございます。
「ずっと一人もさみしいし」
「あら、マキさんったら寂しがりやさん?」
 上目遣いにもてかわっぽく言うのが、濃いめメイクに黒のゴスロリ風のミキでございます。
 ま、作者のミスマッチ狙いがすけすけではございますが、そこんとこ、お間違いなく。
「い~から矢を放てっ」
「はいっ」
 このへんは新人とチューター。
「あの・・・」
「ん?」
「さっきのハナシですけど、任官できずに見習い期間終わると、食堂の盛りつけなんですか?」
「任官したってクビになるヤツはいるぜ」
「えっ、そうなんですか?」
「調査員なんて、任官クビになったお天使ばっかさ」
「そぉ~なんですか」
「中には掃除のおばさんになったのもいるよ」
「天使が、掃除のおばさんっ」
「泥沼、始末できずにクビになってりゃ世話ぁない」
「そぉ~なのかぁ~」
「だからさ、なんでもテキトーが一番」
「はぁ」
「若い子にしときな。恋に恋するくらいの年が無難ってもんさ。どうせ年がら年中くっついたり離れたりしてるんだから」
「はぁ」
「いっときでも付き合ってくれりゃこっちのもん。そやってマメに成績稼いで、さっさと独り立ちしな」
「そういうもんですか」
「そ~ゆ~もん」
 ってゆうか、天使実習生がそんな調子だから、若い者は年がら年中誰かに恋したり、くっついたり離れたりしてるんじゃないの?
 ニワトリとタマゴだな、こりゃ。
「けどマキさん、さっき慌てることないって。ずっと一人はさみしいって」
「そ・・れわぁ」
「どっちなんですか」
「い~から矢を放てっ」
 はいっ、振り出しに戻る。
「分かりました。テキトーでい~んですよね、テキトーで」
「なんか反抗的だな」
「わたし、テキトーやめない」
「は?」
「わたしにテキトーってなにか分かるまで」
「それ、なんか歌の文句にあったような・・・」
「テキト~ッ」
 ミキさん、ひゅい~んと天使の矢を放ちます。
 矢は弧を描いて飛び、ぶすっと誰かの背中に刺さったようであります。


 2

「前へっ」
 すっくと立ち上がった制服の女子高生がこぶしを握りしめております。
 あ、この女子が、今回、ミキさんの放った矢が刺さっちゃった子なのね。
 え~と、名前が北山瑠里花って、まぁ~たDQ系ネームかい。
 細身の体にショートヘアで、おや、なかなかきりりとした男前の顔立ちではありませぬか。前回の丸顔よりマシだな、こりゃ。
 でもって、場所は教室、時は放課後。これから部活のために部室に向かうところであります。
 で、なんで「前へ」かっつうと、この子、ラグビー部のマネージャーなんですとさ。
 だから、「前へ」か。
 つまり、ラグビーっつうのは、あの楕円形のボールを持ったら、目に進むしかない競技なのであります。
 サッカーみたいに、「一旦ボールを戻します」みたいなことができない。
 ボールをキープしたら、ひたすら前に出るしかないのであります。
 あと、あれだよね、かの大学ラグビーの名門・明大ラグビー部のポリシーっつうか、標語っつうか、そういうあれも「前へ」だったよね。
 思うに、ここにラグビーの精神と申しましょうか・・・え? そんなハナシはどうでもいいから先へ進め、って?
 あ、そうっすか。
 んじゃ、前へっ。
 要するに気合い入れたわけでしょ、瑠里花ちゃんは。
 それも、今日も部活がんばるぞとか、絶対帰りがけのコンビニ・スイーツ我慢するぞとか、そんなんじゃないよね。
 なんせ、ミキさんの天使の矢が背中にぶすっ、でございますから。
 さて、部室の前までやってきた瑠里花ちゃん、すぅ~っと深呼吸一回。でもって、にっと笑顔を作ると、「う~~っす」、明るい声とともに部室のドアを開けます。
 あ、これがいわゆるルーティンなのね。
 さすがラグビー部。
 ほいでもって部員たち、っつうことはほとんど男子どもと軽く言葉を交わしながらグランドへ。お時間まで、ジャージ姿で練習の手伝いに励むわけでございます。
 けど、視線はときおりちらっちらっ。
 一人の男子部員のほうをちらっちらっ。
 視線の先にはすらりとした体つきに乱れた髪、涼しげな目元のイケメンときた。
 それもどこかワイルドで、男らしさを漂わせているとくれば、もうだいたい分かったわな。
 そっ、この男子部員こそ、もともと瑠里花ちゃんのお目当てだったのでございます。
 同じ学年で隣のクラス。名前が、浦島幸太。名は体を・・ちょとあらわしてません。
 データとして肝心なのはこっからね。
 幸太、二年生にしてレギュラー・ポジションをゲットいたしました。
 それもスタンド・オフ。ラグビーにおけるエース・ポジションですわな。
 当然のことながら、女子からの人気は高い。
 あと、野球部のエースじゃなくって、イケメンのキャッチャーのほう? それと水泳部のあいつ? あ、軽音のギターのあいつと、ヴォーカルのあれか。おっと、去年の副委員長だったあいつ?
 ともかく、学年の人気を、えっと、ひぃふうみぃ・・・六分するくらいの人気者。
 この、人気者の幸太を射止めようと、瑠璃子はラグビー部に潜伏すること早四ヶ月。どうやら互いに下の名前で呼び合うくらいのところまできていたのであります。
 ってことは、あれか、ミキの天使の矢は、単に瑠里花の背中を押しただけってことか。
 あとは告るだけ?
 なんかできすぎじゃね?
 雲の上ではミキさん、もうにこにこ顔でグランドのようすを眺めております。
 そう。矢が刺さったジンルイの恋が成就すると、実習生の成績となるのであります。
「カレシのほうも悪しからず思ってるみたいですから、きっとうまくいきますよね」
「四ヶ月もなにやってたんだ」
「え~っと・・・」
 手元の学校支給品のタブレット端末を目で追うミキさん。ここに、さまざまなデータが送られてくるのでございます。
 でもって、そのデータの作成に携わっているのが、天使クビになった調査員なんだな、多分。
「あ、ラグビーに恋したフリをしていたのだそうです」
「なんだ?」
「カレシともラグビーのハナシばかりをし、常にチームのためを考えて行動していたのだとか」
「気の長ぇヤツだな」
「懸命にきっかけを作っていたのです」
「ごめん。キミのことを女子としては考えられない。これからもマネージャーとしてチームに尽くしてくれ」
「な、なにを言い出すんですか、マキさん」
「よくあるハナシだぜ」
「い~です。その時はその時で、なにかうまい囁きを考えますから」
「お前って、キホン、マジメなのな」
「いけませんか?」
「それも典型的なお返事だよな、おマジメ族の」
「それじゃいけないんですか?」
「い~え~、よろしいんじゃございませんか」
「なんか感じ悪い」
「おい」
「はいっ?」
「先に帰ったカレシ、追いかけてるぜ」
「あ」
 てなわけで、おハナシは下界へと転換いたします。
 日はもう落ちて、街灯のともった通学路でございます。
 片側は、なんか苔の生えた古そうな石垣で、その上に学校が建っております。
 反対側も段差があって、建ってる家の二階から上しか見えておりません。
 そんな坂道。
「待ってぇ」
 校門を出た幸太くんに、小走りで追いつく瑠里花ちゃん。
「いっしょに帰ろうよ」
「おう」
 二人して、てれんこてれんこ、駅への道をたどります。
 この日は、瑠里花ちゃんにとっては千載一遇のチャンスなのです。
 それというのも、いっつも幸太といっしょに帰る三人組の一人が風邪で休み。あと二人が怪我とリハビリで接骨院に向かったのであります。
 さすがラグビー部だわな。怪我人の多いこと。
 マネージャーである瑠里花ちゃんがそこんとこ知らないはずもなく、でもって、外すわけにはいかないのも当然のこと。
 片づけぐずぐずしながらタイミングを計り、みんごと、駅まで二人でてれんこなのであります。
 いっすよね、てれんこ。てれんこがもっとも似合うのは、なんつっても中高生時代の下校時でございます。
 いかに時間があり余っていたことか。
 年取るとね、だんだん先を急ぐようになるものなのであります。
 いえ、ちゃみはそんなに先急いでませんよ。作者のほうはかなり先急ぎ始めたみたいっすけど。
 あだっ。
 余計なコト言うなとおこらりました。
 はいはい、瑠璃子と幸太ね。
 たま~に、
「おつかれぇ」
「あ、おつかれぇ」
 先急ぐヤツに追い越されたりなんかしながら、てれんこてれんこ。
「また明日ね」
「おう」
 女子がチャリで追い越してったりする。
 この女子も幸太ファンだったりするんですが、いっしょにいるのはただのマネージャーと思ってるから、そんなにイシキもしない。
 瑠里花、しめしめで、やっぱりてれんこてれんこ。
「あ~、じれってぇ」
 って、マキさん、せっかち。
 ほら。
「ねぇ」
「ん?」
「幸太くんさ、カノジョとかいないの?」
 って、これだけ言うのだって、瑠里花的にはけっこ勇気いったんだから。
 もちろん、天使の矢効果もあったわけなんですが。
「いねぇよ、知ってんじゃん」
「がっこにはね。でも、近所の子とか」
「いねえって」
「ふぅ~ん、もっちゃいないじゃん」
「あ?」
「かっきょいいにょに▽※◇☆・・・」
 決めフレーズのつもりだったんですよ。噛んじゃったし、後半、なに言ってんだか分かんなかったけど。
 日が落ちててよかったよね、瑠里花ちゃん、真っ赤だぜ。
 けど、
「じゃ、お前さ・・・」
 いつもはルリカッと呼び捨てなのに、お前、ときた。
「俺のかんジョにな☆※▽・・・」
 あ~あ、こっちも噛んでんでやんの。それも、そこそこイケメンが赤くなっちゃって。
 なんなんだ、こいつら。
 にしても、なんとまぁ、天使の矢が刺さった恋する乙女が、本命に告られた、ですと?
 なぁ~んかつまんね。
「いいの、あちしで」
 また噛みぎみ。
「ああ」
 ほとんど息だけ。
 そいでも、瑠里花ちゃん、にっこりと微笑んだのは申すまでもございません。
 でもって、見つめ合う瞳と瞳。
 勝手にやってろっ、みたいなもんでありますが、
「あ・・・」
 幸太なにやら思い出したようであります。
 どした?
「俺、今度の期末、赤点なしで突破するまで、女の子と付き合うとかダメって、ママに言われてたんだ」
 さっきよかもっとあかぁ~い顔して、なに言ってんだ、こいつ。
「マジ?」
「ああ。だから、それまでは・・・」
「分かった。でも、じゃ、試験終わったら・・・」
「俺、頑張るよ」
 だってさ。
 なぁ~んか、妙な展開になってまいりました。

[その2につづく]
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# by planetebleue | 2016-07-19 16:01 | かたゆでエンジェル

#2「天使のオウヨウ」その2

 3

 てなわけで、雲の上も大わらわであります。
「期末試験までどんだけある?」
「え~と、あとひと月とちょっとです」
「ひと月ちょっとねぇ」
「勉強ガンバレって囁きますか?」
「んなもん囁かなくったってガンバルだろうさ。けど、そいで間に合うのか?」
「さぁ」
「さぁって、調べてみろよ」
「あ、はい」
 ミキさん、タブレットで調べてます。
「はぁ~~・・・」
「ため息もんか」
「ですねぇ」
 調査結果によると、こいつ、一学期の中間・期末、二学期の中間と、数学・英語・物理で赤点つづき。このままじゃ進級も危ないと、担任に呼び出されたママが警告受けちゃったとか。
 そら、カノジョといちゃいちゃしてるばやいじゃないわな。
「どうしましょ」
「どうするったって」
「もっと勉強ガンバレって囁くとか?」
「効く? それ効くと思う?」
「んな言い方しなくったって」
「そもそもだ、そこ、天使の責任なのか?」
「さぁ」
「ちょっと調べてみ」
「はい」
 マキさんに言われたミキちゃま、タブレット端末でマニュアル=天使規則をチェックしております。
「あ、ここかな・・・当該ジンルイに障害があった場合、天使は障害の除去または克服に尽力すべし、だそうです」
「くわっ、バカ男のべんきょの面倒までみんのかよ」
「でもぉ、マニュアルに書いてあるしぃ」
「急にキャラ変えんなよ」
「てへぺろっ」
「マジメにやらんかいっ」
「さっきはおマジメ族とか言ったくせに」
「そぉ~だけどぉ~」
「マキさん、なにもアイディア出してくれないじゃないですか」
「お、そう来るか」
「どうするんですか。先輩らしいとこ見せてくださいよ」
「ヒト責めてどうすんだよ」
「だってぇ・・・」
「いいか」
「はい」
「囁きってのは一回こっきり。ここぞって時にしか使えない」
「はい」
「だからな・・・」
「どうします?」
「とりあえず、ようすを見る」
「へ?」
 マキさん、すました顔してるばやいじゃないぞ。
 けどまぁ、この難問、ベテランのひねくれ見習い天使にもいいアイディアはなかったようでございます。
 じゃ、ようす見ましょ、ようす。
 だがしかし、瑠里花ちゃん、なかなかしっかり者だったようでございます。
 部活が終わったあと、私立図書館ときどき駅前マクドで、勉強会を開催したのであります。
 ラッキーだったのは、ラグビー部がもう県大会で敗退したあとだったってことかな。
 そいでもベスト8までいったのは、このがっこのラグビー部としては過去最高の成績だったとか。
 もちろん、全試合、幸太がスタンド・オフとして活躍したのは言うまでもありません。
 だがしかし、それで進級が保証されるほどの、がっこの英雄にはなれなかったようです。
 残念でした。あははのは。
 あ、失礼、笑ってるばやいじゃございませんでした。
 ま、ともかく、新チームが始動したばかりの、キホン練習や個人練習が多いこの時期でございます。
 ここは勉強に集中するっきゃない。
 監督さんもそこんとこ分かってるから、瑠里花に預けちゃった。
 瑠里花的にはラッキーってなもんですが、そうはいっても進級できなきゃおハナシにならない。
 そこで、部活が終わると二人きりの勉強会でございます。
 ってさ、まいんちがっこの帰りに、二人っきりで市立図書館ときどき駅前マクドって、それもう付き合ってるようなもんじゃない。
 違う?
 そうじゃない?
 あ、気持ちの問題だってゆうわけね。
 デューティがないまま、図書館やマクドでだらだら過ごすなら、付き合ってると言えなくもない。
 しかし、この節の瑠里花と幸太のばあい、雑談も封印して勉強に励んでた。
 必死だな、瑠里花も。
 しかし、そんな瑠里花も、そう成績抜群ってわけじゃない。
 英語と数学は、幸いにして平均点以上は稼げるヒトなのだが、物理はやっぱり苦手。
 しかも幸太くん、キホンの英・数のデキがひどい。そっちの底上げを優先せざるを得ないもんだから、どしたってブツリが後回しになるのであります。
 二週目くらいまでは優しかった瑠里花も、三週目あたりから苛々を感じるようになり、四週目ともなると焦りの色が濃くなってゆくのでありました。


 4

「どうしよ、物理」
「ちんぷんかんぷんだよ、俺」
「う~ん。物理得意な子に山かけてもらおうか」
「それでもなぁ・・・」
 グランドでは颯爽としている幸太くんの情けない顔ったら。
 けど、私にか見せない顔。そこがまたい~んだな、だと、瑠里花。
 調子こいてんじゃねぇぞ、ったく。
 と、い~たいのわ、雲の上のミキとマキでございます。
「マキさん、あと三日しかございません」
「で、成績は?」
「ブツリが・・・」
「危ないのか」
「赤点クリア程度がどうしてできないんでしょ、あの男子は」
「ヤバイじゃん」
「はい」
「どうすんべ」
「しっかり勉強と囁く・・のはムダですよね」
「もはやな」
「どうしたらいいんですか、マキさん」
「こうなりゃ、とっときの手だな」
「え?」
「いいか」
 こしょこしょこしょっと、マキさんなにやらミキさんに耳打ちします。
「ええ~~っ!」
 目をまん丸にして驚くミキさん。
「そんな、そんなこと、い~んですか?」
「じゃほかに手があるのかよ」
「そういうときのマキさんの言い方って、挑発的ですよね」
「ほかに手があるのだろうか、いやあるわけがない」
「反語の用法」
「お、古文はいけそうだな」
「問題はブツリです」
「だから、さっ」
「けど・・・」
「あの二人がうまくいきゃ、初期研修修了だぜ」
「マキさんって、悪魔みたいですよね」
 ふふっ。
 見習い天使とは思えぬ笑みを、唇の端に浮かべるマキでございました。
 *
 てなわけで、ミキは一人、瑠里花を追いかけて、囁きの準備でございます。
 あ、囁きと申しますのは、天使が、矢が刺さった対象のココロに落とすコトバのことでございます。
 ま、背中を押すと申しましょうか。ためらいがちなニンゲンに思い切りをつけさせる言葉でございます。
 なんせ、矢が刺さったニンゲンの恋が成就しないと、見習い天使の成績とならないのであります。
「ふぅ~~」
 と、これ瑠里花ちゃんのため息ね。
 でもって、お風呂に入った瑠里花ちゃんを、お外の電信柱の上あたりから観察しているのがミキでございます。
 いえ、お風呂場の窓はちゃ~んと閉まってますよ。でも、天使には見えちゃうんですね。そこは、天使ですから。
 なので、ジンルイが天使の真似をしても、よそんちのバスルームは覗けません。念のため。
 でもって、こちらも、
「ふぅ~っ」
 と、ため息ひとつのミキ。
 なんせ、天使実習生の規則により、囁きは一回こっきりしかできません。
 そのワンチャンスを生かすのが、このコトバなのかい。
 けど、[ほかに手があるだろうか、いやあるわけがない]なのでございます。
「しょうがない」
 ミキちゃま、マキさんに言われたとおりのコトバを、瑠里花のココロに囁きます。
 あ、実際にはタブレットに囁くんですけどね。それが専用アプリによって、対象ジンルイのココロに落ちるのであります。
 い~かげんな設定ですけどね。
 その一言を、二度、三度。
 すると、すっと顔を上げる瑠里花ちゃん。
「それしかないか」
 と、ぽつり。
 どうやら、囁きの効果があったようでございます。
 けど、瑠里花もミキちゃまもイマイチ浮かない顔。
 なんでだ?
 そしていよいよ、期末試験が始まったのでございます。
 *
 三日間続く期末試験の、初日に数学、二日目に英語と、どうやら40点前後はいけた幸太くん。
 最終日、問題の物理の試験を迎えます。
「あ~も~脳みそぱんぱん。ダメッ、ムリッ」
 ラグビー部のエースが青白い顔で唸ってます。よっぽど自信ないんだな、こりゃ。
 でもって顔が青白いのは、寝不足なんでしょうね、きっと。
 夜明けまで頑張ったんだ。
 けどさ、そこまでやっても自信ないんだったら、ちゃんと寝たほうがよかったんじゃねぇの?
 ただでさえできないのに、寝不足じゃ、そのわずかな実力すら・・・。
 そんなこたい~から、先に進め?
 はいはい。
「どうしよう」
 泣きそうな顔の幸太くんに、なにやら覚悟を決めた雰囲気のマジ顔を向ける瑠里花ちゃん。
「これ、してって」
 ちょと大きめのプラ製安腕時計を差し出します。
「時計なんかいいよ、教室にあるし」
「違うの」
 腕時計の裏側を示す瑠里花ちゃん。そこに、ちっちゃい紙がはっつけてあって、ちっこい文字がぎっしり並んでます。
「出そうなワードと公式」
「え?」
 幸太くん、びっくりお目々を瑠里花ちゃんに向けております。
 けど瑠里花ちゃん、真剣そものも。
「あと、前の席、高橋だよね」
「ああ」
「試験終わり五分前に、一回だけ体、横に動かすように頼んどいたから」
「なんで・・・」
「念のためだよ、念のため」
 幸太くんの言葉を遮る瑠里花ちゃん。
「幸太くんの努力はちゃんと分かってるよ。でも・・・」
 言葉に詰まる瑠里花ちゃんなんだけど、幸太くんのほうも黙って腕時計の裏側を見ております。
「実力プラス二問か三問でいけると思うんだ。だから・・・」
 じっと幸太くんを見つめる瑠里花ちゃん。
 そりゃ、ねえ。天使の矢まで喰らった本命と付き合えるかどうかがかかってるわけですからして。
 ハートはもうどっきどき。
 次の瞬間、幸太くんの顔が怒りのそれに変わり、「そんな卑怯なことができるかっ」と腕時計投げつけられるんじゃないか。
 そっちの心配もあるからどっきどき。
 すると幸太くんが、
「なんで高橋に・・?」
 って、おい、そっちかい。
 ま、気になるのは分からないじゃないけど。
「保育園からいっしょなんだ」
「へ?」
「だから、恥エピ、絶対言わないって約束して、あと、これであたしの弱味、いっこ握ったんだからって」
「あ~~」
 ほぼ意味ないただの声。
「時間だよ、しっかりね」
 ちっちゃくガッツポーズ見せて、くるりと背中を向ける瑠里花に、
「ルリカッ」
 声をかける幸太くん。
 ん? と振り向く瑠里花。
 まさか、「余計なことすんんじゃねえっ」とか?
 ハッと息を吸う幸太に、瑠里花ちゃんどっきどき。
 すると、
「サンキュ」
 だって。
 けっ。

[その3につづく]
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# by planetebleue | 2016-07-19 16:00 | かたゆでエンジェル

#2「天使のオウヨウ」その3

 5

 これを見て、にやりとほくそ笑むのは雲の上のマキさまでございます。
「うまくいったじゃねぇか」
「はぁ」
 と、気のない返事のミキちゃま。
「い~んでしょうか、本当に」
「瑠里花、よく考えたじゃないか。きっとうまくいくよ」
「不正行為は不正行為です」
「お前って、ホント、ヘンなとこマジメな」
「それをいけないコトと思ったことは、かつてありません」
「幸太にとっちゃ、人生の冒険ってヤツさ」
「確かに、冒険ではありますけど」
 へ?
 大げさに言ってみただけだったのにね、マキさま。
「ともかく、見てみようよ」
 と、教室に向かう幸太を眺め下ろした、その時のことでございました。
「がははははっ」
 どこやらで聞いた下品な笑い声が上空から聞こえてまいります。
 いや~な予感で上空を見上げるマキとミキ。
 するとなにやら煙のようなちっちゃこい黒い雲が浮かび、そこからぬっと顔を出したのは、あ~らま、ちょ~かわゆいお顔。
「小悪魔の手伝いとはご苦労さまだね」
 そう、小悪魔のカオリンでございます。
 こちら、天使実習生のジャマをするのが実習の見習い悪魔。見習い天使の矢が刺さった恋を破綻させると成績アップという、天使実習生とは真逆のお立場でございます。
「小悪魔の手伝い?」
「どういうことですか?」
 不審そうなミキとマキの前に、すぅっと近づいてくる黒い雲。
「あたしが先に、カンニングしたらと囁いておいたのさ」
「ええ~っ」
「ええ~っ」
 あ、ふたつあるのは、ひとつがマキ、もひとつがミキでございますね。
「天使にまで囁かれりゃ、そりゃその気になるわな」
 いっひっひっと笑う顔さえかわゆいんだな、この小悪魔。
 マキさんとミキさん、そりゃげげ~~っでございますわな。
「かなりカツフジしてたけどね」
「カツフジ?」
「そっ、カツフジしてた」
「なんだそりゃ?」
「お前ってコトバ知らねぇな。ほら、こっちにしようか、あっちにしようか、ココロがせめぎ合う状態」
「それを言うならカットウじゃっ」
「へ?」
「お前こそ、漢字読めねぇくせに」
「葛藤。カツフジ。ま、読めないこともないかと・・・」
 と、ミキちゃま。
「とんかつ屋の屋号じゃねぇや」
「そ、それでもなんでも、迷ってるヤツの背中を、見習い天使が押してくれたんだ。まぁ~ったくご苦労さまっ」
 自分が追い詰められたら、相手の痛いところを突く。さすが小悪魔。
 けどミキさん、冷静に反論いたします。
「でも、成功すれば、こちらの成績です」
「そうそう。赤点さえクリアすりゃこっちのもんだぜ」
 ふんっと鼻で笑うカオリン。
「あやつはマジメなラガーメン。カンニングなんぞしようとすれば、挙動不審でたちまち発覚するのがオチさ」
 え? と教室の中を覗きこむマキさまとミキちゃま。
 するとなるほど、幸太ったら腕時計いじくったり、外して置いて、また動かしたり。さらには上半身のばして、前の高橋くんの机の上を覗きこんだり。
 明らかに挙動不審なのであります。
「カンニングで摘発されるんだ。赤点取るよりもっとひどい結果になるぜ」
 あっりゃ~っ。さすがのマキさままでなにも言い返せません。
 そもそも不正行為なんか囁くからこういうことになるんだ。後悔のミキ、それでも一言、
「うまくいくかもしれないもん」
 けど、声小さい。
「いかないっ」
 カオリン、声大きい。
「全てを失って一からやり直してもらおうじゃないか。ふぇっふぇっふぇっ。これぞ小悪魔のい~仕事」
 ごきげんなカオリンを、マキさまがむっと見返します。
「けど、あの子にとってはそれもひとつの経験。人生のプラスになるかもよ。そしたらそれもシアワセというものじゃないか?」
「ふんっ、見習い天使がよう屁理屈こくぜ」
 確かに。いくらなんでも屁理屈でございますよ、マキさま。
「ちぇっ」
 舌打ちすると、マキさん、背中の羽根でぱたぱたと飛び上がります。
「ミキ、最後まで見といてな」
「マ、マキさんっ」
「コンビニでアイス食ってくら」
 ぱたぱたぱた。飛び去ってしまったではありませんか。
「マキさん、それ校則違反」
 つぶやくミキに、
「結果、賭けるか?」
 と、カオリン。
「は~あ」
 茫然と雲の上に座りこむミキちゃまでございました。
 *
「あら?」
 それから一時間ほどのちのことでございます。
「試験終わったみたいです」
「なぬ?」
 ぞろぞろと教室から出てくる中に、不安と達成感がいりまじったような顔をした幸太くんもちゃ~んといるではありませんか。
「カンニング、めっかんなかったんか?」
「さぁ」
「さぁって、お前、見てなかったのかよ」
 ま、そ~ゆ~カオリンも、勝ったも同然と、ポテチ食いながら動画サイト見てたんですけどね。
 でもってミキは、ただただぼぉ~っ。
「どぉ~なったんだよ」
 奇声を発したカオリンが、ん? となにかに気づきます。
「けどさ、点数がいってなけりゃこっちのもんだよな」
「カンニングうまくいったかもしれないもん」
 自信なさそうにぶつぶつぶつのミキ。
 と、二人して地上の幸太を目で追っております。
 さてその地上。
 下駄箱入り口の角のところに、瑠里花ちゃんが駆けつけます。
「どうだった?」
「うん」
 と、先について待ってた幸太くん。
「自信はない。けど全力は尽くした。俺はラガーマンだ。勝ち負けじゃない。後悔したくなかったんだ」
 ですと。
「幸太くん」
 瑠里花、胸きゅん。
 けど、この場面、おかしくねぇか?
 そもカンニングさせたのは瑠里花じゃん。でもって、そのおかげで赤点クリアしたって、どこが[俺はラガーマン]なんだよ。
 この卑怯者。
 けど、あれ?
 ちゃみもちゃんと見てたわけじゃないんだけど、幸太、腕時計の裏、見たっけ?
 確かにちょうど終了五分前、前の席の高橋くんが大きく体を傾けたときも、下向いて解答用紙になにか書きこんでたような・・・。
 *(時間経過)の間に、なにがあったんだ?
「ルリカの気持ちには感謝してる。ってゆうか、ルリカにそこまでさせた自分が情けなかったんだ。だから・・・」
「え?」
「自分の力で、勝負してきた」
 がちょ~ん。そゆこと。
 その瞬間、瑠里花ちゃんは、幸太のココロが男前っ、と思う反面、赤点やっちまったんじゃね? という不安が交錯したのであります。
 実力勝負で、赤点、クリアできたんだろか。
 もしもできなかったら、あたしは、そして幸太は・・・。
 複雑な思いが瑠里花の胸を締めつけ・・ってか、この場にいたってなんだけど、ちゃんと授業受けろよな、幸太。
 心配で心配でしょうがない瑠里花ちゃん、その場で早速答え合わせしてみることにいたします。
 それはい~んだけど、この幸太ってヤツが、回答欄になに書いたか、ろくに覚えてないんでやんの。
 なので答え合わせしてもあいまいなとこができちゃう。
 ねぇ瑠里花ちゃん、ホントにこの男でい~の? そりゃ見た目ちょっとイケてるし、グランドじゃもっとイケてるけどさ、にしても・・・。
「ここ、b選んだんだよね」
「あ、うん、確か、b」
「よっしゃいけるよ。届いた。多分、届いてると思う」
「マジ?」
「うん、頑張ったね、幸太くん」
「ああ」
 と、見つめ合う瞳と瞳・・って、なんかさぁ、想定してたのと結末ちがくね?
 どうなってんだ。
 雲の上じゃ、ミキちゃまはほっと胸をなで下ろし、カオリンは絶望でひっくり返ってましたとさ。


 6

 それから一週間後。返された答案を見てみると、幸太くん、きわどい科目もありましたが、なんと一教科も赤点を取らず、見事にクリアしたのであります。
 え? きわどい教科?
 んなもん、ブツリに決まってるでしょうが。
 そんなわけで、先ずはめでたしめでたし。瑠里花と幸太はすっかりカップル気分。
「クリスマス、どうする?」
「お前、決めろよ」
 とかなんとか。
 やっちゃいらんねぇわ。
「よかったです」
 と、こちらはミキ。
「わたしの成績も少しは上がったと思います。もしかしたら初期研修、終了させてもらえるかもしれません。ありがとうございました、マキさん」
「まだ気が早ぇよ」
「そうですか? でも、あのカップルなら、きっともっと親密になりますよ。そうすれば、わたしの成績も・・・」
 と、言ってるそばから、ぴ~ろぴ~ろぴろぴろぴ~っと鳴る着メロはど~ゆ~わけかMCZ。
「あ、せんせからメイルだ」
 と、タブレットの画面をしゅっ。
「あれ?」
「どうかしたか」
「マキさんといっしょに報告に来いって」
「あたしも?」
「ええ、なんででしょ」
「きっとなにか用があるんでしょうよ」
 って、マキさん、なにか身に覚えがありそうですぜ。
 *
 てなわけで、ミキとマキ、雲の上にありながら緑豊かな、カミサマ学園のキャンパスにやってまいります。
 手入れの行き届いた庭園に囲まれ、瀟洒な校舎が点々と並ぶ、まるで絵に描いたような美しい学園。
 すいませんねぇ、この描写。
 作者によりますと、なにしろカミサマ学園なので想像に頼ってもらったほうがいいのだとか。
 なので、想像に頼ってください。
 ま、それはともかく、とある瀟洒な校舎に向かうミキとマキの後ろ姿は、萌え系JKそのものなのであります。
 やがて廊下をすたすた。教官室のドアをとんとんとん。
「ミキです。マキさんもいっしょです」
「入りなさい」
 ドア開けて中に入れば、担当教官は衣装までもがきゃりーぱみゅぱみゅ似。
 え? まちっと描写しろ、って?
 はいみなさん、想像力を働かせましょう。
「ミキさん、結論から言いましょう。減点です」
「え?」
「まぁマキさんがそそのかしたんでしょうけれど、天使が不正行為を囁いてどうするんですか」
「やっぱり・・・」
「当然です」
「はい」
 思わず下を向いたミキさん、でもはっと顔を上げると、
「でも、結果はうまくいきました」
「その結果が、どうやって導かれたと思ってるの」
「え?」
「マキさん、分かってるわね」
「そ~ですねぇ~~」
 なにやら天井見てるマキさん。
 え? とその横顔を見るミキさん。
「天使の矢を受けて恋に落ちたジンルイの、その恋愛対象にプチ矢を放ち、囁きを送りましたね」
 ま~だ天井見てるマキ。
 いよいよ、えっ、えっのミキ。
「どうなの、マキさん」
「はい」
「天使の矢を受けたジンルイが恋する相手に、プチ矢を放ち囁きを送る。これ、裏技として校則違反なのはご存知よね」
「はい」
「それも、ミキさんの囁きを覆すようなことを」
「なんて囁いたんですか?」
 そりゃミキちゃま、気になりますわな。
「お前、ラガーマンだろ」
「それだけ?」
「それだけだよ」
「なんで?」
「だって、あの状況だぜ。カンニングめっかって、小悪魔の成績上げさせるくらいなら、させないほうがい~に決まってんじゃん」
「あなたは小悪魔の成績を下げようとしたの?」
「そうじゃなくって、ニンゲンにとってのよりよい方法をとろうと・・・」
「じゃ、最初の囁きをミキさんにそそのかしたのは?」
「それは、ミキに、成績、とらせようと・・・」
「安直ね」
 むすっと黙っちゃうマキさん。
「今回の結果は、あくまで結果論です。あなたがたの成績にはなりません」
「あたしは・・・」
 言いかけるマキ。
「なぁに?」
「ニンゲンの力を信じてみたかったんです。ニンゲンの力ってものを、試してみたかったんです」
「それがあなたのいけないところなのです」
 きゃりぱみゅ似の担当教官、きっぱりと言います。
「前にも言いましたよね。ニンゲンの力を多くの天使が過信したから、世界には不幸が蔓延しているのです」
「そうなんでしょうか」
「え?」
「ホントにそうなんでしょうか」
 マキさん、どこか必死に訴えております。
 ケド、教官は冷静でした。
「結果ではありません。ニンゲンを過信するのは、見習い天使にとっても小悪魔にとっても危険なことなのです。いいですね」
 マキさん、むすっと返事もしません。
「いいですねっ」
「ふぁい」
 不承不承答えてます。
「減点です」
「はい」
「ミキさん」
「はい?」
「もうしばらく、マキさんについてなさい」
「はい」
「マキさん、分かってるわね」
「は?」
「あなたのチューターとしての成績もあるんですよ」
「はい」
 どこか不満げに返事するマキさまです。
 なんかさ、教官といろいろあったような感じしません? 過去に。
 どぉ~こか曰くありげなベテラン見習い天使なのであります。
 そんなことも知らず、ミキはただ、マキの横顔を不思議そうに眺めておりましたとさ。


 7

「なぁ~にやった、マキッ」
 地上に戻ると、カオリンがもんのすごい形相でマキとミキを待ち受けておりました。
 もんのすごい形相っていっても、なんせめっちゃかわゆいカオリンのことでございます。そのお顔もまた、おほっ。
「知ってんだろ」
 うんざりと答えるマキさま。
「おかげであたいまで成績下がったじゃねぇ~か」
 吠えるカオリン。
「ちゃらっ」
「は?」
「こっちも成績下がったんだから、ちゃらっ」
「そ~ゆ~問題じゃないだろっ」
 凄むカオリンに、なぜか遠くを見るような目で答えるマキ。
「後悔してんのさ」
「当たり前だ、校則違反の裏技なんか・・・」
「じゃなくって」
「あん?」
 そこで、は~あと深いため息のマキ。
「お前、ニンゲンの力って、信じてる?」
「んなもん信じたら、裏切られるにきまってんだろうが」
「けど、裏切られてみたいと思わない? タマには」
「はぁ?」
「分かんないか。ま、こんだもっとうまくやろうぜ」
「あ~ん?」
 言われたカオリンがお目々をまん丸にしております。
「じゃな。ミキ、行くよ」
 カオリン残して、マキとミキ、背中の羽根でぱたぱたぱたっと飛び去ってゆきます。
 *
「すいません、マキさん」
「しょうがねぇよ」
「わたし、なんとしても成績を上げて・・・」
「慌てんなって」
「え?」
「もうしばらく、二人してこの人間界ってヤツ、こちょっとかきまわしてみようぜ」
「は?」
 ぱたぱたぱた。
 飛んで行く先輩マキ。
 見送るミキの目が、なにかを語ろうとしております。
 それ、天使としてどうなんですか?
 マキさんって、ど~ゆ~天使なんですか?

 知りたい?
 だったら、また次回ね。
 ちゃみでしたっ。

[つづく]
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# by planetebleue | 2016-07-19 15:59 | かたゆでエンジェル

やっとアップしまぁ〜す。

 まいどっ、ちゃみでっす。
 って、まぁ〜た二ヶ月以上もほっぱらっぱですよ。
まぁ〜ったく、蒼辰の手が遅いことったら、もう呆れてしまいますです。
しっかし、ここに無事、「かたゆでエンジェル」「アイドル騎士団」りょうほうの第2話がやっと出来上がりましたでございます。
なので、今からアップしますからね。
少々お待ちくださいませまで。
ほんじゃ、またあとで。
ちゃみでしたっ。
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# by planetebleue | 2016-07-19 15:54 | ちゃみのMC

新作、upしましたぁ!

 まいどっ、ちゃみでっす。
 まいどって、お前、二ヶ月もほっぽらかしといて、なにがまいどだ、ってお叱りを受けそうでございます。
 早いハナシが、蒼辰の新しいおハナシがちっとも上がって来なかったと、こういうわけなんですけどね。
 なんか、雑談でもしとけばよかったですね、ちゃみが。
 以後気をつけます。

 てなわけで、ようよう新しいおハナシのupでございます。
 前回upした「かたゆでエンジェル」の#2ではなく、新しいシリーズの第1回でございます。
 シリーズ・タイトルが「アイドル騎士団」でございます。
 え〜、読めばすぐ分かるんですが、さる人気アイドル・グループにインスパイアされて出来上がった世界でございます。
 面白いの?
 面白いハズッ、と蒼辰が叫んでおります。
 先ずはご一読の上、ご意見ご感想などお寄せいただければと思っております。

 例によって、ブログの構造上、こちらを後からupしております。
 ほいでわ、読んでやってくださいましっ。
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# by planetebleue | 2016-04-28 17:17 | ちゃみのMC