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16年春リニューアルしました! 蒼辰が書くおハナシを随時アップしております。ちゃみのMCともども、読んでやって下さいまし。
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カテゴリ:かたゆでエンジェル( 7 )

第2話「地球を守るアイドルにも、練習場所がいるのデス」その2

 3・見たい、この目でシュバリアンを

「これじゃめぇ~ねぇ~じゃねぇか」
 突然叫んだのは、あの派手はで制服のヂャアそのヒトでした。
 ロボット・カメラ蜂の送ってくる映像が、突如、三分の二ばかり白くにごってしまったのです。
 なんかゴミひろったんだな、きっと。
「地球のゴミはこんなに汚れているのか」
「はぁ」
 ボスの自動翻訳機がまた調子おかしいと思いながら、銀髪男は適当に返事しておいた。
「二は分かるか?」
「は?」
「三は分かるかと聞いているのだ」
「はぁ?」
「あ・・・」
「なにか?」
「イチはどこか分かるか」
 やっぱ自動翻訳機おかしいわ。
「はっ」
 銀髪男がモニターをがちゃがちゃ。
「分かりました」
「よし、その付近の宇宙艇を隠せる場所に着陸せよ」
「ええっ?」
 銀髪男が驚いて顔を上げると、ヂャア、怖い顔で睨みつけているのでありました。
 わかりましたよ。
「2304 3305 8762 2099に着陸する」
「了解」
 操縦する白の銀髪男も、やれやれ気分で操縦桿を倒したのでありました。
 そして数分後。
 すごいっすね、ヤツらの宇宙艇は。
 わずか数分で、葦の茂る河原を発見し、そこに宇宙艇を隠しながら着陸していたのでありました。
 そして、どさっ。ヂャアが真っ先に地球の大地に降り立ちます。
「危険ではないでしょうか」
 後ろに降り立った銀髪男が情けない声で言う。
「見たい」
「は?」
「この目で、タークド・シルジュウソの作ったシュバリアンを」
「だが、しかし、我々のパワーでは、その・・・」
「ほっとする」
「は?」
「シンシャだよ、シンシャ」
「へ?」
「ほら、そっくりが2Dになる」
「あ、ひょっとして、フォト」
「そう、そのシンシャ」
「それを言うなら、シャシンであります」
「どっちでもいいっ」
「はっ」
「それさえとれば、司令官どのにい~とこ見せられるっつうもん」
「はぁ」
 銀髪男、どうやらヂャアの言ってること、半分くらいしか理解できてない。
「お前は、俺を先導しろ」
「はぁ?」
「残りは二人ずつ、俺が見える場所で目立たないように行動するんだ」
「それでは、宇宙艇がカラに・・・」
「わたしになにがあってもいいというのかっ」
 唾が飛びました。ヂャア、偉いヒトのようです。いちおー。
「分かりました」
 てなわけで、スマホ状の通信機のマップを見る銀の銀髪男とヂャアが真っ直ぐ目的地に向かい、桃と白が右後方、黒と青が左後方というフォーメーションで移動を開始します。
 あ、そうそう。銀髪男どもは、例によってモスグリーンのつなぎに、黒のブーツで、胸のとこに各自のカラーが差し色されております。
 でもって、[道を歩く]という考えがないんだかなんだか、ヂャアと銀の銀髪男は、川堤を越えると、雑草の生い茂る空き地をまっすぐに歩いてゆきます。
「これが地球のじびたか」
「はっ」
 やっぱ翻訳機調子おかしいと思いながら、銀髪男は適当に返事しておいた。
「やらかいかたいやらかいかたい」
 ぶつぶつ言いながら歩くヂャアに、銀髪男はもう返事もしない。
 やがて、空き地の向こうの、雑木林に覆われた小さな丘みたいのを越えると、眼下の道路の反対側の丘の上に、巌厳学園の第二校舎が見えていた。
「あそこです」
「下がる、上がる」
「はいっ」
 い~かげんなやりとりしながら、ヂャアと銀髪男が第二校舎に向かう。
 そこは、通称飛び地って言われてるとこで、サッカーもできるグランドとふたつの小体育館があった。
 そのうちのいっこが、GGC=巌厳学園チア部の、通称本部と言われている専用の体育館だった。
 道路を渡ると、緩い傾斜の畑の先に第二校舎のフェンスがある。
 ヂャアと銀髪男、畑踏みにじって、まっすぐフェンスに向かってる。
 怒られるぞ、農家のおじさんに。
 でもってもちろん、右後ろからは桃と白が、左に黒と青が、畑の縁つかってフェンスに近づいてゆく。
「どやって見つける?」
「そ~ですねぇ~・・・」
 銀髪男、ノーアイディアらしい。
「色がついてるとか言ってたな」
「あ、はい、五色の着衣でありました」
「何色だ」
「えっと、ピンクがかぶってました」
「あとは」
「赤と緑と・・・」
「あとは」
「え~っと・・・」
 必死こいて考えてやんの。記憶力大したことないな、こいつ。
「まぁいい。五色の五人組だな」
「はい」
「よし」
 派手はでコスのヂャア、いきなりフェンスによじ登っちゃった。
 それを見て、あとの四人もこっち向かって走ってくる。
 フェンスに上がると、1メートルくらいのとこがGGCの本部体育館で、ちょうど窓から中のようすが窺える。
 中ではGGCの選抜チームWonderersが練習中。そりゃきれっきれのいい動き。
 それを見た銀髪男がハッと目を見開く。
「あれ、あれくらいの動きでした」
「なに?」
 も一度中のようすに目をやるヂャア。
「ならば、あの中におるな」
 ひょいっとフェンスを飛び降りるヂャアと銀髪男。着地すると目の前が窓。そこに、どさっとストレッチングのために座った二人の女子。
 おんなじ高さで出会う目と目。
 女子の顔が一瞬ひきつったかと思うと、
「覗きよぉ~~っ」
 甲高い声で思いっきり叫んだ。
 そこに、どさどさどさとフェンスから下りてくるあと四人の銀髪男。
「覗き?」「どこどこ」「あそこです」「捕まえてっ」「はいっ」
 つぎつぎと声がして、足音がどどどどっ、どどどどっ、忙しく動き回ってる。
 え? え? え?
 ヂャアと銀髪男、思わず顔を見合わせ、窓の中を見て、もう一度、え? と顔を見合わせる。
 ケド、そんなことしてる場合じゃありませんでした。
「いたっ」
「捕まえろっ」
 声とともに、左右から三十人あまりのジャージ姿の女子がどどどどどっと迫ってきたのです。
 なにしろフェンスと体育館にはさまれた細長い空間。逃げるとすれば再びフェンスを乗り越えるしかなかったのですが、この連中、事態が飲みこめぬままただ突っ立っておりました。
「捕まえろっ」
「引きずりこめっ」
「この野郎っ」
 正義感に燃えた数十人のJKが、いろんなこと叫びながら突進してくるのであります。
 世の中にこれ以上恐ろしいことはないんじゃないか。
 足がすくんでる間に、つぎつぎと腕を取られ、羽交い締めにされ、
「なにをするっ、わたしを誰だと思ってる」
 と、叫んでも、
「ムダです、ヂャアさま」
 はい、そのとおり。
 あとの四人も恐怖にひきつり、両手を上げております。
 しっかし、フェンス乗り越えて中に入るなんて、大胆っつうか、常識ないっつうか。
 あ、宇宙人の見分け方に、地球常識がないってゆう項目がありましたっけ。
 それはともかく、両腕をつかまれ、羽交い締めされ、足まで持ち上げられ、六人の大のオトナが体育館に引きずりこまれてしまったのであります。
 そこにはさらに数十人のジャージだったり練習着だったりの女子。
「ど~ゆ~つもりよ、スケベ親父」
「変態じゃないのっ」
「ストーカー?」
「どうなるか見せてやろうよ」
 さまざまな罵声とともに、百個くらいの怒りの女子目線を浴びることになった。
「ひっ、ひっ、ひぇ~っ」
 この時はじめて、ヂャアのココロに恐怖心が芽生え、あっという間に沸点に達しました。
 そして、ヂャアの制服には、恐怖が沸点に達すると反応する、とある装置が仕こまれていたのです。
 ぴか~ん。着ていた制服が光り出したかと思うと、ぬめぬめと変態を始めたのでした。
「きゃっ、なにっ」
 取り囲んでいた女子が、わっと飛び退きます。
 それを見た銀髪男たちも、恐怖心ともあいまって、
「ふかんぜんへ、んたいっ」
 こちらも全身ぴか~ん。アーマー・スタイルにと変身を始めました。
 これらのパワーを使うと感知されてしまうということ、知らなかったんだか、忘れてたんだか・・・。


 4・ドーナッテルンダー!

 ぴ~ぴ~ぴ~。
 あたしの頭の中で、あの警告音が鳴り出した。
「ん?」
 顔を上げたのは全員いっしょ。
「来た」
「やっぱ?」
「鳴ってる」
 とっさに、コブシが見たことないスマホ取り出した。
 指でぴゅっとかやってチェックしてる。
「第二校舎だ」
「なんだってぇ」
 下川先生ががっと立ち上がり、椅子引きそこねて、膝打ってる。
「行きましょう」
「う、うん」
 必死に立ち直る下川先生。
「アーマー着られる」
「だねっ」
 真っ先に立ち上がるカズラとアヤメ。
「またバトルとかやるのぉ」
「しゃあないよ」
 不満そうなスミレに答えるミズキ。
「今度はもうちょっとうまくやろっ」
 机に両手置いて、あたしもすっくと立ち上がる。
 なんせ、リーダーですから。
 かくして、地球を守るアイドル戦士[みるきぃクレヨン]の二度目の出動となったのであります。
 *
 しかし、[ふかんぜんへ、んたい]のエネルギーを感知していたのは、わたしたちだけではありませんでした。
 地球上空を飛ぶ、カントが一人乗った小型宇宙艇にも反応が伝わりました。
 ん? と、どこやらを操作するカント。
 するとモニターに、ロボット・カメラ蜂からの不鮮明な映像が映し出されました。
 要するに、体育館でアーマー・スタイルに変態しちゃったヂャアと五人の銀髪男の姿にびっくらこいている50人ばかりのGGC部員という絵ね。
 それを見て、超美形のカントが顔をしかめます。
「なんとお粗末な・・・」
 その直後、小型宇宙艇はきゅい~んと旋回を始めたのだとか。
 *
 さて、体育館のほうはというと、もう大混乱。
「きゃ~~っ」
 目の前で、アニメかCGみたいにアーマーに変態しちゃったんだから、そらびっくりしますよね。
 六人のアーマー姿スケベ親父から、誰もが後ずさりしております。
「ルゲーニ、ルゲーニ」
 このスキに脱出しようとヂャアが走り出し、五人の銀髪男がそれに従います。
 しかし、このヂャアってゆう宇宙人、かなりパニくっていたようです。
 走り出したものの、どっち行っていいのか、根本的なことが分かってなかった。
 しょうがないんで、出口求めて蛇行しながら走ってます。あとに続く銀髪男どもも、あっちにすたすた、こっちにとたとた。
 そのたびに、数十人のGGCメンバーも「わ~っ」「きゃ~っ」とちりぢりに逃げ回る。
 もうなんだかぐちゃぐちゃの状態。
 で、悪いときには悪いことがつづくもの。
 体育館の片隅に、内装工事用の大きな脚立が、今日はお休みだからブルーシート賭けた状態で立ってたんです。その他の工事材料や用具といっしょに。
 目立ちますよ。なにしろ二階相当の高さで作業するための脚立ですから。
 けど、逃げ道を探すヂャアは前見ないで走ってた。
 ガッシャ~ン・・・!
 肩から激突してしまったのです。それもアーマー状態だから破壊力すごい。
 脚立は折れて倒れてくるし、工事材料やらなにやらは吹き飛ぶしで、誰もが「キャ~ッ」。
 体育館内もうパニック状態。
 もっともヂャアも、
「うぐじゃ、けれこれ」
 ブルーシートにからまちゃってたんですケド。
「ぷはっ」
 銀髪男に助けられ、顔を上げたヂャアが最初に見たのが、準備室に逃げこむ中学生三人組の姿でした。
 ドア開けて、ここから消えた。
 出口だ。
 そう思ったヂャアは、
「ルゲーニ、ルゲーニ」
 叫びながら、そっちに向かって突進した。
 しかし、ヂャアって宇宙人、アーマーのパワーをきちんと理解してなかったか、初体験だった。
 だだっと踏みこんだ二歩目で、ガツッと体育館の床を踏み抜いちゃった。
 おかげでおっとっとっと。体勢もバランスも崩したまんま、真っ正面から準備室のドアにガッシャ~ン。
 みごと扉を破壊し、準備室の中にずっで~んと倒れこんだのであります。
「キャ~~ッ」
 三人の中学生が悲鳴を上げ、うち一人は、スネのあたりにヂャアの肩がぶつかって、転倒しています。
 どうしていいのか分からないまま、銀髪男どももどどどどどっ。準備室になだれこんでくる。
 慌てて、さすがリーダーのアザミと、サブのユリエが走ってくる。
 顧問の先生とコーチにはもう連絡したけど、到着するまではアザミが責任者。
 準備室をのぞき見するくらいのとこで止まって、
「その子たちをどうするつもり」
 人質に取られると思って、思わず叫んだ。
 それ聞いた銀髪男の一人が、反射的に中学生女子の腕をつかみ、それを見た別の銀髪男が別の子の腕をつかむ。
 え? え? え?
 事態が飲みこめてないのは、むしろヂャアそのヒト。
「ドーナッテルンダー!」
 決め技のコールじゃないっつうの。
「チ、チッヂンジ、ルートンド」
 銀髪男が返します。
「ジーマヨか」
「それしかないかと」
 って、そこだけ地球語。
 やれやれしょうがないと立ち上がるヂャア。
「シュバリアンを出せっ」
 アザミとユリエに向かって叫んだ。
 え? え?
 びっくりしたのは、実は銀の銀髪男。
 え? 人質とって、宇宙艇に戻るんじゃないんですかぁ? それだって、いい手じゃないケド。
 しかしヂャア、
「踊りのうまい、五色の五人組だ」
 すっかり人質取って要求してるヒト気分。
 え? こちらアザミとユリエが顔を見合わせる。
 踊りのうまい五色の五人組って、誰?
 銀髪男どもはじりじり。だって、五色の五人組出てきたら、負けちゃうのに。
 しかしヂャアは、策があるんだかないんだか、五色の五人組に執着しちゃっていたのでした。
 *
 さて、その頃、地球を守る五色の五人組は、
「ハイエースで移動っすか」
 下川先生が中古で手に入れた三列シートのワゴン車で第二校舎に向かっていました。
「文句言わない」
 と、運転に自信なさげな下川先生。
「ハカセとの回線、開けておきましょうか」
「あ、ああ、そうだね」
 言われて助手席のコブシが指先でぴゅっ。
「それっ」
 と、第二校舎へと左折したハイエースでありました。
 *
 さて、体育館の準備室の、なりゆきで中学生女子部員三人を人質にしちゃったヂャアと銀髪男ども。
「ぽり~、すとかそ、ういうことつう、ほうるとこの、子らのぶじはほ、しょうない」
 興奮すると自動翻訳機の調子までおかしくなるらしい。
「シュバリアンを、踊る五色の五人組を出せっ」
 けど、出てきたら勝てないと銀髪男どもは戦々恐々。
 ヂャアさま、どうなさるおつもり?

[その3につづく]
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by planetebleue | 2016-07-19 16:12 | かたゆでエンジェル

#2「天使のオウヨウ」その1

◇[かたゆでエンジェル]第2話
   「天使のオウヨウ」


 0

「あのヒトなんかどうでしょう」
「ターゲット物色するなんて十年早いわ」
「ですか?」
「ありゃ泥沼にはまるタイプだぞ。対処できんのかよ」
「はぁ」
「昔、マリリン・モンロー狙い撃ちにして泥沼にはまった見習いがいたっけ」
「それで、どうなったんですか?」
「食堂で盛りつけやってるよ」
「え?」
「任官になれずに見習い期間終わっちゃったから、がっこに傭ってもらったのさ」
「ひぇぇぇ~っ」


 1

 チャッチャッ、チャチャチャッチャチャッ。
 はぁ~い、ちゃみだよ~ん。
 え? なにやってんだ、って?
 オープニングですよ、オープニング。
 アヴァンのあとは、オープニング、タイトル・コールとつづくのは定石ではありませぬか。
 ん? ラヂオじゃないから、いらない。
 いらないんだ、オープニング。
 ふぅ~ん。
 で?
 あ、自己紹介からやりゃいいのね。
 はいっ、わたくし、このおハナシの[ぢの文]を務めております、ちゃみでございます。
 第二話、ということでございますね。
 まだお馴染みも薄いということで、先ずは登場人物の紹介から始めましょうか。
 え~、このおハナシの主人公は、二人の天使実習生でございます。
 ん? テンシもなんにんってかんじょするのか?
 ま、い~か。なんせ、見た目、JKみたいな二人でございますから。
 一人がミキで、も一人がマキともうします。
 濃いめメイクに黒のゴスロリ風コスなのが、ど新人のミキ。白のドレスにメイクも薄めの一見清純派が、ちょとベテランで曰くありげな実習生のマキでございます。
 え? どこがJK風か、って?
 あのね、雲の上にいるときは、ロリっぽいドレスに、背中には羽根もある天使スタイルなのですが、地上に降りると紺ブレザーに羽根を隠し、JK風のプリーツ・ミニに白のブラウスの胸元にはリボンというスタイルに変身するのでございます。
 冒頭で会話してたのがその二人なんだけど、さ~て、ど~こにいるのかなぁ~。
 あ、いましたいました。今日もコンビニで買ったチョコバー食べるという校則違反犯しながら、雲の上でターゲットを探しております。
 あ、つまり、天使の矢を放つ相手ね。
 天使実習生は、天使の矢を放ち、恋に落ちたニンゲンをシアワセにすることで成績を上げるのが目標なのであります。
 でもって、雲の上から人間観察ができるんだぜ。
 どお? あんまし羨ましくもないか。
 さて、
「すいません、今度こそ初期実習修了させて、独り立ちしますから」
 新人ミキが、ベテラン・マキに謝ってます。
 前回の初実習でいい成績が上げられなかったミキは、相変わらずチューターのマキとの二人組行動なのであります。
「慌てることはないさ」
 こちら、のんびり構えたマキ。白いドレスの一見清純派風でございます。
「ずっと一人もさみしいし」
「あら、マキさんったら寂しがりやさん?」
 上目遣いにもてかわっぽく言うのが、濃いめメイクに黒のゴスロリ風のミキでございます。
 ま、作者のミスマッチ狙いがすけすけではございますが、そこんとこ、お間違いなく。
「い~から矢を放てっ」
「はいっ」
 このへんは新人とチューター。
「あの・・・」
「ん?」
「さっきのハナシですけど、任官できずに見習い期間終わると、食堂の盛りつけなんですか?」
「任官したってクビになるヤツはいるぜ」
「えっ、そうなんですか?」
「調査員なんて、任官クビになったお天使ばっかさ」
「そぉ~なんですか」
「中には掃除のおばさんになったのもいるよ」
「天使が、掃除のおばさんっ」
「泥沼、始末できずにクビになってりゃ世話ぁない」
「そぉ~なのかぁ~」
「だからさ、なんでもテキトーが一番」
「はぁ」
「若い子にしときな。恋に恋するくらいの年が無難ってもんさ。どうせ年がら年中くっついたり離れたりしてるんだから」
「はぁ」
「いっときでも付き合ってくれりゃこっちのもん。そやってマメに成績稼いで、さっさと独り立ちしな」
「そういうもんですか」
「そ~ゆ~もん」
 ってゆうか、天使実習生がそんな調子だから、若い者は年がら年中誰かに恋したり、くっついたり離れたりしてるんじゃないの?
 ニワトリとタマゴだな、こりゃ。
「けどマキさん、さっき慌てることないって。ずっと一人はさみしいって」
「そ・・れわぁ」
「どっちなんですか」
「い~から矢を放てっ」
 はいっ、振り出しに戻る。
「分かりました。テキトーでい~んですよね、テキトーで」
「なんか反抗的だな」
「わたし、テキトーやめない」
「は?」
「わたしにテキトーってなにか分かるまで」
「それ、なんか歌の文句にあったような・・・」
「テキト~ッ」
 ミキさん、ひゅい~んと天使の矢を放ちます。
 矢は弧を描いて飛び、ぶすっと誰かの背中に刺さったようであります。


 2

「前へっ」
 すっくと立ち上がった制服の女子高生がこぶしを握りしめております。
 あ、この女子が、今回、ミキさんの放った矢が刺さっちゃった子なのね。
 え~と、名前が北山瑠里花って、まぁ~たDQ系ネームかい。
 細身の体にショートヘアで、おや、なかなかきりりとした男前の顔立ちではありませぬか。前回の丸顔よりマシだな、こりゃ。
 でもって、場所は教室、時は放課後。これから部活のために部室に向かうところであります。
 で、なんで「前へ」かっつうと、この子、ラグビー部のマネージャーなんですとさ。
 だから、「前へ」か。
 つまり、ラグビーっつうのは、あの楕円形のボールを持ったら、目に進むしかない競技なのであります。
 サッカーみたいに、「一旦ボールを戻します」みたいなことができない。
 ボールをキープしたら、ひたすら前に出るしかないのであります。
 あと、あれだよね、かの大学ラグビーの名門・明大ラグビー部のポリシーっつうか、標語っつうか、そういうあれも「前へ」だったよね。
 思うに、ここにラグビーの精神と申しましょうか・・・え? そんなハナシはどうでもいいから先へ進め、って?
 あ、そうっすか。
 んじゃ、前へっ。
 要するに気合い入れたわけでしょ、瑠里花ちゃんは。
 それも、今日も部活がんばるぞとか、絶対帰りがけのコンビニ・スイーツ我慢するぞとか、そんなんじゃないよね。
 なんせ、ミキさんの天使の矢が背中にぶすっ、でございますから。
 さて、部室の前までやってきた瑠里花ちゃん、すぅ~っと深呼吸一回。でもって、にっと笑顔を作ると、「う~~っす」、明るい声とともに部室のドアを開けます。
 あ、これがいわゆるルーティンなのね。
 さすがラグビー部。
 ほいでもって部員たち、っつうことはほとんど男子どもと軽く言葉を交わしながらグランドへ。お時間まで、ジャージ姿で練習の手伝いに励むわけでございます。
 けど、視線はときおりちらっちらっ。
 一人の男子部員のほうをちらっちらっ。
 視線の先にはすらりとした体つきに乱れた髪、涼しげな目元のイケメンときた。
 それもどこかワイルドで、男らしさを漂わせているとくれば、もうだいたい分かったわな。
 そっ、この男子部員こそ、もともと瑠里花ちゃんのお目当てだったのでございます。
 同じ学年で隣のクラス。名前が、浦島幸太。名は体を・・ちょとあらわしてません。
 データとして肝心なのはこっからね。
 幸太、二年生にしてレギュラー・ポジションをゲットいたしました。
 それもスタンド・オフ。ラグビーにおけるエース・ポジションですわな。
 当然のことながら、女子からの人気は高い。
 あと、野球部のエースじゃなくって、イケメンのキャッチャーのほう? それと水泳部のあいつ? あ、軽音のギターのあいつと、ヴォーカルのあれか。おっと、去年の副委員長だったあいつ?
 ともかく、学年の人気を、えっと、ひぃふうみぃ・・・六分するくらいの人気者。
 この、人気者の幸太を射止めようと、瑠璃子はラグビー部に潜伏すること早四ヶ月。どうやら互いに下の名前で呼び合うくらいのところまできていたのであります。
 ってことは、あれか、ミキの天使の矢は、単に瑠里花の背中を押しただけってことか。
 あとは告るだけ?
 なんかできすぎじゃね?
 雲の上ではミキさん、もうにこにこ顔でグランドのようすを眺めております。
 そう。矢が刺さったジンルイの恋が成就すると、実習生の成績となるのであります。
「カレシのほうも悪しからず思ってるみたいですから、きっとうまくいきますよね」
「四ヶ月もなにやってたんだ」
「え~っと・・・」
 手元の学校支給品のタブレット端末を目で追うミキさん。ここに、さまざまなデータが送られてくるのでございます。
 でもって、そのデータの作成に携わっているのが、天使クビになった調査員なんだな、多分。
「あ、ラグビーに恋したフリをしていたのだそうです」
「なんだ?」
「カレシともラグビーのハナシばかりをし、常にチームのためを考えて行動していたのだとか」
「気の長ぇヤツだな」
「懸命にきっかけを作っていたのです」
「ごめん。キミのことを女子としては考えられない。これからもマネージャーとしてチームに尽くしてくれ」
「な、なにを言い出すんですか、マキさん」
「よくあるハナシだぜ」
「い~です。その時はその時で、なにかうまい囁きを考えますから」
「お前って、キホン、マジメなのな」
「いけませんか?」
「それも典型的なお返事だよな、おマジメ族の」
「それじゃいけないんですか?」
「い~え~、よろしいんじゃございませんか」
「なんか感じ悪い」
「おい」
「はいっ?」
「先に帰ったカレシ、追いかけてるぜ」
「あ」
 てなわけで、おハナシは下界へと転換いたします。
 日はもう落ちて、街灯のともった通学路でございます。
 片側は、なんか苔の生えた古そうな石垣で、その上に学校が建っております。
 反対側も段差があって、建ってる家の二階から上しか見えておりません。
 そんな坂道。
「待ってぇ」
 校門を出た幸太くんに、小走りで追いつく瑠里花ちゃん。
「いっしょに帰ろうよ」
「おう」
 二人して、てれんこてれんこ、駅への道をたどります。
 この日は、瑠里花ちゃんにとっては千載一遇のチャンスなのです。
 それというのも、いっつも幸太といっしょに帰る三人組の一人が風邪で休み。あと二人が怪我とリハビリで接骨院に向かったのであります。
 さすがラグビー部だわな。怪我人の多いこと。
 マネージャーである瑠里花ちゃんがそこんとこ知らないはずもなく、でもって、外すわけにはいかないのも当然のこと。
 片づけぐずぐずしながらタイミングを計り、みんごと、駅まで二人でてれんこなのであります。
 いっすよね、てれんこ。てれんこがもっとも似合うのは、なんつっても中高生時代の下校時でございます。
 いかに時間があり余っていたことか。
 年取るとね、だんだん先を急ぐようになるものなのであります。
 いえ、ちゃみはそんなに先急いでませんよ。作者のほうはかなり先急ぎ始めたみたいっすけど。
 あだっ。
 余計なコト言うなとおこらりました。
 はいはい、瑠璃子と幸太ね。
 たま~に、
「おつかれぇ」
「あ、おつかれぇ」
 先急ぐヤツに追い越されたりなんかしながら、てれんこてれんこ。
「また明日ね」
「おう」
 女子がチャリで追い越してったりする。
 この女子も幸太ファンだったりするんですが、いっしょにいるのはただのマネージャーと思ってるから、そんなにイシキもしない。
 瑠里花、しめしめで、やっぱりてれんこてれんこ。
「あ~、じれってぇ」
 って、マキさん、せっかち。
 ほら。
「ねぇ」
「ん?」
「幸太くんさ、カノジョとかいないの?」
 って、これだけ言うのだって、瑠里花的にはけっこ勇気いったんだから。
 もちろん、天使の矢効果もあったわけなんですが。
「いねぇよ、知ってんじゃん」
「がっこにはね。でも、近所の子とか」
「いねえって」
「ふぅ~ん、もっちゃいないじゃん」
「あ?」
「かっきょいいにょに▽※◇☆・・・」
 決めフレーズのつもりだったんですよ。噛んじゃったし、後半、なに言ってんだか分かんなかったけど。
 日が落ちててよかったよね、瑠里花ちゃん、真っ赤だぜ。
 けど、
「じゃ、お前さ・・・」
 いつもはルリカッと呼び捨てなのに、お前、ときた。
「俺のかんジョにな☆※▽・・・」
 あ~あ、こっちも噛んでんでやんの。それも、そこそこイケメンが赤くなっちゃって。
 なんなんだ、こいつら。
 にしても、なんとまぁ、天使の矢が刺さった恋する乙女が、本命に告られた、ですと?
 なぁ~んかつまんね。
「いいの、あちしで」
 また噛みぎみ。
「ああ」
 ほとんど息だけ。
 そいでも、瑠里花ちゃん、にっこりと微笑んだのは申すまでもございません。
 でもって、見つめ合う瞳と瞳。
 勝手にやってろっ、みたいなもんでありますが、
「あ・・・」
 幸太なにやら思い出したようであります。
 どした?
「俺、今度の期末、赤点なしで突破するまで、女の子と付き合うとかダメって、ママに言われてたんだ」
 さっきよかもっとあかぁ~い顔して、なに言ってんだ、こいつ。
「マジ?」
「ああ。だから、それまでは・・・」
「分かった。でも、じゃ、試験終わったら・・・」
「俺、頑張るよ」
 だってさ。
 なぁ~んか、妙な展開になってまいりました。

[その2につづく]
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by planetebleue | 2016-07-19 16:01 | かたゆでエンジェル

#2「天使のオウヨウ」その2

 3

 てなわけで、雲の上も大わらわであります。
「期末試験までどんだけある?」
「え~と、あとひと月とちょっとです」
「ひと月ちょっとねぇ」
「勉強ガンバレって囁きますか?」
「んなもん囁かなくったってガンバルだろうさ。けど、そいで間に合うのか?」
「さぁ」
「さぁって、調べてみろよ」
「あ、はい」
 ミキさん、タブレットで調べてます。
「はぁ~~・・・」
「ため息もんか」
「ですねぇ」
 調査結果によると、こいつ、一学期の中間・期末、二学期の中間と、数学・英語・物理で赤点つづき。このままじゃ進級も危ないと、担任に呼び出されたママが警告受けちゃったとか。
 そら、カノジョといちゃいちゃしてるばやいじゃないわな。
「どうしましょ」
「どうするったって」
「もっと勉強ガンバレって囁くとか?」
「効く? それ効くと思う?」
「んな言い方しなくったって」
「そもそもだ、そこ、天使の責任なのか?」
「さぁ」
「ちょっと調べてみ」
「はい」
 マキさんに言われたミキちゃま、タブレット端末でマニュアル=天使規則をチェックしております。
「あ、ここかな・・・当該ジンルイに障害があった場合、天使は障害の除去または克服に尽力すべし、だそうです」
「くわっ、バカ男のべんきょの面倒までみんのかよ」
「でもぉ、マニュアルに書いてあるしぃ」
「急にキャラ変えんなよ」
「てへぺろっ」
「マジメにやらんかいっ」
「さっきはおマジメ族とか言ったくせに」
「そぉ~だけどぉ~」
「マキさん、なにもアイディア出してくれないじゃないですか」
「お、そう来るか」
「どうするんですか。先輩らしいとこ見せてくださいよ」
「ヒト責めてどうすんだよ」
「だってぇ・・・」
「いいか」
「はい」
「囁きってのは一回こっきり。ここぞって時にしか使えない」
「はい」
「だからな・・・」
「どうします?」
「とりあえず、ようすを見る」
「へ?」
 マキさん、すました顔してるばやいじゃないぞ。
 けどまぁ、この難問、ベテランのひねくれ見習い天使にもいいアイディアはなかったようでございます。
 じゃ、ようす見ましょ、ようす。
 だがしかし、瑠里花ちゃん、なかなかしっかり者だったようでございます。
 部活が終わったあと、私立図書館ときどき駅前マクドで、勉強会を開催したのであります。
 ラッキーだったのは、ラグビー部がもう県大会で敗退したあとだったってことかな。
 そいでもベスト8までいったのは、このがっこのラグビー部としては過去最高の成績だったとか。
 もちろん、全試合、幸太がスタンド・オフとして活躍したのは言うまでもありません。
 だがしかし、それで進級が保証されるほどの、がっこの英雄にはなれなかったようです。
 残念でした。あははのは。
 あ、失礼、笑ってるばやいじゃございませんでした。
 ま、ともかく、新チームが始動したばかりの、キホン練習や個人練習が多いこの時期でございます。
 ここは勉強に集中するっきゃない。
 監督さんもそこんとこ分かってるから、瑠里花に預けちゃった。
 瑠里花的にはラッキーってなもんですが、そうはいっても進級できなきゃおハナシにならない。
 そこで、部活が終わると二人きりの勉強会でございます。
 ってさ、まいんちがっこの帰りに、二人っきりで市立図書館ときどき駅前マクドって、それもう付き合ってるようなもんじゃない。
 違う?
 そうじゃない?
 あ、気持ちの問題だってゆうわけね。
 デューティがないまま、図書館やマクドでだらだら過ごすなら、付き合ってると言えなくもない。
 しかし、この節の瑠里花と幸太のばあい、雑談も封印して勉強に励んでた。
 必死だな、瑠里花も。
 しかし、そんな瑠里花も、そう成績抜群ってわけじゃない。
 英語と数学は、幸いにして平均点以上は稼げるヒトなのだが、物理はやっぱり苦手。
 しかも幸太くん、キホンの英・数のデキがひどい。そっちの底上げを優先せざるを得ないもんだから、どしたってブツリが後回しになるのであります。
 二週目くらいまでは優しかった瑠里花も、三週目あたりから苛々を感じるようになり、四週目ともなると焦りの色が濃くなってゆくのでありました。


 4

「どうしよ、物理」
「ちんぷんかんぷんだよ、俺」
「う~ん。物理得意な子に山かけてもらおうか」
「それでもなぁ・・・」
 グランドでは颯爽としている幸太くんの情けない顔ったら。
 けど、私にか見せない顔。そこがまたい~んだな、だと、瑠里花。
 調子こいてんじゃねぇぞ、ったく。
 と、い~たいのわ、雲の上のミキとマキでございます。
「マキさん、あと三日しかございません」
「で、成績は?」
「ブツリが・・・」
「危ないのか」
「赤点クリア程度がどうしてできないんでしょ、あの男子は」
「ヤバイじゃん」
「はい」
「どうすんべ」
「しっかり勉強と囁く・・のはムダですよね」
「もはやな」
「どうしたらいいんですか、マキさん」
「こうなりゃ、とっときの手だな」
「え?」
「いいか」
 こしょこしょこしょっと、マキさんなにやらミキさんに耳打ちします。
「ええ~~っ!」
 目をまん丸にして驚くミキさん。
「そんな、そんなこと、い~んですか?」
「じゃほかに手があるのかよ」
「そういうときのマキさんの言い方って、挑発的ですよね」
「ほかに手があるのだろうか、いやあるわけがない」
「反語の用法」
「お、古文はいけそうだな」
「問題はブツリです」
「だから、さっ」
「けど・・・」
「あの二人がうまくいきゃ、初期研修修了だぜ」
「マキさんって、悪魔みたいですよね」
 ふふっ。
 見習い天使とは思えぬ笑みを、唇の端に浮かべるマキでございました。
 *
 てなわけで、ミキは一人、瑠里花を追いかけて、囁きの準備でございます。
 あ、囁きと申しますのは、天使が、矢が刺さった対象のココロに落とすコトバのことでございます。
 ま、背中を押すと申しましょうか。ためらいがちなニンゲンに思い切りをつけさせる言葉でございます。
 なんせ、矢が刺さったニンゲンの恋が成就しないと、見習い天使の成績とならないのであります。
「ふぅ~~」
 と、これ瑠里花ちゃんのため息ね。
 でもって、お風呂に入った瑠里花ちゃんを、お外の電信柱の上あたりから観察しているのがミキでございます。
 いえ、お風呂場の窓はちゃ~んと閉まってますよ。でも、天使には見えちゃうんですね。そこは、天使ですから。
 なので、ジンルイが天使の真似をしても、よそんちのバスルームは覗けません。念のため。
 でもって、こちらも、
「ふぅ~っ」
 と、ため息ひとつのミキ。
 なんせ、天使実習生の規則により、囁きは一回こっきりしかできません。
 そのワンチャンスを生かすのが、このコトバなのかい。
 けど、[ほかに手があるだろうか、いやあるわけがない]なのでございます。
「しょうがない」
 ミキちゃま、マキさんに言われたとおりのコトバを、瑠里花のココロに囁きます。
 あ、実際にはタブレットに囁くんですけどね。それが専用アプリによって、対象ジンルイのココロに落ちるのであります。
 い~かげんな設定ですけどね。
 その一言を、二度、三度。
 すると、すっと顔を上げる瑠里花ちゃん。
「それしかないか」
 と、ぽつり。
 どうやら、囁きの効果があったようでございます。
 けど、瑠里花もミキちゃまもイマイチ浮かない顔。
 なんでだ?
 そしていよいよ、期末試験が始まったのでございます。
 *
 三日間続く期末試験の、初日に数学、二日目に英語と、どうやら40点前後はいけた幸太くん。
 最終日、問題の物理の試験を迎えます。
「あ~も~脳みそぱんぱん。ダメッ、ムリッ」
 ラグビー部のエースが青白い顔で唸ってます。よっぽど自信ないんだな、こりゃ。
 でもって顔が青白いのは、寝不足なんでしょうね、きっと。
 夜明けまで頑張ったんだ。
 けどさ、そこまでやっても自信ないんだったら、ちゃんと寝たほうがよかったんじゃねぇの?
 ただでさえできないのに、寝不足じゃ、そのわずかな実力すら・・・。
 そんなこたい~から、先に進め?
 はいはい。
「どうしよう」
 泣きそうな顔の幸太くんに、なにやら覚悟を決めた雰囲気のマジ顔を向ける瑠里花ちゃん。
「これ、してって」
 ちょと大きめのプラ製安腕時計を差し出します。
「時計なんかいいよ、教室にあるし」
「違うの」
 腕時計の裏側を示す瑠里花ちゃん。そこに、ちっちゃい紙がはっつけてあって、ちっこい文字がぎっしり並んでます。
「出そうなワードと公式」
「え?」
 幸太くん、びっくりお目々を瑠里花ちゃんに向けております。
 けど瑠里花ちゃん、真剣そものも。
「あと、前の席、高橋だよね」
「ああ」
「試験終わり五分前に、一回だけ体、横に動かすように頼んどいたから」
「なんで・・・」
「念のためだよ、念のため」
 幸太くんの言葉を遮る瑠里花ちゃん。
「幸太くんの努力はちゃんと分かってるよ。でも・・・」
 言葉に詰まる瑠里花ちゃんなんだけど、幸太くんのほうも黙って腕時計の裏側を見ております。
「実力プラス二問か三問でいけると思うんだ。だから・・・」
 じっと幸太くんを見つめる瑠里花ちゃん。
 そりゃ、ねえ。天使の矢まで喰らった本命と付き合えるかどうかがかかってるわけですからして。
 ハートはもうどっきどき。
 次の瞬間、幸太くんの顔が怒りのそれに変わり、「そんな卑怯なことができるかっ」と腕時計投げつけられるんじゃないか。
 そっちの心配もあるからどっきどき。
 すると幸太くんが、
「なんで高橋に・・?」
 って、おい、そっちかい。
 ま、気になるのは分からないじゃないけど。
「保育園からいっしょなんだ」
「へ?」
「だから、恥エピ、絶対言わないって約束して、あと、これであたしの弱味、いっこ握ったんだからって」
「あ~~」
 ほぼ意味ないただの声。
「時間だよ、しっかりね」
 ちっちゃくガッツポーズ見せて、くるりと背中を向ける瑠里花に、
「ルリカッ」
 声をかける幸太くん。
 ん? と振り向く瑠里花。
 まさか、「余計なことすんんじゃねえっ」とか?
 ハッと息を吸う幸太に、瑠里花ちゃんどっきどき。
 すると、
「サンキュ」
 だって。
 けっ。

[その3につづく]
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by planetebleue | 2016-07-19 16:00 | かたゆでエンジェル

#2「天使のオウヨウ」その3

 5

 これを見て、にやりとほくそ笑むのは雲の上のマキさまでございます。
「うまくいったじゃねぇか」
「はぁ」
 と、気のない返事のミキちゃま。
「い~んでしょうか、本当に」
「瑠里花、よく考えたじゃないか。きっとうまくいくよ」
「不正行為は不正行為です」
「お前って、ホント、ヘンなとこマジメな」
「それをいけないコトと思ったことは、かつてありません」
「幸太にとっちゃ、人生の冒険ってヤツさ」
「確かに、冒険ではありますけど」
 へ?
 大げさに言ってみただけだったのにね、マキさま。
「ともかく、見てみようよ」
 と、教室に向かう幸太を眺め下ろした、その時のことでございました。
「がははははっ」
 どこやらで聞いた下品な笑い声が上空から聞こえてまいります。
 いや~な予感で上空を見上げるマキとミキ。
 するとなにやら煙のようなちっちゃこい黒い雲が浮かび、そこからぬっと顔を出したのは、あ~らま、ちょ~かわゆいお顔。
「小悪魔の手伝いとはご苦労さまだね」
 そう、小悪魔のカオリンでございます。
 こちら、天使実習生のジャマをするのが実習の見習い悪魔。見習い天使の矢が刺さった恋を破綻させると成績アップという、天使実習生とは真逆のお立場でございます。
「小悪魔の手伝い?」
「どういうことですか?」
 不審そうなミキとマキの前に、すぅっと近づいてくる黒い雲。
「あたしが先に、カンニングしたらと囁いておいたのさ」
「ええ~っ」
「ええ~っ」
 あ、ふたつあるのは、ひとつがマキ、もひとつがミキでございますね。
「天使にまで囁かれりゃ、そりゃその気になるわな」
 いっひっひっと笑う顔さえかわゆいんだな、この小悪魔。
 マキさんとミキさん、そりゃげげ~~っでございますわな。
「かなりカツフジしてたけどね」
「カツフジ?」
「そっ、カツフジしてた」
「なんだそりゃ?」
「お前ってコトバ知らねぇな。ほら、こっちにしようか、あっちにしようか、ココロがせめぎ合う状態」
「それを言うならカットウじゃっ」
「へ?」
「お前こそ、漢字読めねぇくせに」
「葛藤。カツフジ。ま、読めないこともないかと・・・」
 と、ミキちゃま。
「とんかつ屋の屋号じゃねぇや」
「そ、それでもなんでも、迷ってるヤツの背中を、見習い天使が押してくれたんだ。まぁ~ったくご苦労さまっ」
 自分が追い詰められたら、相手の痛いところを突く。さすが小悪魔。
 けどミキさん、冷静に反論いたします。
「でも、成功すれば、こちらの成績です」
「そうそう。赤点さえクリアすりゃこっちのもんだぜ」
 ふんっと鼻で笑うカオリン。
「あやつはマジメなラガーメン。カンニングなんぞしようとすれば、挙動不審でたちまち発覚するのがオチさ」
 え? と教室の中を覗きこむマキさまとミキちゃま。
 するとなるほど、幸太ったら腕時計いじくったり、外して置いて、また動かしたり。さらには上半身のばして、前の高橋くんの机の上を覗きこんだり。
 明らかに挙動不審なのであります。
「カンニングで摘発されるんだ。赤点取るよりもっとひどい結果になるぜ」
 あっりゃ~っ。さすがのマキさままでなにも言い返せません。
 そもそも不正行為なんか囁くからこういうことになるんだ。後悔のミキ、それでも一言、
「うまくいくかもしれないもん」
 けど、声小さい。
「いかないっ」
 カオリン、声大きい。
「全てを失って一からやり直してもらおうじゃないか。ふぇっふぇっふぇっ。これぞ小悪魔のい~仕事」
 ごきげんなカオリンを、マキさまがむっと見返します。
「けど、あの子にとってはそれもひとつの経験。人生のプラスになるかもよ。そしたらそれもシアワセというものじゃないか?」
「ふんっ、見習い天使がよう屁理屈こくぜ」
 確かに。いくらなんでも屁理屈でございますよ、マキさま。
「ちぇっ」
 舌打ちすると、マキさん、背中の羽根でぱたぱたと飛び上がります。
「ミキ、最後まで見といてな」
「マ、マキさんっ」
「コンビニでアイス食ってくら」
 ぱたぱたぱた。飛び去ってしまったではありませんか。
「マキさん、それ校則違反」
 つぶやくミキに、
「結果、賭けるか?」
 と、カオリン。
「は~あ」
 茫然と雲の上に座りこむミキちゃまでございました。
 *
「あら?」
 それから一時間ほどのちのことでございます。
「試験終わったみたいです」
「なぬ?」
 ぞろぞろと教室から出てくる中に、不安と達成感がいりまじったような顔をした幸太くんもちゃ~んといるではありませんか。
「カンニング、めっかんなかったんか?」
「さぁ」
「さぁって、お前、見てなかったのかよ」
 ま、そ~ゆ~カオリンも、勝ったも同然と、ポテチ食いながら動画サイト見てたんですけどね。
 でもってミキは、ただただぼぉ~っ。
「どぉ~なったんだよ」
 奇声を発したカオリンが、ん? となにかに気づきます。
「けどさ、点数がいってなけりゃこっちのもんだよな」
「カンニングうまくいったかもしれないもん」
 自信なさそうにぶつぶつぶつのミキ。
 と、二人して地上の幸太を目で追っております。
 さてその地上。
 下駄箱入り口の角のところに、瑠里花ちゃんが駆けつけます。
「どうだった?」
「うん」
 と、先について待ってた幸太くん。
「自信はない。けど全力は尽くした。俺はラガーマンだ。勝ち負けじゃない。後悔したくなかったんだ」
 ですと。
「幸太くん」
 瑠里花、胸きゅん。
 けど、この場面、おかしくねぇか?
 そもカンニングさせたのは瑠里花じゃん。でもって、そのおかげで赤点クリアしたって、どこが[俺はラガーマン]なんだよ。
 この卑怯者。
 けど、あれ?
 ちゃみもちゃんと見てたわけじゃないんだけど、幸太、腕時計の裏、見たっけ?
 確かにちょうど終了五分前、前の席の高橋くんが大きく体を傾けたときも、下向いて解答用紙になにか書きこんでたような・・・。
 *(時間経過)の間に、なにがあったんだ?
「ルリカの気持ちには感謝してる。ってゆうか、ルリカにそこまでさせた自分が情けなかったんだ。だから・・・」
「え?」
「自分の力で、勝負してきた」
 がちょ~ん。そゆこと。
 その瞬間、瑠里花ちゃんは、幸太のココロが男前っ、と思う反面、赤点やっちまったんじゃね? という不安が交錯したのであります。
 実力勝負で、赤点、クリアできたんだろか。
 もしもできなかったら、あたしは、そして幸太は・・・。
 複雑な思いが瑠里花の胸を締めつけ・・ってか、この場にいたってなんだけど、ちゃんと授業受けろよな、幸太。
 心配で心配でしょうがない瑠里花ちゃん、その場で早速答え合わせしてみることにいたします。
 それはい~んだけど、この幸太ってヤツが、回答欄になに書いたか、ろくに覚えてないんでやんの。
 なので答え合わせしてもあいまいなとこができちゃう。
 ねぇ瑠里花ちゃん、ホントにこの男でい~の? そりゃ見た目ちょっとイケてるし、グランドじゃもっとイケてるけどさ、にしても・・・。
「ここ、b選んだんだよね」
「あ、うん、確か、b」
「よっしゃいけるよ。届いた。多分、届いてると思う」
「マジ?」
「うん、頑張ったね、幸太くん」
「ああ」
 と、見つめ合う瞳と瞳・・って、なんかさぁ、想定してたのと結末ちがくね?
 どうなってんだ。
 雲の上じゃ、ミキちゃまはほっと胸をなで下ろし、カオリンは絶望でひっくり返ってましたとさ。


 6

 それから一週間後。返された答案を見てみると、幸太くん、きわどい科目もありましたが、なんと一教科も赤点を取らず、見事にクリアしたのであります。
 え? きわどい教科?
 んなもん、ブツリに決まってるでしょうが。
 そんなわけで、先ずはめでたしめでたし。瑠里花と幸太はすっかりカップル気分。
「クリスマス、どうする?」
「お前、決めろよ」
 とかなんとか。
 やっちゃいらんねぇわ。
「よかったです」
 と、こちらはミキ。
「わたしの成績も少しは上がったと思います。もしかしたら初期研修、終了させてもらえるかもしれません。ありがとうございました、マキさん」
「まだ気が早ぇよ」
「そうですか? でも、あのカップルなら、きっともっと親密になりますよ。そうすれば、わたしの成績も・・・」
 と、言ってるそばから、ぴ~ろぴ~ろぴろぴろぴ~っと鳴る着メロはど~ゆ~わけかMCZ。
「あ、せんせからメイルだ」
 と、タブレットの画面をしゅっ。
「あれ?」
「どうかしたか」
「マキさんといっしょに報告に来いって」
「あたしも?」
「ええ、なんででしょ」
「きっとなにか用があるんでしょうよ」
 って、マキさん、なにか身に覚えがありそうですぜ。
 *
 てなわけで、ミキとマキ、雲の上にありながら緑豊かな、カミサマ学園のキャンパスにやってまいります。
 手入れの行き届いた庭園に囲まれ、瀟洒な校舎が点々と並ぶ、まるで絵に描いたような美しい学園。
 すいませんねぇ、この描写。
 作者によりますと、なにしろカミサマ学園なので想像に頼ってもらったほうがいいのだとか。
 なので、想像に頼ってください。
 ま、それはともかく、とある瀟洒な校舎に向かうミキとマキの後ろ姿は、萌え系JKそのものなのであります。
 やがて廊下をすたすた。教官室のドアをとんとんとん。
「ミキです。マキさんもいっしょです」
「入りなさい」
 ドア開けて中に入れば、担当教官は衣装までもがきゃりーぱみゅぱみゅ似。
 え? まちっと描写しろ、って?
 はいみなさん、想像力を働かせましょう。
「ミキさん、結論から言いましょう。減点です」
「え?」
「まぁマキさんがそそのかしたんでしょうけれど、天使が不正行為を囁いてどうするんですか」
「やっぱり・・・」
「当然です」
「はい」
 思わず下を向いたミキさん、でもはっと顔を上げると、
「でも、結果はうまくいきました」
「その結果が、どうやって導かれたと思ってるの」
「え?」
「マキさん、分かってるわね」
「そ~ですねぇ~~」
 なにやら天井見てるマキさん。
 え? とその横顔を見るミキさん。
「天使の矢を受けて恋に落ちたジンルイの、その恋愛対象にプチ矢を放ち、囁きを送りましたね」
 ま~だ天井見てるマキ。
 いよいよ、えっ、えっのミキ。
「どうなの、マキさん」
「はい」
「天使の矢を受けたジンルイが恋する相手に、プチ矢を放ち囁きを送る。これ、裏技として校則違反なのはご存知よね」
「はい」
「それも、ミキさんの囁きを覆すようなことを」
「なんて囁いたんですか?」
 そりゃミキちゃま、気になりますわな。
「お前、ラガーマンだろ」
「それだけ?」
「それだけだよ」
「なんで?」
「だって、あの状況だぜ。カンニングめっかって、小悪魔の成績上げさせるくらいなら、させないほうがい~に決まってんじゃん」
「あなたは小悪魔の成績を下げようとしたの?」
「そうじゃなくって、ニンゲンにとってのよりよい方法をとろうと・・・」
「じゃ、最初の囁きをミキさんにそそのかしたのは?」
「それは、ミキに、成績、とらせようと・・・」
「安直ね」
 むすっと黙っちゃうマキさん。
「今回の結果は、あくまで結果論です。あなたがたの成績にはなりません」
「あたしは・・・」
 言いかけるマキ。
「なぁに?」
「ニンゲンの力を信じてみたかったんです。ニンゲンの力ってものを、試してみたかったんです」
「それがあなたのいけないところなのです」
 きゃりぱみゅ似の担当教官、きっぱりと言います。
「前にも言いましたよね。ニンゲンの力を多くの天使が過信したから、世界には不幸が蔓延しているのです」
「そうなんでしょうか」
「え?」
「ホントにそうなんでしょうか」
 マキさん、どこか必死に訴えております。
 ケド、教官は冷静でした。
「結果ではありません。ニンゲンを過信するのは、見習い天使にとっても小悪魔にとっても危険なことなのです。いいですね」
 マキさん、むすっと返事もしません。
「いいですねっ」
「ふぁい」
 不承不承答えてます。
「減点です」
「はい」
「ミキさん」
「はい?」
「もうしばらく、マキさんについてなさい」
「はい」
「マキさん、分かってるわね」
「は?」
「あなたのチューターとしての成績もあるんですよ」
「はい」
 どこか不満げに返事するマキさまです。
 なんかさ、教官といろいろあったような感じしません? 過去に。
 どぉ~こか曰くありげなベテラン見習い天使なのであります。
 そんなことも知らず、ミキはただ、マキの横顔を不思議そうに眺めておりましたとさ。


 7

「なぁ~にやった、マキッ」
 地上に戻ると、カオリンがもんのすごい形相でマキとミキを待ち受けておりました。
 もんのすごい形相っていっても、なんせめっちゃかわゆいカオリンのことでございます。そのお顔もまた、おほっ。
「知ってんだろ」
 うんざりと答えるマキさま。
「おかげであたいまで成績下がったじゃねぇ~か」
 吠えるカオリン。
「ちゃらっ」
「は?」
「こっちも成績下がったんだから、ちゃらっ」
「そ~ゆ~問題じゃないだろっ」
 凄むカオリンに、なぜか遠くを見るような目で答えるマキ。
「後悔してんのさ」
「当たり前だ、校則違反の裏技なんか・・・」
「じゃなくって」
「あん?」
 そこで、は~あと深いため息のマキ。
「お前、ニンゲンの力って、信じてる?」
「んなもん信じたら、裏切られるにきまってんだろうが」
「けど、裏切られてみたいと思わない? タマには」
「はぁ?」
「分かんないか。ま、こんだもっとうまくやろうぜ」
「あ~ん?」
 言われたカオリンがお目々をまん丸にしております。
「じゃな。ミキ、行くよ」
 カオリン残して、マキとミキ、背中の羽根でぱたぱたぱたっと飛び去ってゆきます。
 *
「すいません、マキさん」
「しょうがねぇよ」
「わたし、なんとしても成績を上げて・・・」
「慌てんなって」
「え?」
「もうしばらく、二人してこの人間界ってヤツ、こちょっとかきまわしてみようぜ」
「は?」
 ぱたぱたぱた。
 飛んで行く先輩マキ。
 見送るミキの目が、なにかを語ろうとしております。
 それ、天使としてどうなんですか?
 マキさんって、ど~ゆ~天使なんですか?

 知りたい?
 だったら、また次回ね。
 ちゃみでしたっ。

[つづく]
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by planetebleue | 2016-07-19 15:59 | かたゆでエンジェル

天使のキホン・1

◇[かたゆでエンジェル]第1話
   「天使のキホン」

 0

「初めてなので、どきどきします」
「教習は受けたんだろ」
「はい、もちろん」
「じゃ、その通りやりゃいいのさ」
「け、けど、どこを狙えば」
「適当」
「テキトー?」
「そっ、適当に、ぎゅ~ん、ぱっ」
「適当に、ぎゅ~ん、ぱっ・・・あ、飛んでっちゃいました。どんなヒトに当たるんでしょうね」
「どうせそこいらへんのろくでもないヤツさ」
「けど、なんかわくわくします」

 1

「あたし、なんであの人を好きになっちゃったんだろう」
 恋って、そういうものよ。
 ちょと低音使ってみましたが、実のことを言えば、天使が適当にぎゅ~ん、ぱっ、しちゃった矢が、刺さっただけなのであります。
 そっ。冒頭の訳わからん会話は、二人組の天使が矢を放つ場面だったのでございます。
 おっと、失礼いたしました。
 初めまして。わたくし、このおハナシの[ぢの文]を務めることになりました、ちゃみともうします。
 よろしくお願いいたしますです。
 しかし、なぜ[じの文]ではなく[ぢの文]なのでありましょうか。
 作者より確たる説明はございませんでした。
 ま、ともかく、情景ですとかなんですとか、そうゆうとこを説明して、物語を進行させるのが、[ぢの文]の役割なんだそうでございます。
 それにしても、なんで[ぢ]?
 え? なに? そ~ゆ~とここだわらずに、はよ先進めろ、って?
 わぁ~りやしたよ。んじゃ、始めましょっか。
 冒頭、のっけのとこで、「初めてなので」と言っていたのが、ミキという名前の天使実習生でございます。
 ん?
 てんしじっしゅ~せい?
 天使に、実習生がいるんですか。
 じきわかるから、そこは飛ばせ、って?
 あ、そうっすか。
 でもって、もう一人の「適当」と答えていたのが、同じく天使実習生で先輩に当たるマキでございます。
 一方ミキは、教習を終えて、いよいよ初めて天使実習に参加した、初々しく、かつ性格も控え目な実習生です。
 けどさ、見た目、どうよ。黒っぽいコスチュームに、メイクもばっちし決めちゃって、かなりいっちゃってますよ。
 それに反してマキはというと、白のコスチュームに、メイクもあっさり。いかにも清純派な雰囲気をしております。
 黒の濃いメイクが初々しい新人で、白の清純派が場馴れた先輩。
 はは~ん。いわゆるミスマッチ感狙ったな。
 あたっ。
 余計なコト言わずに先に進めと怒らりました。
 しゃあない。んじゃ、この章冒頭の台詞んとこに戻りましょうか。
「あたし、なんであの人を好きになっちゃったんだろう」
 と言っている、矢が刺さっちゃった気の毒な女の子、誰なんです?
「お名前が、藤野澤沙保里さんという、女子高校生です」
 ミキが、タブレット端末の情報を、マキに教えてます。
 へ~え、天使実習生って、タブレット端末持ってて、そっからいろんな情報ゲットするんだ。
 便利、っつうか、けっこ適当な設定だな、きっと。
 はい、また怒らりるから、先進みます。
 でもって、ミキとマキは、雲の上からJK・藤野澤沙保里ちゃんを観察しているさなかでございます。
 いられんですよ、雲の上に。
 なんせ、天使ですから。
「まぁ~た字画の多い名前だな。総画数何画だよ」
「え~と、いち、にぃ・・・」
「んなもん数えなくったっていい。続き」
「はいっ」
 お、けっこ先輩後輩の上下関係きびしいっすね、天使実習生。
 で?
「はい。藤野澤沙保里さんは、偏差値真ん中らへんの公立高校の2年生で、成績は中の上。弓道部に所属していて、腕前は中の下だそうです」
「まぁ~た、思いっきり平凡な女子だな」
「そんなこと言ってはいけません」
「あ?」
「ヒトは誰もが、一度きりしかない、自分だけの人生を生きているのです」
「教習読本の3ページ」
「はい。ですから、平凡だなんて、ほかのヒトといっしょくたにするような言い方をしてはいけませぬ」
「思いっきり初々しいな、お前」
「いけませんか」
「いけなかないけど」
「そ~ゆ~マキさんはどうなのですか」
「そのうち分かるよ」
「は?」
「だから、そのうち分かるよ」
 この「そのうち分かる」とゆうのわ、マキの性格のことでもあり、また、多くのニンゲンが、自分が平凡だということに気づいていないジジツのことでもあるのです。
 きっと、そうです。
「あ、でも、新人の矢は、平凡なニンゲンに当たりやすいと、誰か言っていたようなぁ」
 ちょっとミキちゃん、かわいっぽく唇に指なんか当てちゃって。
 こいつだいじょぶかと思ったのわ、マキだけではないと思った[ぢの文]のちゃみでございました。
 でもって、初々しい方が黒の濃いメイクで、くぁっとなってるほうが、白の清純派ね。
「で、相手は?」
「あ、沙保里さんが自らお話しなさっているようです」
 と、ミキとマキが、地上の出来事に耳を澄ましているようですので、場面も、下界へと転換いたします。

 2

「ほら、駅の反対側に、新しくできたコンビニあるじゃん」
 と、一緒に歩くお友だちに話しているのが、藤野澤沙保里という平凡なわりに字画の多いJKです。
「あ~、知ってる知ってる」
 答えているのは、丸顔で、いわゆるぽっちゃりタイプの、これまた全国高校のどこにも数人はいるであろう、ごく目立たないJKであります。
 けどね、名前だけは、佐藤雲母。雲母と書いて[きらら]と読む、DQ系ネームの持ち主なんでございます。
 いちお~沙保里の親友ということになっておりますが、どっちがどっちを親友と思っているかについては、ちゃみ、存じません。
 時は下校時。校門をいっしょに出て、みんなが使う近道ではなく、わざわざ川沿いの遠回りの道歩きながら、ぺちゃくちゃぺちゃくちゃのさなかでございます。
「レンタルショップ行く途中の」
「そうそうそうそう。あそこでぇ、アルバイトしてるヒト」
「マジメそうで、爽やかなんだ」
 そこまで聞いて、雲の上のマキが、はんっ。
「コンビニ入ったばっかのアルバイトなんて、だいたいマジメそうで爽やかに見えるんだよ」
 って、口悪いな。
 けど、ま、そうなんですけどね。
 内心、ちゃんとできるかどきどきしながら、必死こいてるとこが、マジメで爽やかに見えるのであります。
「顔がぁ、相葉くんに似ててぇ」
 こら、雲の上のマキ、ぎゃはは笑うんじゃないっ。
「そいでぇ・・・」
 と、沙保里ちゃんが先を続けようとしたその時、
「告っちゃえばいいじゃん」
 雲母と書いてきららちゃんが、無責任にも言うのであります。
「え~っ、でもぉ」
「断られたって、そん時はそん時だよ」
 ヒトゴトだと思って。
「けどぉ」
「だってさ、少なくとも顔覚えてもらえるよ」
 そらそうだけど。
「う~ん」
 と、沙保里ちゃんのため息聞いて、雲の上のマキまで、はぁ~っ。
「こっからが長いんだ」
「そうなんですか」
「うじうじ、ぐずぐず、あ~でもない、こ~でもない、ってさ」
「い~じゃないですか。そんな気持ち、味わってみたいです」
 胸の前で、両手をきゅっ。
 そんなミキに、マキは、くぁっ。
「だって、恋してるんですよ。どんな気持ちなんでしょう。あたしまだ、そんな経験ないから」
「うちら、天使実習生だぜ」
「天使が恋しちゃいけないんですか」
「いけなかないんだけどさぁ・・・」
 あれ? マキの目が、なんか遠くなっちゃってます。
 とか言ってる、そのさなか。
「決めたっ」
 と、沙保里ちゃん。
「あたし、告白する」
 って、マジっすか、いきなりっすか。
「マキさん、意外と展開早そうですよ」
「あ、うん」
 雲の上からミキとマキもご注目。
「でもぉ、どうすればい~かなぁ」
「あたし、協力するよ」
 雲母と書いてきららちゃん、にわかに張り切っちゃいました。
「あたしが、そのコンビニにお客で行って、上がりの時間、聞き出すから。そしたら沙保里、帰り道で待ってればいいじゃん」
「けど・・・」
「だいじょぶ、任しときなよ」
 雲母と書いてきららちゃん、胸なんか叩いちゃって。
「行こ」
「あ、うん」
 と、コンビニに向かう雲母と書いてきららちゃんと字画の多い沙保里ちゃん。
「どうなるんでしょ、どうなるんでしょ」
 雲の上ではミキが興奮しちゃってます。
「見てるっきゃないさ」
 こちら、雲の上にごろんと寝そべったマキ。
「なんかどきどきします。ガンバレッ、沙保里さん」
 胸の前で両手をあわせて、きゅんっとなってるミキ。
 あ、きゅんとなってるミキのほうが、黒に濃いメイク。
 んで、寝そべって、あかんべしてるほうのマキが、白の清純派でございます。
 お間違いのなきよう。

 3

 ほいでもって、雲母と書いてきららちゃん、なかなかうまくやりました。
 飲み物とサンドイッチを手に、その新入りアルバイトがいるレジへ。
「サンドイッチが一点、ドリンクが一点」
 バーコード読むの終わったところで、
「コンビニのバイトって大変ですかぁ」
 興味があるフリして話しかけます。
「ぼく、新入りなんで、いろいろ」
「あ~、馴れるまではねぇ」
 調子いいな、雲母と書いてきらら。
「何時間くらい働くんですかぁ」
「シフトはいろいろあるけど・・・」
「今日は?」
「1時から、7時まで」
「ふぅ~ん、6時間かぁ」
「休憩入れてだけど。よかったら、店長に紹介しようか」
「あ、それよか、チャリ通は可能ですか?」
 てな調子で、上がりの時間やらなにやら、ちゃっかり聞き出しちゃった。
 やるじゃん。営業むきかもね、雲母と書いてきらら。
 ってか、ヒトゴトなんだよね、しょせん。これが、自分のことだったら、いっひっひ。
 しかし、沙保里ちゃんにとっては良き友人であることは間違いありませぬ。
 お外のめえないとこで待ってた沙保里ちゃん、報告聞いて、ほっぺがぽっ。
「どうしよどうしよ」
 そんな沙保里に、雲母と書いてきららちゃんが作戦を授けます。
 カレシは、川向こうの大学に通ってて、寮暮らしである。へ~え、そんなことまで聞き出しちゃったんだ。
 で?
 寮は、川の反対側だから、橋の向こうのたもとで待機せよ。なぜならば向こう側のが、橋を渡ってくるのを発見しやすいからである。
 ほうほう。そいで?
 カレシが近づいたら、落とし物を探すフリをせよ。そんな沙保里に声をかけてくるようなら、親切な、すなわち優しいオトコに違いない、と。
 なるほど。
「ってかさ」
 と、こちら雲上のマキ。
「もてない女子ほど、妄想力が発達してんのさ」
「いけません、そんな」
 メッとマキを睨むミキ。
「お友だちのことを心から応援してるんじゃないですか。美しい友情です。ガンバレッ、沙保里さん」
 またもや、胸の前で両手をきゅんっ。
 黒のコスチュームに、濃いめメイクのほうが、です。

 でもって、すっかり日も暮れた午後7時22分。
 橋の向こうで待つこと10分あまり。沙保里ちゃんの目に、自転車でやってくるカレシの姿が見えてきたのであります。
 ワガクニは道路照明が豊かで良かった。
 すかさず、ガードレールの向こう側の、ホントになくならないように、わりと明るいところにスマホをぽん。自分はかがんで、関係ないあたりをうろうろ、落とし物探しのポーズ。
 いよいよ自転車が近づくと、「あ~ん、どこいっちゃのかなぁ」と独り言。
 ようやるわ、沙保里ちゃんも。
 すると、キキ~ッと自転車が止まって、
「どうかしたんですか?」
 と来た。
 あっは~ん、やったね。
 沙保里ちゃんがほっとしたのはゆうまでもありませぬ。
 ここ、「どうかしたんですか?」がよかったね。これが、「どうしたの?」と来られると、女子は、気易いヤツめ、と思ってしまうわけでございます。
 覚えといてね。
 でもって、ほっとした沙保里ちゃん。
「ケータイ、落としちゃって」
 可愛い方の角度で顔を上げて、可愛い方の声で答えます。
 すると、
「探そうか」
 自転車下りて、スタンド立てて、
「どのへん?」
 ちょい腰かがめて、いっしょに探しましょポーズ。
 い~感じじゃありませぬか。きらら説に従えば、こりゃじゅ~ぶんに親切で優しいぞ、この男子。
「多分、この辺だと思うんですけどぉ」
 と、落とした・・じゃなくって、置いた場所に近づく沙保里ちゃん。だって、ねえ、もうきっかけは出来たんだ。巻きでいきましょ、巻きで。
「あ、ありましたぁ」
 自分でそこに置いたスマホを拾い上げます。
「よかった」
 と、いっしょんなってほっとしてくれるカレシと、目と目が合っちゃったりします。
「向こうのコンビニで働いてるヒトですよね」
「あ、うん、そうだけど」
「気に、なってたりして」
「え、ぼくのこと?」
 こくんと頷く沙保里ちゃん。
「急いでるんですか?」
「いや、別に」
「だったら、あの、よかったら、お茶、とか・・・」
 って、なに型どおりの会話やってんだ、こいつら。[ぢの文]やってるこっちが照れるぜ、ったく。
 あ、失礼しました。
 ほいでもって、
「い、いいけど」
 って答えたカレシの声が、びみょ~に裏返ってやがんの。純情だな、こいつ。
「うれしいっ」
 沙保里ちゃんが、真っ赤な顔して、うれしそうに笑ったのはいうまでもありません。
 っつうか、こんなんでい~わけ?
 天使の矢ってこ~ゆ~ことなのか。どうなの、見習い天使っ。
「よかったです」
 と、またまた胸きゅんポーズのミキ。
「沙保里さんは、今きっと、シアワセですよね」
「舞い上がってんだろ」
「沙保里さんがシアワセってことは、わたしの成績が上がるってことですよね」
「まぁな」
 ん? ミキの成績が上がる?
 ってことは、なにか、矢を放って、当たったおかげで恋したヤツが、その恋を成就して、シアワセってヤツになると、見習い天使の成績が上がるのか。
 ざっくりいうと、そういうこと。
 ほう、そうなんだ。
「けど、この程度じゃ大してポイント稼げないぜ」
「そうなんですか」
 おやミキ、ちゃみのかわりにありがとう。
 ふうん、そうなんだ。
「ともかく、お祝いすっか」
 ひらりと雲から地上に降りるマキ。
「は? お祝い?」
 首傾げながら、ミキもあとを追いかけましたとさ。

[2につづく]
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by planetebleue | 2016-02-29 17:58 | かたゆでエンジェル

天使のキホン・2

 4

 びゅ~っと、お茶しに向かう沙保里とカレシの自転車が通過したあとのコンビニの前。
 女子高生風の短めプリーツ・スカートに、白ブラウス・紺ジャケ・胸にレンガ色のリボンというスタイルのマキとミキがやってまいります。
 はい、地上では怪しまれぬよう、このかっこなのです。
 でもって、天上っつうか、雲の上では、マキは白、ミキは黒の、ロリコン風のドレスに、背中には天使の白い羽根を生やしております。
 そっ。地上紺ジャケの下には、羽根が隠れているのです。
「名前は、高橋健二といいます」
 タブレット見ながら、ミキがマキに、沙保里とお茶しにいった男子の情報を伝えております。
「川の向こうの、山手産業大学の二年生で、年齢は19才」
 ちなみに、山手産業大学は、創立してまだ十年ちょっと・・ってことは、偏差値さほど高くない大学、ってことになりましょうか。
「工学部に通っていて、将来はロボット技術者になるのが夢なんですって」
「カノジョ歴は?」
「ん~と・・あ、沙保里さんが、初カノジョのようです」
 ふっと、ミキのほうに振り向くマキ。
「これまた、平凡だこと」
「そんなこと言ってはいけませんよ。ロボット技術者が夢で、初カノジョ。きっと、マジメな男子なんですよ。結構なことです」
「モノは見方」
 と、自動ドア抜けて、コンビニ店内に入ってくマキ。
「へ? マキさん」
 やや慌てたようすで、ミキもあとを追います。
 でもって、その数分後。
「校則違反ではありませんか」
 アイスクリーム2個持って出てきたマキの後ろで、ミキが慌てまくっております。
「かまうこたねぇよ、だぁ~れも見てないんだし」
「で、でも」
「ほい」
「あ」
 差し出されたアイスを、思わず受け取っちゃったミキ。
 マキのほうは、早くも皮むいてぱくり。
「い~んでしょうか」
「あ?」
「だって、だって校則違反ですよ」
「みんなやってるよ」
「え?」
「実習中は、みぃ~んなやってるよ」
「そうなんですか」
「じゃなきゃやってらんねぇだろが」
 平然とぱくぱくぱく。
「それはそうかもしれませんが・・・」
「溶けるよ」
「あ」
 と、一瞬ためらうんだけど、仕方なさそうにていねいに皮むき始めた。
「でも、ホントにい~んでしょうか」
 まだ言うか。そこまでいったら、ねぇ。
「お祝いっ」
 マキがアイスを乾杯のように差し上げたのに、
「あ、はいっ」
 と、応じちゃったら、もうしょうがない。ちびちび食べ始めると、
「おいちい」
 だって。
 って、い~んだけどさ、見習いとはいえ天使がアイス食ってうまいわけ?
 え? ふつう?
 地上にいて、女子高生スタイルでジンルイのフリしてるときは、五感もジンルイといっしょなんだ。
 ほ~お。
 なんかさぁ、い~かげんじゃね? 設定が。
 校則、ってのは、まぁ、実習生って設定なんだから、そんなこともあるのかなぁと思うケドさ。
 え? なに? ごちゃごちゃ言ってないで、さっさとハナシを先に進めろ、って?
 分かりましたよ。
[ぢの文]窮屈だな、けっこ。
 ほんじゃ、新人ミキが、なにやら悩ましい顔で、先輩マキに声をかけるところからでございます。
 もちろん、アイス食いながら。
「あの、マキさん」
「ん?」
「ヒトのシアワセって、なんなのでしょうか」
「あたしに聞くなよ」
「でも、でも、天使のお仕事は、ヒトをシアワセにすることですよね」
「まぁな」
「ヒトをシアワセにすることで、あたしたちの成績は上がるんですよね」
「キホン、そうだ」
「でもあたし、ヒトのシアワセってなにか、まだよく分からないんです」
「んなもん、当人がシアワセだと思えば、それがシアワセなんだよ」
「それでい~んでしょうか」
「見習い天使が関わるのはそこまで。じゃないと、せっかくゲットしたポイントがややこしいことになりかねないだろ」
「ややこしい、って?」
「たとえば・・・」
 あ、マキ、ちょと言葉に詰まった。
「たとえばシアワセに馴れすぎて、もっとなにかを求めたら、どうなる?」
「そんなの、ジンルイのワガママです」
「だろ? それに責任とれないだろ?」
「まぁ、実習生ですから」
 ミキ、ちょと不満そうに答えてます。
「だからさ、当人がシアワセって感じたところでさっと手を引く。そうやって成績上げて、早いとこ任官天使になったほうがお利口さんだよ」
 あ、任官天使とゆうのわ、成績を満たした実習生が、晴れて出世するホンモンの天使のことでございます。
 はい、[ぢの文]のお仕事。
 でもってミキは、まだなんだか不満そう。
「マキさんは?」
「え?」
「マキさんは、かなりベテランの実習生だとか」
「あたしのことなんか、どうだってい~だろ」
「でも・・・」
「でもじゃねぇ」
 あ、ミキったら、地雷踏んだ。
「ヒトのシアワセはなにか、それを学ぶのも実習の目的だって言われただろ」
「はぁ」
「じゃ、見てな」
 言ったマキが、どこからか白くてちっちゃい投げ矢を取りだし、ぴゅっと投げました。
 ぴゅっと飛んでったちっちゃい矢が、通りかかった女子高生の背中にぴしゅっ。
 女子高生、途端に、石にけっつまずいておっとっと。
 んがっと前のめりに転んだ女子高生の目の前の地面に、ぬわんと五百円玉が。
 拾い上げ、立ち上がった女子高生、五百円玉見て、にかっと笑って一言。
「ツイてるかも」
 五百円玉ポケットに入れて、うきうきと去っていったとさ。
「こんなもんさ」
 先輩らしく、分かってる感まんまんの目で、マキがミキを見ています。
 するとミキ、
「マキさん、今のも、校則違反」
 あや?

 5

 運がいいとか悪いとか、天使がおイタをしていると思えば納得できるというものであります。
 さて、そんなことを言ってる間に、あっちゅまあっちゅまに二ヶ月が過ぎ、季節も移ったのでございます。
 で、寒くなったの? 暖かくなったの?
 え? 季節、設定してなかった・・って、お~~い。
 しょうがねぇな、もう。
 じゃ、ここで決めよ。
 え? おハナシがこっから別れ話がらみになるから、秋がいいんじゃないか、って?
 おいおい。そんなことここで言っちゃってい~のかよ。
 まぁね、夏始まりの恋って、多いからね。
 けどさ、あの出会い、夏って感じじゃねぇよな。
 こっからストーリーが熱くなるぜ、ってとっから言えば、夏前がいいんじゃね?
 決めた。そっちでいこ。
 5月のGW明けに出会い、2ヶ月後の7月。もうすぐ夏休み。初めてのカレシとどこ行こう、なにしよう、の真っ最中に、危機がやってくるのでございますよ。
 よし、それでいこう・・って、ちゃみ、作者かよ。
 けどさ、い~んじゃね? 5月から7月。長袖が半袖になり、やがて女子の私服はノースリーブですよ。
 襟ぐりフェチにはたまらない季節でございます。
 おりゃ、どこ見とんじゃ~・・なんつって。ぎゃはっはっは。
 あ、失礼いたしました。
 一人でコーふんしてしまいました。
 はい、長袖で出会い、半袖となった、その後の沙保里ちゃんと健二くんでございます。
 え~、JKと大学生のカップルというと、なにやらいやらしい感じがいたしますが・・え? そう思うの、ちゃみだけ?・・こらまった失礼いたしました。
 ともかく、この二人はいたって清潔なのでございます。
 ね、トイレのあとも、石けんまで使って手を洗って、って、そ~ゆ~ことじゃないっ。
 分かってますよ。
 マジメなんです、マジメ。
 面白くないことに。
 あの夜、ショッピング・モールのイートインでお茶した二人は、ケータイ番号ですとか、メルアドですとか交換し、「じゃ、これからときどき会おうね」みたいなことになるわけでございます。
 ま、恋の試運転ってヤツ?
 やがて、カレシ・カノジョという認識が生まれつつ~の、ほぼ週イチでデートを繰り返しておりました。
 つうても、娯楽の少ない町でございまして。
 トウキョウなんて、大旅行の目的地でございます。県庁所在地までも、鉄道で小一時間ばかしかかります。
 なわけで、地元デート。
 ショッピング・モールで待ち合わせて、ウィンドウ・ショッピングして、イートインでランチして、アイスティーのストローなめながらだらだら過ごして、あとは例の川沿いの道をぶらぶらとおしゃべりしながら歩いたりするわけでございます。
 んまっ、昭和なカップル。
 あり得ねぇ。
 けど、季節感はまったんじゃね?
 夏に向かって、二人の仲はいよいよ深まっていこうかという、そんな時期でございます。
 そんな二人の危機が伝わったのは、マキとミキが、
「このクニのツユってしょっぱい」
「そうですか? わたしはちょうどいいですよ」
「そのツユじゃなくって、雨の季節のツユ」
 と、コンビニの前で気の早いそうめんを食べているときのことでございました。
 あ、ミキ、校則違反の心のハードル、越えたのね。
 そのミキの、膝の上のタブレットに情報が流れてきたのでございます。
「あの、沙保里さんが、カレシのことでなにか愚痴ってるみたいなんですけど」
「あ~ん?」
 しょうがない。なにが起こったのか、雲の上から観察に出かけることとなりました。
「あの案件、継続になってたのか」
「はい。なにしろわたしの初めての矢ですから。二人の仲が深まるのをじっと見守ろうと思っておりました」
「見切りどきってこともあるんだぜ」
「は?」
 ぱたぱたぱた。天使の翼で飛んでっちゃいました。
 解説しておきますと、矢が当たって、恋に落ちちゃったジンルイがですね、その相手との愛が深まるほど、天使実習生のポイントとなります。
 成績が上がってくわけね。
 恋をし、付き合いはじめ、愛が深まり、やがて結婚し、なおかつ幸せな一生なんか送ったりすると、そりゃもう実習生の成績はぐんと上がるのでございます。
 で、ここで分かること。
 その一。そんなうまいハナシはめったにない。
 その二。そんだけ、天使実習生が成績を上げるには時間がかかる。
 ということでございますね。
 天使実習生が、十分な成績を上げて任官天使となるには、百年単位の時間が必要なのであります。
 でもって、適当に矢を放って、恋に落ちたジンルイのその後を見守るしかない天使実習生としては、いい加減なとこで見切ることも必要なのでございます。
 い~感じで恋に落ちて、同棲でも始めたところで、打ち切り案件にしちゃう。
 と、その時点でのシアワセ感が、実習生の成績となるのであります。
 意外と厳しいもんなんですね、天使実習生。
 けど、矢を放ったら、ただ見守ってるしかないの?
 それについては、またあとで。
 あ、そうっすか。
 あともいっこ。前シーンからの二ヶ月間、あっちゅまといいつつ、マキとミキはなにしてたのか?
 これ簡単。
 案件はいっつも複数動いとるわけですよ。
 矢を放つ。恋に落ちる。その後の経過を観察する。
 これが複数同時に動いとりますので、けっこ忙しいと、こういうわけでございます。
 とはいうものの、天使の時間は、ジンルイのそれより、はるかにゆっくりと流れているんですけどね。
 さて、ぱたぱたぱたと天使の羽根で飛んで行くマキとミキが雲の上から見下ろすと・・あ~、いましたいました。
 告るの告らないのとやっていた、あの川沿いの道で、この日も、親友ということになっている雲母と書いてきららちゃん相手に、沙保里ちゃん、なにやら愚痴りながら歩いているようでございます。
 聞いてみましょ。
「ひぇ~っ、信じられない」
 と、これ、きららちゃんの台詞ね。
「最初は優しかったんだけどぉ、なんかぁ、急にワガママになっちゃってぇ」
「振り回されてるの?」
 こくんと頷く沙保里ちゃん。
「今日も、ウィークデイはヤダって言ったのにぃ、俺のために時間が取れないのか、とか言っちゃってぇ、無理やり約束させられちゃった」
 と、ふぅ~っとため息。
 こりゃまた、どうしたことなんでしょ。
「どういたしましょ」
 こちら、雲の上のミキがマキに尋ねます。
「なにか、ささやきます?」
「一回こっきりだよ、ささやきは」
「そうですよね」
「まちっとようす見よ」
 てなわけで、場面は、ウィークデイなのに約束させられちゃった沙保里ちゃんと健二くんの場面に転換いたします。

 6

 ところは、いつものショッピング・モールのイートインでございます。
 一階正面とは反対側の、駐車場連絡通路に近いとこに、わりと広い空間が広がっております。
 壁際には、うどん屋さんだとかラーメン屋さんだとか、ソフトクリーム屋さんだとかハンバーガー屋さんだとかが並んでおります。
 でもって、フロアにはカラフルなプラの椅子とテーブルがい~っぱい並んでる、そんなとこね。
 で、沙保里と健二は、ん~と、どこにいるのかな?
 あ、いましたいました。ドリンク・コーナーのカウンターの前で、なにやらもめております。
「タピオカミルクティー、苦手なんだってば」
 困った顔の沙保里ちゃんに対して、健二くん、上から目線です。
「新製品なのに、なんで分かるんだよ」
「ふつうのアイスティーにさせてよ」
「なんで俺の言うこと聞けないんだよ」
「じゃ自分で飲めばいいでしょ」
「女子が試すべきだろ」
「そんな・・・」
 と、言ったときには健二もう、カウンターの向こうで困っている制服のお姉さんに、
「タピオカミルクティーひとつとアイスコーヒー」
 さっさか注文しちゃった。
 受けたお姉さんも、事情が分かってるから、スマイル薄め。
「それでよろしいでしょうか」
「それでいいです」
「かしこまりました」
 お姉さんがくるりと背を向けて、ドリンクの準備に取りかかると、沙保里ちゃん、ふぅ~っとため息。
 そりゃため息だわ。
「けしからんです」
 こちら、雲の上からようすを見ていたミキが怒ってます。
「あんな横暴は許すべきではありません」
 けど、雲の上からイートインが見えるのか、って? 見えるんですよ。なんせ天使ですから。テンシ。
「けどさ」
 と、こちらのんびり構えているマキ。
「このまんまあの子らが別れちゃうと、成績上がんないよ」
「そうですよね。二人がより愛し合い、シアワセを感じてくれることが、成績アップになるんですものね」
「それどころか、告り成功のポイントも消されるぞ」
「げっ、それまずいです」
 途端に、不安そうな顔になるミキ。
 だから、つきあい始めたとこで打ち切りにしときゃよかったのにと、心の中で思うマキであります。
 けど、口には出しません。
 そこは、新人に対する先輩の配慮というものであります。ハイリョ。
「どうしましょう。どうしたらいいんでしょう」
 いよいよおろおろのマキ。初々しいですね、黒コスに濃いめメイクで。
「ここで、ささやきでしょ」
「は、そうでした」
 天使の囁きでございます。
 天使実習生の規則によりますと、矢が当たった対象に対して、一階だけ、ささやけることになっております。
 それは心の声となって、対象者の背中を押します。それによって、よりシアワセにしてあげようというわけ。
「けど、なんてささやきます?」
「自分で考えろよ」
「わたしの気持ちとしては、そんなワガママ男とは、さっさと別れてしまえ、なんですけど」
「そいじゃ小悪魔だろ」
 言ったマキ、ん? と、なにかに気づいたようすでございます。
「なんか匂ってきたぞ」
「あ~、下でラーメン3個運んでるヒトがいます」
 と、ミキ、お鼻ひくひく。
「ここ、お外でも食べられるんですね。い~匂いだし、気持ちよさそ~」
 けど、マキはまったくスルー。
「そこいらに黒い雲いないか?」
「黒雲? 猫が顔洗いました?」
「どこに猫がいるんだよ。もういい」
 と、あたりをぐる~っと見回すマキ。
「ほぉ~ら」
 なにがいたんだか、マキの体重移動で乗ってた雲がしゅ~っと斜めってます。
「きゃっ」なんて、ミキがバランス崩しかけ、体勢立て直してはっと見たときには、雲がきゅい~んとなにかに向かって旋回中であります。
 ん? なんっすか? これ。
 目指す彼方には、ほぼ煙といっていいようなちっちゃこい黒雲が浮かんでいるではありませぬか。
 体重移動で巧みに雲を操るマキ、その黒雲に背後から急接近いたします。
「なにやったぁ、てめぇ~っ」
 おや、マキさん、いきなり怒鳴りつけるだなんて。で、誰に向かって?
「わあっ」
 あら、黒い雲から落っこちそうになってるのがいる。
「いきなり脅かすなよ。落ちたらどうすんだ、ったく」
 体勢立て直し、上げた顔を見れば、ありゃま、ちょ~かわゆい顔立ちではありませぬか。
 でもって、薄いピンクに、真っ赤っかを差し色にしたゴスロリ風のドレスに、おや、背中には黒い羽根。
「どなたなんです?」
 ミキの質問にマキが答えます。
「悪魔実習生のカオリンってケチなヤツさ」
 あくまじっしゅう~せい~っ?
 そんなんもいるのか。
「ケチじゃないわい。こないだだって160円のかにパンに、塩パン60円くっつけて、どぉ~んと買ったさ」
「ポイント欲しさ」
「うん、3倍デーだったから」
「せこっ」
 マキの勝ち。そいで?
「なんてささやいたの」
「愛を、試せ」
「まぁ~た古典的なことを」
「ど~ゆ~意味なんですか」
「だから、相手の気持ちがどれだけホンキか、ワガママ言って試せって、そういうこったろ」
「よくお分かりで」
「んまっ、ヒトをフシアワセにするなんて、ひどいヒトです」
「ヒトじゃね~し、それが小悪魔の仕事なんだもん」
「あ、そうか」
 はい、そうなんです。
 悪魔実習生のお仕事は、天使実習生の矢で恋に落ちたジンルイを、ささやきによって邪魔するのであります。
 でもって、そのお邪魔達成度によって、成績が上がり、任官悪魔になれると、まぁそういう存在なのでございます。
 ちなみに悪魔実習生は、通称小悪魔と呼ばれております。
 そう、コアクマ。
 ほら、運がいいとか悪いとか、小悪魔がおイタをしていると思えば、納得できるというものではありませぬか。
「ったく、余計なとこに出てきやがって」
「とんでもないヒトです」
「ヒトじゃなくって、小悪魔だってば」
「こうなったら、ささやきで挽回するっきゃないよ」
「でも、なんて?」
「離れよ」
 マキ、白い雲を体重移動で操り、カオリンの黒い雲から遠ざかります。
 そらそうだわな。なんてささやくか、その相談をカオリンに聞かせるわけにはまいいりませぬ。
 するとその背中に、
「馬には乗ってみよ、人には沿うてみよ」
 カオリンがお古いことわざを投げつけます。
「は?」
 ミキたん、思わず振り向いちゃった。
「馬には乗ってみよ、人には沿うてみよ」
 繰り返すカオリン。
「どういう意味でしょう」
 ミキたん、かわゆい顔でマキを見上げます。
「馬には乗ってみなくちゃ分からない。人にも、寄り添ってみなくちゃ分からないってことさ」
「は?」
「だからぁ、カレシのワガママも、寄り添うつもりで受け入れちゃえば、案外シアワセかもよと、そんなとこだろ」
「はっは~ぁ、それいいですね」
「小悪魔のアイディアにのってどうすんだよ」
「だって、沙保里さんがワガママ健二と別れでもしたら、元も子もないじゃありませんか」
「ワガママ男なんか許せません、とか言ってたくせに」
「それとこれとは別です。わたしは天使実習生。成績優先です」
「くぁっ。んじゃ、やってみ」
「はいっ」
 すっかり呆れたマキを見て、カオリンがにんまりしていたことはゆうまでもありませぬ。

[3に続く]
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by planetebleue | 2016-02-29 17:56 | かたゆでエンジェル

天使のキホン・3

 7

 さて、おハナシはショッピングモールのイートインに戻ります。
 窓ぎわの明るい席を選ぼうとする健二くんに、「こっちにしよ」とそこだけはワガママとおして、壁際の、まわりにあんまし人のいない席に、向き合って座った二人。
 当然のことながら、タピオカミルクティーには手も付けず、両手を膝において俯いている沙保里ちゃん。
 こら覚悟決めたな。別れるつもりですよ。
「あ、あたし、もう・・・」
 ほうら、やっぱり。
 しかし、健二くんもそこは敏感に感じとって、
「俺のこと好きなんだろ」
 ですと。
 小悪魔のささやきが効いてるから、図々しいこと。
 さぁそこに、天使実習生ミキの登場でございます。
「馬には乗ってみよ、人には沿うてみよ」
 ささやきを発信いたします。
 ただし、ささやく相手は、タブレットでございます。ミキのささやきを入力されたタブレットが、天使専用アプリによって、相手の心にコトバを、ぽとりと落とすのであります。
 念力とかテレパシーとか言っちゃってもいいんじゃね? そこがこだわりなんだ、作者の。
 めんどくせ。
 ま、ともかく、沙保里ちゃんが、不審そうな表情で顔を上げ、健二くんを見ております。
 ほら、コトバ、届いたみたい。
「な」
「でも・・・」
 あちゃ、ヤバイよヤバイよ。
 ほれ、もう一押し。
「馬には乗ってみよ、人には沿うてみよですよっ」
 ん? と顔を上げる沙保里ちゃん、くっと首を傾げてます。
 ありゃりゃ、ささやきの意味、理解できてないのかも。
 しかし、天使実習生の規則によりますと、ささやきを解説することは禁止なのでございます。
 じゃないと、有効なささやきを身につけることができないからなのだとか。
 って、そこの読者。ここ突っこまない。スルースルー。
 なのでミキたんに出来ることはただひとつ、「馬には乗ってみよ、人には沿うてみよ」、同じコトバを必死に繰り返します。
 小悪魔に教えてもらったコトバなんですけどね。
 そんなようすを、マキとカオリンが眺めております。
「このまんま別れりゃ、久々の成績アップだぜい」
 って、カオリン、そんなに成績悪いの? それともサボり癖か。
「でもってそっちは成績ダウン」
「さっすがカオリンさまぁ」
「そっかな」
 って、マジ照れてやんの。
「あんたって、小悪魔むいてないかも」
「お前にいわれたくない」
 と、なにやら以前から知り合いらしいマキとカオリンであります。
 その前方では必死にささやきを繰り返すミキたん。
「馬には乗ってみろ、人には沿うてみよだっつうてるだろ。意味分からんのか。お前の偏差値じゃムリかっ」
 って、おいおい。
「あの子、やりすぎじゃね?」
「まぁ見てみようよ」
「お~や、ベテランの余裕?」
「なるようにしかならないもんさ」
「それが天使の台詞かよ。お前やっぱ、天使にむいてないかも」
「あんたに言われたくない」
 ふと、横目線かわすマキとカオリンであります。
 しかしその時、イートインでは緊張マックス。
「好きなら、俺のワガママくらい聞いてくれたっていいだろ」
「いやなの、もう・・わ・・わ・・」
 その[わ]は[たし]につづく[わ]じゃなくって、[か]がきて、つぎに[れたい]っとくる[わ]だぞ。
 どうするミキたんっ。
「こうなったらシュプレヒコールです」
 どっかからちっこいラウドスピーカー持ち出して・・あ、ちなみに色、赤です・・シュプレヒコール始めちゃった。
「馬には乗ってみ~ろ、人には沿うてみ~よ」
 これ、あとで説明すっけど、いくら頑張っても沙保里ちゃんには届かない代物なんだよね。
「やっぱり、健二くんとは、もう・・・」
 ほうら、なんか諦めきった表情で、別れ、切り出そうとしているぞ。
「ぎゃ~っ、どうしましょ」
 ミキたんったら、もう半狂乱。
 と、その時のことでございます。どこからかちっちゃこい矢がぴゅ~んと飛んできて、健二くんのお背なにプツン。
 その途端、ハッと顔を上げる健二くん。
「違うんだ。ぼくが悪かったんだ」
「え?」
「きみの気持ちを、試そうとしてたんだ。なんで、そんな気持ちになったんだろう」
 ありゃ、覚醒しちゃってます。
 雲の上のマキとカオリンも、ありゃ?
 するとその視野の隅っこをしゅ~っと動くものが。ん? と見れば、そこにはウィンクして飛び去る任官天使・・つまり、ま、簡単にいやオトナの天使ね・・の姿が。
 はは~ん、あの任官天使のおイタで、健二くん、覚醒しちゃったのか。
「さぁ~っすがヒトミさま」
 小さく拍手のマキたん。
 あの任官天使、ヒトミって名前なのか。
 でもってこっちは、
「くぅ~、まぁ~た成績下がっちゃう」
 がっくしのカオリン。
 もちろんミキたん大喜び。
「よかったです。ほんとうによかったです」
 満面笑みになったところで、ぴ~ろぴ~ろぴろぴろぴ~っと鳴る着メロは、ど~ゆ~わけかMCZ。
「メイルだ」
 ミキたん、タブレットをシュッシュッ。
「あ、担任の先生から報告の呼び出しです」
「ん、行ってきな」
「得点稼いだところだから、ラッキーですよね。うふふふ」
 ミキ、スクールバッグ斜めがけにして、背中の羽根をぱたぱたぱた。お空に舞い上がります。
「行ってきまぁ~す」
「行ってらっしゃ~い」
 と、見送るマキ。
「報告の呼び出し?」
「ああ、あの子、初期研修なのよ」
「お~や、新人」
「でもって、あたしがお世話係」
「そ~ら運のいいことで」
 くぁっくぁっくぁっと笑うカオリン、マキの顔を見て、なにかに気づいたようでございます。
「ちょっと、あんた、なにイタズラっぽい顔してんのよ」
「べぇ~つにぃ~」
 と言いながら、口元にやり、目元いたずらっぽくきらりんのマキたんなのであります。

 8

 さて、こちら雲の上のカミサマ学園でございます。
 雲の上ならふわふわのとこにあんのかとゆうと、これが違うんですね。
 ぬあんと、緑豊かな学園なのでございます。
 手入れの行き届いた庭園に囲まれて、瀟洒な校舎が点々と並んでおります。
 まるで、絵に描いたような美しい学園。
 い~かげんな描写です。
 絵に描いたようなって、どんな絵を描いたらい~のか、これじゃ分からないじゃん。
 え? なにしろカミサマ学園だから、リアルにいくより、想像に頼ったほうがいい、って?
 は、そうっすか。
 そ~ゆ~わけなので、みなさま、想像に頼ってください。
 ちなみに、ここカミサマ学園は、天使だけでなく、男子の神さまも養成している学園でございます。
 中にはイケメンのカミサマ実習生男子がいて、マキやミキともからむかも、って?
 そぉ~んな大風呂敷広げちゃっていいの?
 ちゃみはどうなっても知りません。
 さて、その絵に描いたような美しい学園に、お羽根ぱたぱたと舞い降りたミキたんが、とある瀟洒な校舎に向かって走ってゆく後ろ姿は、萌え系JKそのものなのであります。
 ってかさ、この描写も・・ま、いっか。ちゃみの知ったこっちゃねぇや。
 てなわけで、校舎の廊下をとっとっと。教官室のドアをとんとんとん。
「ミキです」
「早かったわね、どうぞ」
「はい」
 ドアを開けて、礼儀正しく一礼。ドアを閉めてから、デスクの教官の前に進みます。
「どお? 地上は」
 と、顔を上げてミキを見た教官、お~や、きゃりーぱみゅぱみゅ似のお姉さまではございませんか。
 コスチュームもってとこが、ちょと笑っちゃいますケド。
 え? どんなコスチュームか、って? はい、みなさま、想像力を働かせましょう。
「はい、なんてゆうか、まだまだです」
「そうね」
 ミキの行動評価が表示さえているらしいモニターを見ています。
「告って、OKになったのは、あなたの実績になります」
「はいっ」
 ミキ、素直にうれしそう。
「けど、プチ・ラウド・スピーカーはいけません」
「あ、はい」
「あれは、仲間に危険を知らせたり、あるいは、仲間を緊急呼び出しするためのものです。いずれにしろ、ジンルイには聞こえません」
「はぁ」
「背中を押すときは、あくまでも天使のささやき。心の声として、ジンルイのココロに響かせるのです」
「わかりました」
「ま、いいでしょ。それで、二人は仲直りしたのね」
「はいっ」
「シアワセ感が高まっていれば、この案件はもういいでしょう。あなたの実績として、打ち切りにします」
「はいっ」
 うれしそうなミキたん。
 ところが、モニター見ていたきゃりぱみゅ教官が、ん?
「あら、打ち切り拒否になってるわ」
「え?」
「なにか、新しい障害が出ているようね」
「新しい障害?」
「継続案件にするしかないわね。地上に帰って、観察に戻りなさい」
「はぁ~い」
 ここで、きゃりぱみゅ教官がちっさくため息。
「これだと、初期研修の終了はムリね。もうしばらく、マキにお世話をお願いしなさい」
「分かりました。失礼します」
 またまた礼儀正しく一礼。退室したミキは、ぱたぱたぱた。学園をあとに、継続案件になっちゃった沙保里と健二のようすを観察するため、マキのいる雲の上に戻ります。
 ぱたぱたぱた。
 あ、いましたいました。
「マキさん」
 誰かを観察中のマキが乗った雲に、ひらりと舞い降ります。
「おう、戻った」
 と、見れば、マキの横にはカオリンもいるではありませんか。なんで、二人して。
 あ、それどころじゃなかった。
「あの、沙保里さんの件なんですが、継続案件って言われちゃって、なにか、新しい障害が出ているとか・・・」
「しっ、今いいとこ」
 と、カオリンと二人、観察をつづけるマキ。
 どうなってるんでしょと、ミキも雲の下を覗きこむと・・・。
 そこはあの、下校時の回り道の、川沿いの道でございます。
 そこを行くのは、いつものように沙保里と、雲母と書いてきららと読む仲良し二人組。
「い~じゃない、優しくなったんだったら」
 はは~ん、健二くんの噂だな、こりゃ。
「なんだけどぉ、優しくなったら、なんかうざいんだ」
 おや、沙保里ちゃん、どうしちゃったの?
「ふ~~ん」
 と、こちら思わせぶりななが~い返事のあとで、おや、きららちゃんの目が、どこかいたずらっぽくきらり。
「じゃ、奪っちゃおっかな」
 え? なんてことを。
 ミキが首を突き出してよおっく見れば、ありゃま、ぬあんと、その背中には天使の矢が刺さってるじゃありませんぬか。
「誰、誰なんですか、きららさんの背中に・・・!」
 思わずマキとカオリンの顔を見れば、マキはなんだかあっち向いて知らん顔。でもってカオリンは、ひっひっひと目顔でマキを・・・。
 えっ? えっえっ、えっ?
「マキさん、マキさんの矢なんですかっ?」
「あ~、まぁ」
「まぁって、狙ったんですか?」
「まさか、たまたま、たまたま」
「おかげで継続案件になっちゃったじゃないですか。どうするんですか」
「だって、このほうがおもろいやん」
「お、おもろいって、そんな・・・」
「あんた、小悪魔むき」
 口をはさむカオリン。
「い~え、あたしはあくまで天使実習生」
「んじゃ、ヒトのシアワセとフシアワセ、どっち見るのが好き?」
「そら、ヒトの不幸は蜜の味でしょうが」
「だよねぇ」
 と、目線交わして、にやりのマキとカオリン。
 え? え? え?
 おやミキたん、お目々まん丸になってます。
 そらそうだわな。
 では、ミキの心の声で、このおハナシを終わります。
「わたしのお世話係、とんでもないテンシなのかも」

 はい、てなわけで、ヒトの運命は天使と小悪魔にしょっちゅう引っかき回されているのであります。
 そう思えば、運がいいとか悪いとかゆうのも、納得できるというもので・・え? なんか、マキから一言あるそうです。
「あたしのおイタに逆らうとこが可愛いんだよね、ニンゲンって」
 あ、そうっすか。
 どうなることやら。
 では、次回をお楽しみにっ。
 ちゃみでしたっ。

[つづく]
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by planetebleue | 2016-02-29 17:55 | かたゆでエンジェル